CT検査

監修:株式会社TANIDA

CT検査とは

CTの構造

図1. CR検査の概要

CT検査とは、CTスキャンとも呼ばれるX線を使った検査のことです。

ドイツ人のレントゲンにより1895年にX線が発見されたのち、産業界にもX線イメージングの有用性が認められ、現在では様々な分野でX線イメージング (以下、X線検査) が用いられています。

産業界で主に使用されるX線検査は大きく2つに分けられ、透過検査と、CT検査があります。

透過検査は、病院で行われているいわゆるレントゲン検査と同じ原理となります。透過する物質の材質や密度・厚さに応じて減衰した X線を、受光面となるフィルムや検出器が受光することで、被写体内部の状態を2次元画像化する手法です。

一方で、CT検査 (英: Computed Tomography) と呼ばれるコンピュータ断層撮影は、360°分の複数の透過画像を撮影し、コンピュータによって複数の画像を再構成計算することで、被写体の断層画像や立体的な3次元モデルを生成することができるデジタルX線検査です。

再構成された3次元画像は、任意の断面での被写体内部の観察が可能で、製品内の欠陥や異物の検出や肉厚の測定などを行うことができます。また得られる3次元モデルはデータとして出力することができるため、現在ではCADデータとの比較や、リバースエンジニアリングなどにも利用されています。

CT検査の使用用途

産業界におけるCT検査 (英: Computed Tomography) は、製品の品質管理や製品開発において非破壊検査 (英: Non-Destructive Testing, NDT) として広く使用されています。

自動車、航空宇宙、エネルギー、電子機器などの製造業において、例えば、鋳造部品や溶接部の内部欠陥の検出、製品内部の異物検査、組立部品の幾何寸法測定などを行うことができます。

製造業では、新製品の開発段階から製品の品質管理において重要な役割を果たすことが多く、設計の検証、試作品の評価、製品の耐久性や信頼性の調査などにも利用されます。

CT検査の原理

CT検査には、電離放射線ともよばれる電磁波であるX線を使用します。

X線は、波長が非常に短く大きなエネルギーを持っているため、物体を透過することができますが、物体を透過する際に原子の周りを回る電子などに衝突し、減衰していきます。金属のような密度の高い物質では減衰率は高くなる一方で、空気やプラスチックなど密度の低い物質では減衰率は低くなります。

透過する被写体の材質や密度・厚さに応じて減衰したX線を、受光面となるフィルムや検出器が受光することで、被写体内部の状態を白と黒のコントラストで表現することがX線検査の基本原理となります。

CT検査はこの基本原理を応用したものとなります。CT検査 (英: Computed Tomography) は、通常の透過型のX線検査とは異なり、複数の透過情報 (投影データ、透過画像) をもとに画像再構成と呼ばれるコンピュータでの計算により、被写体の3次元的な物理量の分布を得ることができます。

CT検査画像を得る場合、ハードウェアと再構成アルゴリズムの両方が必要となり、画像データを取得する方法により、そのハードウェアの構成やおよび再構成アルゴリズムも異なることに注意しなければなりません。

CT検査から得られた画像データは、3次元的な情報を持つことから、透過撮影では難しい被写体内部の幾何計測や3次元データへの変換など、非常に有用ではあるものの、複数の画像データの取得が必要であり、また複数の画像データを再構成するための計算が必要なため、一般的には透過型のX線検査に比べると1つのデータを取得するまでの時間が長いという欠点もあります。

