チェーンレンチとは
チェーンレンチ (英: chain wrench) は、パイプなどを回すための工具です。
断面が丸くてしっかり固定して掴むことが難しい対象物にチェーンレンチは有用です。チェーンで対象物を巻き付け、適切な方向に回すと締め付けが強まり、対象物を回転させます。少しだけ逆に回転させると締め付けが緩んで取り外せます。
締め付ける方向と回転方向を間違えずに巻き付ける必要があり、チェーンの取り付け位置を変えると様々なパイプサイズにも対応可能です。
チェーンレンチの使用用途
チェーンレンチはチェーントングや鎖パイプレンチ、チェーンパイプレンチとも呼ばれ、主に太いパイプを締め付ける際やボーリングロッドの接合などに利用可能です。どんな形状でもチェーンで固定でき、狭い場所でもチェーンが入れば作業できるため、特にパイプレンチでは作業できない狭い場所や壁面に近いパイプ、大きな外径のパイプの締め付けなどに適しています。
具体的には自動車整備工場でのオイルフィルタの取り付け取り外しや、配管施工現場でのパイプや継手のねじ込みなどの作業にチェーンレンチを使用します。チェーンの取り付け位置を変更すれば様々な大きさのパイプに対応でき、形状や断面が円形の部品や、三角、四角、複雑な形状の場合でも、しっかりと掴めて確実な締め付けが可能です。
チェーンレンチの原理
1. チェーンレンチの使い方
まずチェーンを鋼管にやや緩く巻き付けて、チェーンの両端に出ているピンを溝部に引っ掛けます。手前にレンチを引きながら歯部をパイプに引っ掛け、チェーンが菅に巻き付いている方向へレンチを回転させます。歯がパイプに食い込むとチェーンが張られるため、パイプの回転や保持が可能です。
一般的に日本製のチェーンレンチの歯は、片方向に使用する片歯です。欧米では反対方向に歯溝を付けた2つの歯により両方向に回転可能なタイプが主流で、レンチを付け替えずに締め付けたり、緩める作業ができます。
2. 使用上の注意点
チェーンレンチの歯はカム形状のため、中空で小口径の配管に対して過度な締め付けトルクを与えると、パイプが変形するリスクがあります。フレームにストッパー機能があるパイプレンチの場合には上アゴの噛み込みにより動きが止まりますが、チェーンレンチの場合には締め付けトルクと管強度との力学的バランスにより噛み込みを止めます。チェーンレンチをパイプの接合部付近で使うと漏れの原因になり、締め付けトルクの適切な管理が必要です。
また使用中に本体引っ掛け部からチェーンが外れる場合があり、重大な事故に繋がります。最近は対策として各メーカーにより、引っ掛け部からチェーンが簡単に外れないように脱落防止機構が付けられています。
チェーンレンチの選び方
下記のポイントを考慮してチェーンレンチを選ぶ必要があります。
1. パイプ外径
パイプの外径によってレンチの型番が異なるため、適合するパイプ外径を選ぶことが重要です。チェーンの長さはパイプ外径で決まり、市販のチェーンを継ぎ足すことでさらに大きなパイプに対応できるタイプもあります。
2. 保証トルク
保証トルクとはレンチがねじれたり折れることなく、安全に使用可能なトルクを指します。型式や材質によって保証トルクが異なるため、作業に適合した保証トルクの型式を選定する必要があります。
3. その他
チェーンレンチにはラチェットのように使えるモデルもあります。2つの刃が反対になっているジョーが付いているため、レンチを付け替えることなく両方向の回転に対応しています。ジョーとは対象物をつかむ部分にある金具のことです。
またジョーの摩耗や損傷の際に交換可能なモデルもあります。さらにチェーンの脱落防止機構を備え、チェーンレンチの自重で脱落しないタイプもあり、使用用途を十分考慮してから選ぶことが重要です。