磁束計とは
磁束計とはコイルの内部を通過する磁束の量や変化量を測定する機器です。磁束計の中にはサーチコイルと呼ばれるコイルが巻かれており、コイルの中を磁束が通過することで生じる起電力の大きさを元に磁束の大きさを算出します。なお、似た名前の装置として磁力計と呼ばれるものもありますが、磁力計は物質の磁化を測定する装置と磁場の強さ、方向を測定する装置の総称であり、磁束計と同じものではありません。
磁束計はコイルの巻き数を増やすほど微小な磁力も測定することができます。また、更に高感度な磁束計としてSQUID磁束計と呼ばれる装置もあり、こちらは超伝導体を利用した磁束計です。SQUID磁束計は超伝導体リングにジョセフソン接合を含んだ素子で、極低温まで冷やすことで超伝導体リングの中を通る磁束の変化に応じてジョセフソン接合を流れるトンネル電流の量が変化する現象を利用して磁束を測定します。
磁束計の原理
磁束計とはコイルの内部を通過する磁束の量ならびに変化量を測定する計器で、flux meter(フラックスメーター)とも呼ばれます。ガウスメーターと呼ばれる磁束密度を計測する機器と併用して使われることもあります。コイルの中を磁束が通り、磁束の時間的な変化が起こるとコイルに起電力が生じるため、一定時間における起電力の積分値を元に磁束の大きさを算出します。
なお、似た装置として磁力計と呼ばれるものもありますが、磁力計は物質の磁化を測定する機器とある空間における磁場の強さと方向を測定する機器の総称であり、磁束計と同一の装置ではありません。磁力計の例として振動試料型磁力計と呼ばれる、直流磁場中で試料を一定の振動数で振動させるものがあります。磁場を印加させるマグネットにはコイルが取り付けられており、試料を振動させることでコイルを通過する磁力が変化して起電力も変化し、起電力の値から試料の磁気モーメントを求めることができます。
磁束計とサーチコイル
サーチコイルとは磁束計における磁界を検出するためのコイルのことです。磁束計ではコイルを巻いた数と測定した磁束量の積によって測定値が表示されており、微小な磁力もしくは小さなサンプルに対してはコイルの巻き数を大きくすることで測定することが可能になります。サーチコイルはセンサーとしての役割を持つ重要な部品であり、コイルが精確に巻かれていることが重要です。
SQUID磁束計の原理
磁束計の一種にSQUID磁束計と呼ばれるものがあります。SQUIDとは「Superconducting Quantum Interference Device:超伝導量子干渉素子」の略称で、わずかな磁束の変化を検出できる高感度検出計です。
超伝導体とは液体ヘリウムなどによって極低温まで冷やされた際に電気抵抗がゼロとなる物質のことで、SQUIDとはリング状の超伝導体に1つまたは2つのジョセフソン接合を含む素子のことです。超電導体リングの中の磁束が変化すると、ジョセフソン接合を流れるトンネル電流が変化します。この変化量は磁束量子の整数倍となるため、高感度磁束計としてSQUID磁束計は使われています。
医療への応用
SQUID磁束計は高感度な磁束計として新規材料の磁気的な性質の測定、超伝導体の研究、微量不純物の磁気的性質の研究など幅広い研究開発用途で用いられています。その他にも生体磁場の計測などにも使われており、医療診断への応用も進められています。例えば脳の神経活動によって発生する微弱な磁場をSQUID磁束計で検出、解析する手法などが導入されています。
その他、心臓の電気的な活動によって生じる磁束の変化をSQUID磁束計で検出するという応用例もあります。心臓の動きに対応する磁束の変化は様々な情報を含んでおり、健常成人の標準データや心室負荷の評価データなどが報告されています。一方で心臓に由来する磁気の変化は非常に小さく、SQUID磁束計を用いた場合は外部の磁気がノイズとなるため、測定の際は磁気シールドルームなどの対策が必要です。