コンドロイチン硫酸ナトリウムとは
図1. コンドロイチン硫酸ナトリウムの構造
(コンドロイチン硫酸ナトリウムA)
コンドロイチン硫酸ナトリウム (Chondroitin Sulfate Sodium SaltもしくはSodium chondroitin sulfateなど) とは、クジラやサメなどの軟骨に合まれる酸性ムコ多糖類であるコンドロイチン硫酸のナトリウム塩です。
コンドロイチン硫酸は、通常プロテオグリカン (特殊な構造をもつ糖とタンパク質の複合体) として存在し、軟骨、皮膚などの結合組織や、脳などあらゆる組織に広く分布しています。保水性、粘性から、関節などではクッション材としても働いています。
その塩であるコンドロイチン硫酸ナトリウムは、医療用医薬品や一般用医薬品などとして利用されている物質です。
コンドロイチン硫酸ナトリウムの使用用途
コンドロイチン硫酸ナトリウムは、医薬品や食品、化粧品などに用いられている物質です。
1. 医薬品
医薬品用途では、医療用医薬品、一般用医薬品共に販売されている薬剤です。医療用医薬品としては、注射液の剤形で腰痛症、関節痛、肩関節周囲炎 (五十肩) の治療に適応がある他、点眼薬として角膜表層の保護に適応があります。
一般用医薬品では、経口薬で関節痛、神経痛に適応がある他、医療用医薬品と同様に角膜表層を保護する点眼薬としても用いられています。
2. 食品
食品用途としては、製造過程の乳化安定剤として、マヨネーズ、ドレッシングなどに用いられます。これは、コンドロイチン硫酸ナトリウムが吸水性および保水性に優れているためです。また、魚臭を消すため魚肉ソーセージに用いられることもあります。
3. 化粧品
化粧品用途では、なめらかな感触をもたらす保湿剤として使用されています。
コンドロイチン硫酸ナトリウムの性質
図2.コンドロイチン硫酸ナトリウムの構造の種類
コンドロイチン硫酸は、D-グルクロン酸 (GlcA) と N-アセチル-D-ガラクトサミン (GalNAc) の2糖の繰り返し構造の糖鎖に対して、硫酸が結合した構造をしています。この2糖単位の繰り返し構造において硫酸基の位置やGlcAのエピ化の有無のバリエーションがあるため、コンドロイチン硫酸には複数種類の異性体が存在します 。
コンドロイチン硫酸ナトリウムは、これらそれぞれが硫酸塩となったものです。
コンドロイチン硫酸の構造
図3. コンドロイチン硫酸ナトリウムの構成単位
コンドロイチン硫酸ナトリウムを構成する単糖において、硫酸基は、GalNAc の4位と6位に付加した物が主なものです。コンドロイチン硫酸B (デルマタン硫酸) では、コンドロイチン硫酸の GlcA がエピ化し、イズロン酸となっています。
コンドロイチン硫酸Eでは4位、6位の両方が硫酸化されており、コンドロイチン硫酸Dではグルクロン酸のヒドロキシル基が硫酸化されています。
コンドロイチン硫酸ナトリウムの種類
販売されているコンドロイチン硫酸ナトリウムの種類は、研究開発用試薬製品、化成品 (医薬品原料) 、医薬品などです。
1. 研究開発用試薬製品
研究開発用試薬製品としては、0.1g、5g、25gなどの容量の種類があります。また、コンドロイチン硫酸ナトリウムとして販売されているもの以外に、前述のA~Eの種類別に単離されたものが販売されていることがあります。
その場合は、それぞれ「コンドロイチン硫酸Aナトリウム」「コンドロイチン硫酸Bナトリウム」「コンドロイチン硫酸Cナトリウム」「コンドロイチン硫酸Eナトリウム」などの製品名で販売されています。主に細胞生物学や生化学などの分野で使用されている試薬製品であり、ニワトリ軟骨、ブタ皮膚、イカ軟骨などを原料として製造されています。なお、研究開発用製品は臨床用に使用することはできません。
2. 医薬品
医薬品では、200mg注射液や、1%/3%点眼薬などの処方箋医薬品が存在しており、その他に各種の一般用医薬品があります。処方箋医薬品の購入には医師の処方箋が必要です。