アスパラギン酸とは
図1. アスパラギン酸の構造
アスパラギン酸は、タンパク質を構成する20種類の天然アミノ酸の中の一種です。アスパラガスの芽から発見された事にちなんで、この名前が付けられました。ヒトにおいては体内で合成可能な事から、非必須アミノ酸に分類されます。光学活性な化合物であり、L体とD体が存在しますが、タンパク質構成アミノ酸としてのアスパラギン酸は全てL体です。
アスパラギン酸は、1個のアミノ基(-NH2)と2個のカルボキシ基(-COOH)を持つ両性イオン化合物であり、等電点であるpH2.77の条件下ではその電荷が0となり、それより低いpHではプラスの電荷を、それよりも高いpHではマイナスの電荷を有します。
L-アスパラギン酸の物理化学的諸性質
1. 名称
和名: L-アスパラギン酸
英名:L-aspartic acid
IUPAC名:(2S)-2-aminobutanedioic acid
3文字略号:Asp
1文字略号:D
2. 分子式
C4H7NO4
3. 分子量
133.11
4. 融点
269~271℃
5. 溶媒溶解性
水に難溶、エタノール、ジエチルエーテルに不溶。酸、アルカリに可溶。
6. 味
うま味、酸味。
アスパラギン酸の生理的役割
アスパラギン酸は、タンパク質の構成物質として広く自然界に存在しています。本化合物は等電点が2.77であるため、生理的pHである中性領域においては脱プロトン化して負に荷電します。これは親水性を示す状態であるため、アスパラギン酸を分子表面に多く持つタンパク質は、一般的に水によく溶ける性質を示します。また、タンパク質中のアスパラギン酸は多段階の代謝を受けてオキサロ酢酸へと変換されます。このようにして生じるオキサロ酢酸はTCA回路サイクルの中間体であり、細胞がエネルギーを作り出すための重要な役割を担っています。
アスパラギン酸の効果・効能と使用用途
1. うま味成分としての特徴とその利用例
うま味成分といえばグルタミン酸がその代表例ですが、アスパラギン酸もうま味受容体と結合するため、ヒトにとってはうま味を感じさせるアミノ酸です。そのため、食品添加物として、調味料、炭酸飲料、清酒、粉ミルクなどで広く使われています。
2. 医薬品、化粧品等への応用
アスパラギン酸は両イオン性化合物であり、水素結合を作る事も可能で、さらには親水性を示します。このような特徴があるため、薬物を安定化、可溶化し、薬物とタンパク質との分子間力を高める目的で、医薬品添加物として使用されます。また、水との親和性が高いことから、化粧品に配合して保湿作用を高めるためにも使われています。 近年では、環境保護の観点から、紙おむつや生理用品などに使われる高吸水性ポリマーを、石油由来原料からアスパラギン酸由来のものに変えるための研究も進められています。
3. アスパルテームの原料としての利用
図2. アスパルテームの構造
アスパルテームとは、L-フェニルアラニンのメチルエステルとL-アスパラギン酸より構成されるジペプチド誘導体です。スクロースの200倍の甘みを示す事から、人工甘味料として利用されています。
アスパラギン酸が多く含まれる植物・食品の例
アスパラガス、サトウダイコン、ジャガイモ、豆類