アクリル酸とは
図1. アクリル酸の概要
アクリル酸は主にプロピレンの直接酸化反応によって得られる、炭素数が最も少ない不飽和カルボン酸で、特有の刺激臭を有する無色透明の液体です。アクリル酸は吸水性高分子であるポリアクリル酸の原料として用いられたり、エステル化したモノマーがアクリル繊維の原料として用いられています。
その他、分散剤や増粘剤などの原料にも用いられています。アクリル酸エステルはアルキル部位の炭素数を変えることで物性を変えることが可能であるため、用途に応じた樹脂、高分子の原料として炭素数の異なる様々なアクリル酸エステルが使われています。
アクリル酸は消防法第4類の第二石油類に該当する引火性液体です。また、熱や光によって重合反応が暴走する可能性もあるため、重合禁止剤や酸素濃度の管理による反応の抑制が必要です。また、アクリル酸は劇物に該当する物質であり、皮膚刺激性等の有害性もあるため、取り扱い時は適切な保護具の着用が求められます。
アクリル酸の使用用途
アクリル酸は主にプロピレンの直接酸化によって製造されています。直接酸化法とはプロピレンを酸化させることでアルデヒドであるアクロレインに変換し、さらに酸化させることでアクリル酸を製造する方法です。
アクリル酸は紙おむつなどに使われる高吸水性樹脂(SAP)であるポリアクリル酸の原料として用いられています。その他、アクリル酸をエステル化したアクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステルはアクリル繊維の原料などに用いられています。その他にもアクリル酸、アクリル酸エステルは、合成樹脂、分散剤や凝集剤、増粘剤などの原料として使われています。
アクリル酸のその他情報
1. アクリル酸を原料に用いた高分子
アクリル酸は上記の通り、様々な高分子の原料として使われています。具体的にはアクリル酸のみを重合させたポリアクリル酸、カルボン酸のプロトンをナトリウムイオンに置換したポリアクリル酸ナトリウム、更にはアクリル酸とアクリル酸ナトリウム塩に架橋剤を加えて重合させた高分子もあります。高吸水性樹脂には三番目に述べた架橋されたアクリル酸、アクリル酸ナトリウム塩共重合体が主に使われています。
アクリル酸と共重合させるモノマーの種類を変えることで様々な高分子を得ることができます。例えばアクリル酸とメタクリル酸アルキルを重合させて得られる共重合体は増粘剤などに使われています。アルキル部位の炭素数を変えることで粘度を変えることが可能であり、化粧品などの粘度調整に使われています。
2. アクリル酸の安全性と法規制
アクリル酸は常温で液体、特徴的な刺激臭を有する物質で、消防法第4類の第二石油類に該当する引火性の物質です。また、アクリル酸は分子内に炭素-炭素二重結合を有しており、重合反応が起こる可能性があります。一般的には酸素濃度の管理や重合禁止剤を添加して重合を抑制していますが、加熱や光などで反応が起こり、反応熱によって反応が促進、暴走する可能性があります。
その他、アクリル酸は毒物及び劇物取締法の劇物に該当する物質であるほか、皮膚腐食性、刺激性がある物質でもあります。また、アクリル酸はPRTR法の第1種指定化学物質であり、労働安全衛生法上のリスクアセスメント対象物質でもあり、適切な管理、評価が求められる物質です。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0002.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/66/8/66_394/_pdf