インデン

インデンとは

インデンの基本情報

図1. インデンの基本情報

インデンとは、コールタール (英: coal tar) 成分の一つです。

コールタール中性油の蒸留留出分に含まれており、タール酸を除去して精製されます。純粋なインデンは無色ですが、保管中に重合や酸化が起きると淡黄色に変わります。

インデンは、不安定で重合反応を起こしやすく、酸素を吸収して酸化物を生成可能です。加熱すると分解されて刺激性の煙とガスが発生します。日本では、危険物第4類第二石油類に定められています。

インデンの使用用途

インデンは、光機能材料、機能性樹脂、医薬中間体などの有機合成原料に使われています。主に、塗料、ゴムの配合材、粘着剤、印刷用インク、接着剤などです。

クマロンやスチレンなどを重合する際に、樹脂改質剤として有用です。とくにクマロン-インデン樹脂 (英: coumarone-indene resin) は、石油樹脂とは異なる特性を持っています。接着性、機械物性、電気特性を持ち、ゴムの物性改善、塗料の密着性や防食性の向上、エポキシ樹脂の吸水性や誘電率の低減など、各種樹脂性能の改善に優れています。

インデンの性質

インデンは、分子式がC9H8で表される二環性の炭化水素です。ベンゼンとシクロペンタジエン環が縮合した構造を有します。モル質量は116.16で、20℃での密度は0.9968です。外観は無色で油状の液体です。水にほとんど溶けず、エタノールアセトンなどの有機溶媒には溶けやすいです。可燃性で特異臭を持っています。融点は-1.8℃、沸点は181.6℃です。

目に強い刺激性があり、皮膚にも軽度の刺激性を有します。吸入によって、腎臓、肝臓、脾臓へ障害が起こる可能性があります。

インデンのその他情報

1. インデンの精製

インデンはコールタールの留分から得られます。留分を金属ナトリウムと加熱すると、沈殿を生成させます。弱い酸性であり、金属ナトリウムによって塩を生じます。そして、水蒸気蒸留 (英: steam distillation) によって、インデンを取り出すことが可能です。

2. インデンの反応

二クロム酸を使ってインデンを酸化すると、ホモフタル酸 (英: homophthalic acid) を生成可能です。ホモフタル酸はo-カルボキシルフェニル酢酸 (英: o-carboxyphenylacetic acid) とも呼ばれます。

また、ナトリウムエトキシドを使って、インデンとシュウ酸エチルを縮合すると、インデン-シュウ酸エステルを得ることが可能です。

さらに、インデンは塩基を用いてケトンやアルデヒドとの縮合によって、強い発色を示すベンゾフルベン (英: benzofulvene) が生成します。

3. 配位子としてのインデン

インデニル効果

図2. インデニル効果

インデンのプロトンの引き抜きによって、インデニルアニオンが生じます。有機金属化学でインデニルアニオンは、配位子として使うことが可能です。

インデニルアニオンはη5-配位子として以外にも、η3-配位子としての性質が強いです。したがって、シクロペンタジエンのプロトンの引き抜きで生じるシクロペンタジエニルアニオンとは違った反応性を示すこともあります。インデニル配位子の効果は、インデニル効果 (英: indenyl effect) と呼ばれています。

4. 樹脂の原料としてのインデン

クマロン-インデン樹脂

図3. クマロン-インデン樹脂

インデンはクマロンと重合すると、比較的低重合度の熱可塑性樹脂を得ることが可能です。インデンやクマロンは、いずれもコールタール中に含まれています。工業的にコールタールの160~180℃の留分をそのまま加熱するか、硫酸などを触媒として用いて重合しています。

重合によって生成したクマロン-インデン樹脂は、褐色または黒色です。芳香族炭化水素によく溶け、耐酸性や耐アルカリ性に優れています。

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