プロパン

プロパンとは

プロパン (英: Propane) とは、飽和鎖式炭化水素の1つで、弱い特異臭のある無色の可燃性気体 (純粋なものは無臭) です。

化学式はC3H8、分子量は44.09、CAS番号は74-98-6です。プロパンは、主にガス燃料として用いられる化学物質で、1857年にフランスの化学者マルセラン・ベルテロによって発見されました。

プロパンの構造

プロパンの構造式はCH3-CH2-CH3で表され、折れ線形の構造をしています。炭素原子同士の結合距離は約154pmで、折れ線構造のなす角度は約110°です。プロパンの結晶の空間群はP21/nで、スタッキング特性が悪く空間充填率が低いため、特に低い融点の理由にもなっています。

プロパンの性質

1. 物理的特性

プロパンは、融点が-187.6℃、沸点が-42.1℃です。他の天然ガス成分と異なり、沸点が低く空気よりも1.5倍重いことが特徴です。エーテルやエタノールには溶けますが、水への溶解度は62.4mg/Lでほとんど溶けません。

2. その他の特徴

プロパンは、液化しやすく、熱や火に触れると大きな炎を出して燃えるという性質をもちます。さらに、高濃度のプロパンには、麻酔作用があります。

プロパンの使用用途

1. ガス燃料

プロパンは単独で、または、プロペン・ブタン・ブテン等との混合物で、液化石油ガス (LPガス) として燃料に用いられています。プロパンの沸点は、大気圧下で-42.1℃と低いことから、寒冷時でも容易に気化するため、家庭用や業務用LPガスの主成分として利用されます。LPガスは、調理用、給湯用、空調の熱源用、自動車燃料用として広く用いられています。

2. 冷媒

プロパンは、ガス吸収式冷凍機の冷媒としても用いられており、冷媒番号はR-290です。米国では、1930年代からプロパンガスを冷媒に使った、稼働時に電力を必要としない高効率なガス吸収式冷凍機を販売しています。駆動部分を持たないため、メンテナンスが簡便な点も特徴です。

3. その他

プロパンのその他の用途としては、潤滑油精製の脱蝋用溶剤など、溶剤としての用途が挙げられる他、エアロゾル剤としても用いられています。プロパンは、ゼオライト触媒を用いて芳香族炭化水素を合成する際に、原料として使用されることもあります。

プロパンのその他情報

1. プロパンの製法

プロパンは天然ガスプロセッシング、石油の分留または分子量の大きいアルカンのクラッキングなどによって得ることができます。天然ガスプロセッシングとは、気体の天然ガスから凝縮点の差を利用して、プロパンとブタンを分離する方法です。プロパンは、石油や天然ガスに含まれている成分であり、分解ガスとして石油精製工程で副生します。

2. プロパンの反応

プロパンの化学反応性は低いですが、プロパンを脱水素することでプロピレンが、塩素化することで塩化プロパンが、ニトロ化することでニトロプロパン等を生成させることができます。

3. 法規情報

プロパンは、毒物及び劇物取締法や化学物質排出把握管理促進法では指定がありません。労働安全衛生法では、危険物・可燃性のガス (施行令別表第1第4号) に、高圧ガス保安法では液化ガス (法第2条3) に指定されており、取り扱いには注意が必要です。 

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 保管容器には専用の高圧ガス容器を使用し、換気の良い40 ℃以下の場所で保管する。
  • 発火の恐れがあるため、高温の物体、火花、裸火との接触は避けて保管する。
  • 使用後は、容器のバルブを完全に閉め、口金キャップと保護キャップを付ける。
  • 爆発の恐れがあるため、酸素に富む物質 (強酸化剤) との接触は避ける。
  • 屋外や換気の良い区域、防爆仕様の局所排気設備などで使用する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 窒息の恐れや麻酔作用があるため、蒸気の吸入を避ける。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1404.html

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