サッカリン

サッカリンとは

サッカリンの基本情報

図1. サッカリンの基本情報

サッカリン (Saccharin) とは、人工甘味料として用いられる有機化合物です。

化学式 C7H5NO3Sで表記され、ベンゼン環にスルタム環が縮環した骨格を持ちます。o-スルホベンズイミド、o-安息香酸スルフィミド、2-スルホ安息香酸イミドなどの別名があります。CAS登録番号は、81-07-2です。分子量183.18、融点228.8° Cであり、常温では無色透明の結晶か白色の粉末形状です。

わずかに芳香臭を呈します。密度0.828 g/cm3、酸解離定数pKa1.6です。エタノール及びアセトンに溶け、水にわずかに溶ける物質です。

サッカリンの使用用途

サッカリンの主な用途は甘味料です。ショ糖の甘味度を1とした場合、サッカリンの甘味度は200-700であり、一万倍の水溶液でも甘味があるとされています。サッカリン自体は水溶性が低いためチューインガムなどの限られた食品にのみ使われており、一般的には水溶性のナトリウム塩であるサッカリンナトリウムがいろいろな加工食品に用いられています。

サッカリンナトリウムは、歯磨き粉やガム、漬物、菓子など、糖分による腐敗防止の必要性がある医薬品、食品にも使用されています。また、分解されてもブドウ糖が含まれていないために体内で吸収されにくく、ショ糖などの糖類よりも摂取エネルギーが小さい物質です。

糖尿病患者など甘味が制限される食事などに砂糖の代替として使用されたり、ダイエット用食品、飲料に使用されたりしています。

サッカリンの性質

サッカリンの水溶液はショ糖の350倍あるいは200–700倍の甘味を持ち、痺れるような刺激の後味を呈します。ただし、高濃度では苦味を感じるとされています。

通常の保管条件においては安定な物質です。ただし、光によって変質する恐れがあり、強酸化剤との接触を避けることが必要とされています。有害な分解生成物として、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物が挙げられます。

サッカリンの種類

サッカリンは、研究開発用試薬製品や甘味料・食品添加物原料などとして販売されています。研究開発用試薬製品としては、サッカリン単体の他、サッカリンナトリウム水和物として販売されており、容量の種類は25g、500gなどです。通常、どちらも常温で保存可能な試薬製品として販売されています。研究においては、生理作用研究、有機合成原料などの用途です。

甘味料・食品添加物原料製品は、ほとんどがサッカリンナトリウムとして販売されています。容量の種類は、1kg×20 /カートンなどの比較的大きい容量が中心です。工場などを対象とした、産業向けの供給となっています。

サッカリンのその他情報

1. サッカリンの合成

トルエンを原料とするサッカリンの合成

図2. トルエンを原料とするサッカリンの合成

サッカリンは1878年にコールタールの研究から偶然発見された物質です。多くの合成法が報告されています。元はトルエン (コールタールの成分の1つ) から合成されましたが、収率は低く、1950年にアントラニル酸メチルに亜硝酸・二酸化硫黄・塩素・アンモニアを順次作用させる改良合成法が報告されました。その他の合成方法では、2-クロロトルエンを原料とする合成反応などがあります。

 

アントラニル酸メチルを原料とするサッカリンの合成

図3. アントラニル酸メチルを原料とするサッカリンの合成

2.サッカリンの安全性

サッカリンは、1960年代に行われた動物実験の結果から発がん性リスクが示唆されたため、使用禁止となっていた時期がありました。その後行われた様々な試験では発がん性が確認できなかったため、使用禁止が撤回されています。ただし、日本では安全性維持のために、現在でも食品衛生法によって各食品への使用量が制限されています。

サッカリンはこうした規制の対象となった経緯から、多くの食品においては、スクラロース・アセスルファムカリウム・アスパルテームなどの他の人工甘味料に代替されるようになりました。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0866JGHEJP.pdf

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