CT検査の構造

CTとは

図2. CTの構造

X線CTの装置の構成としては、大きく以下の3つです。

  1. X線管 (及び高電圧発生装置)
  2. 検出器
  3. 回転ステージ等の駆動系ハードウェア

1. X線管 (及び高電圧発生装置)

X線管は出力する線量に応じて様々なタイプが存在します。産業用に使用されるX線管としては、焦点サイズが数mm程度のミニ・フォーカスX線管、ミクロン単位のマイクロ・フォーカスX線管、ナノメートル単位と極めて小さい焦点を持つナノ・フォーカスX線管があります。焦点サイズが大きいミニフォーカスX線管は出力エネルギーが多いため、大型部品のX線CTに適しており、一方で焦点サイズが小さいマイクロ・フォーカスX線管、ナノ・フォーカスX線管は出力エネルギーは小さいものの、画像のボケが極めて少ない特徴を生かして、半導体やチップ部品などの小型製品のX線CTに適しています。

2. 検出器

検出器にもさまざまなタイプが存在しますが、産業用X線CTには、LDA (英: Line Detector Array) センサーとFPD (英: Flat Panel Detector) センサーが使用されています。LDAセンサーは素子が線状に並んだ構造で、断層画像のみを撮影することができるセンサーです。散乱線の影響を受けにくいためノイズの少ない画像を得られますが、被写体をすべて撮影するためには断層画像を何枚も取得する必要があるため、全体をスキャンする場合には長時間の撮影が必要になります。

一方、FPDセンサーはテレビのモニターのように素子が平面的に並んだ構造です。一度のスキャンで広い範囲が撮影できるため、LDAセンサーと比べると非常に短時間でのスキャンは可能ですが、散乱線の影響を受けやすく、ノイズのやや多い画像となります。

3. 回転ステージ等の駆動系ハードウェア

X線CTでは、被写体を回転させる駆動系のハードウェアが必須になります。被写体を360°回転させながらX線を照射し、透過情報を検出、コンピュータでの再構成計算を経ることで、X線CT画像を得ることができます。駆動系のハードウェアの駆動の精度は得られるCT画像の精度やノイズの大きく影響を与え、また駆動する速度は撮影時間にも関係するため、X線CTでは駆動系のハードウェアも重要視されています。

CT検査のその他情報

1. CT検査の動向

近年、進歩を遂げているCT検査ですが、X線源の小焦点化により、さらに高精細なCT検査画像が作成できるようになっています。精細なCT検査画像が得られ、処理装置の計算能力向上による再構成の計算時間の短縮などもあり、様々な分野で活用されています。

目新しい分野では、ハイブリッド車や電気自動車に搭載される電池の試作品の評価や構造解析を行う事例や、マイクロフォーカスX線CTやナノフォーカスX線CTを用いた電子基板の詳細な解析や不具合調査などを行う事例が増えています。

内部を可視化することができることから、ガラス繊維強化プラスチック (英: Glass Fiber Reinforced Plastics, GFRP) や炭素繊維強化プラスチック (英: Carbon Fiber Reinforced Plastics, CFRP) の非破壊検査にも活用が進んでいます。これまではガラスやカーボンの繊維配向解析を行うには、製品を破壊することで検査を行っていましたが、CT検査を利用することで、破壊せずに評価されています。

2. リバースエンジニアリング

リバースエンジニアリング用途では、CT検査画像を基にして、CAD等の3次元データをCT検査画像から作成することができ、寸法測定やモデル比較を行うことができます。設計データと実際の製品の形状や寸法を比較することで、製品の設計変更や製造工程の改良などにも活用されています。

得られたCT検査画像データからCADデータが構築できることから、3Dプリンタとの相性が良く、CT検査から得られたCADデータを3Dプリンタへ入力することで、例えば設計図のない製品の形状を3Dプリンタによって具現化することなども行われています。

その他、スポンジや発泡ウレタンなどの発泡体のフォーム構造の解析、考古学での仏像の内部のスキャニング、魚をはじめとする生物の骨格のデータ化など、これまで使用されてこなかったような分野でCT検査の利用が進んでいます。

3. CT検査の流れ

CT検査は、一般的に撮影、評価、解析の順で行われます。

本記事はCTを製造・販売する株式会社TANIDA様に監修を頂きました。

株式会社TANIDAの会社概要はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です