オキシトシン

オキシトシンとは

オキシトシン (英: Oxytocin) とは、分子式C43H66N12O12S2で表される有機化合物であり、ペプチドホルモンの1種です。

9種のアミノ酸 (Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly) が重合した構造をしており、視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で合成され、脳下垂体から分泌されます。CAS登録番号は、50-56-6です。

オキシトシンと深く関わりがあるのは女性で、生理痛の原因ともなるプロスタグランジンの分泌を促したり、陣痛を引き起こさせるホルモンとしてよく知られています。最近では、人や動物とスキンシップによって分泌されることも分かっており「愛情ホルモン」や「幸せホルモン」という異名でも呼ばれるようになりました。

オキシトシンの使用用途

オキシトシンは、一般的には体内で合成され分泌されるホルモンです。そのため、物に対して使用されるというよりは、人になにか作用させる目的で使用されることが多いです。

効果として、子宮収縮や陣痛を引き起こすというものがあるため、医療用医薬品の陣痛促進剤の中に含まれ、分娩誘発の目的で使用されています。20世紀初頭には、分娩促進と出産後の授乳時の射乳反射を惹起することが知られていて、名前のギリシア語okytokos (早い (okys) 出産 (tokos)) の由来にもなっています。 このように、子宮周りに作用させる目的で使用することが多いため、産婦人科などではなじみのある物質と言えます。

その他、微弱陣痛、弛緩出血、胎盤娩出前後、子宮復古不全、胎児の娩出後の帝王切開術、流産、人工妊娠中絶の用途で用いられることもあります。

オキシトシンの性質

オキシトシンは白色の粉末で、水に極めて溶けやすく、エタノール (99.5) や塩酸試液にも容易に溶けます。

作用としては、末梢組織で働くホルモンとして、そして中枢神経での神経伝達物質として働きます。末梢組織では主に平滑筋の収縮に関与し、分娩時に子宮収縮させます。また、乳腺の筋線維を収縮させて、乳汁分泌を促すなどの働きを持ちます。

オキシトシンの構造

オキシトシンの構造は、2つのシステインチロシン、イソロイシン、グルタミン、アスパラギンで大きな環を作り、環の中の2つのシステインのそれぞれの硫黄原子がジスルフィド結合で繋がっています。また、3つのアミノ酸 (プロリン、ロイシングリシン) が1つのシステインから分岐しています。同じく下垂体後葉ホルモンであるバソプレシンは、オキシトシンと構造が似ており、アミノ酸2つだけが異なります。

オキシトシンは、1906年にヘンリー・ハレット・デールによって発見され、1952年に分子構造が決定されました。生合成に初めて成功し、構造を明らかにした研究者であるヴィンセント・デュ・ヴィニョーらには、1955年ノーベル化学賞が授与されています。

オキシトシンの種類

現在市販されているオキシトシン製品の種類には、主に臨床用の医薬品と研究開発用試薬とがあります。臨床用の医薬品は、主に注射剤アトニンとして販売されおり、主に分娩時に用いられます。

オキシトシン経鼻薬は、授乳促進の適応として欧州で承認されています。自閉スペクトラム症の社交性改善に対する有効性についても、国内外の研究者らにより検証が進められています。

オキシトシンを検出するための試験キットも市販されており、培養上清、ミルク、血清、血漿中のオキシトシンを測定することができます。脳脊髄液、唾液、組織、尿サンプルでの使用も多数報告されています。

オキシトシンのその他情報

1. 法規情報

消防法に定める危険物、および毒物及び劇物取締法に定める毒劇物には該当しません。

2. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密閉し、2~8℃程度の換気の良い場所に保管する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 使用後は適切に手袋を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、石鹸と多量の水で洗い流す。

参考文献
https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/product/sigma/o3251

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