イミダゾール

イミダゾールとは

イミダゾールとは、窒素原子2つを含む複素環式化合物の1種です。

別名として、1H-イミダゾール、グリオキサン、1,3-ジアゾール、イミナゾールなどがあります。イミダゾールは、イミダゾール環を形成する窒素または炭素に置換基が付いた化合物群の総称としても呼ばれます。

イミダゾールの使用用途

イミダゾールは、工業的には化学品原料、農薬原料、医薬品などに幅広く利用されています。特に半導体封止剤や接着剤など電子基板周辺の中でも、耐熱性が必要とされる箇所で優れた特性は発揮するため、利用される場合が多いです。

その他にも、エポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤ウレタンの発泡触媒、防錆剤、ゴムの加硫促進剤、塗料、接着剤、建築材料やスポーツ用品などさまざまな工業分野で広く使われています。塩基触媒タイプの硬化剤または促進剤として、比較的少量の添加で硬化するなど、優れた保存安定性をもっているのが特徴です。

医薬品用途では、イミダゾールは抗真菌剤に、イミダゾール環に置換基が付いたイミダゾール類も抗潰瘍剤、抗高血圧剤、抗喘息剤など多くの医薬に使用されています。また、イミダゾールの窒素にアルキル付加させて4級アミンとしたイミダゾリウムカチオンを含むイミダゾリウム塩が、イオン液体という常温付近に融点を持つ中和塩となり、環境に優しい溶剤であるグリーンゾルベントとして注目されています。

イミダゾールの性質

イミダゾールは、分子式C3H4N2、分子子量68.08の白色から淡黄色のフレーク状の固体です。融点は88~92℃、沸点は256℃、引火点は145℃で昇華性があります。極性が高い溶媒にはよく溶け、水、メタノール、エタノールなどには易溶、ピリジン、クロロホルムに可溶、極性が低いエーテル、ベンゼンには難溶で、ヘキサンにはほぼ溶けません。

多くの遷移金属イオンと錯体を作り、優れた配位子として機能します。熱分解しにくく、酸化剤や還元剤に対しても比較的安定です。強い芳香族性を示し、水素原子の置換反応を受けやすいという特徴があります。

イミダゾールは、1位のプロトンが抜かれても、3位の窒素がプロトン化されても、共鳴構造を取って対称的な構造を保持します。このため、芳香族性を損なうことなく、電荷を分散させることができます。

イミダゾールの種類

イミダゾール環に置換基が付いた、多種の誘導体があり、これらをイミダゾール類と呼びます。置換基が付く場所として、1位の窒素と2位、4位、5位の炭素があり、それぞれ異なる置換基を付けた誘導体の合成が可能です。また、3位の窒素も求核置換することで、カチオン化されますが、置換基をつけることが可能です。

イミダゾール類の代表的なものとして、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどがあり、接頭数字が環のどの部位に置換基が結合しているかを示しています。アシル化されたイミダゾールは求核反応に対して敏感であり、カルボン酸誘導体の合成に利用されます。

また、水酸基にシリルクロリドを作用させ、シリルエーテルとして保護する場合にも、イミダゾールを塩基兼触媒として使用することが一般的です。さらに、カルボニルジイミダゾール (CDI) はカルボニル化剤やアミドの縮合剤として有用です。

イミダゾールのその他情報

イミダゾール類の製造方法

イミダゾールの製造方法は、グリオキサールとアルデヒドとアンモニアを反応させる方法、エチレンジアミンとニトリルから合成する方法があります。

1. グリオキサールから合成
原料に使用するアルデヒド、アミンの種類により1位、2位の置換基が決まります。

OHC-CHO + R1-NH2 + R2CHO → R1R2C3H2N2 + 3H2O

2. エチレンジアミンから合成
ニトリルの置換基によって、1位、2位の置換基が決まります。

H2N-CH2CH2-NH2 + RCN → R2C3HN2 + NH3→R2C3H2N2 + H2

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/288-32-4.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です