電磁波シールド

電磁波シールドとは

電磁波シールド

電磁波シールドとは、電磁波の影響を受けないように電磁波を低減、もしくは防止するために使う材料のことです。

このような考え方をノイズコントロールやEMC対策と呼びます。また、電磁波シールドとして使用する材料は、シールド材と呼ばれています。電磁波は、私たちの生活のなかでも、さまざまな機器から発生しています。

例えば身近な機器から探してみると携帯電話がそのひとつです。携帯電話は、電波と呼ばれる電磁波を飛ばすことで内蔵されているアンテナや基地局を通して通信をおこなっており、マイクロ波と呼ばれる800ギガヘルツから2ギガヘルツの周波数帯の電波を使用しています。

実のところ、電磁波とは、さまざまな種類の波長が存在しているため、コンセントにプラグが刺さっていれば電磁波が発生しています。そんな電磁波をお互いが干渉しないように制御するために使用する材料が電磁波シールドなのです。

電磁波シールドの原理

電磁波シールドは、一般的に電磁波を反射することで、その影響を低減させます。例えばプラスチックの電磁波シールド方法には、表面処理による方法と複合的な方法があります。

表面処理方法には、導電性塗料(銀やニッケル)やメッキ(銅やニッケル、クロム)を塗布する方法、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、金属溶射などがあります。

複合的な方法には、ガラス繊維やカーボン繊維金属繊維、金属フレーク、粉末などがあり、プラスチックに導電性のフィラーを混ぜることで電気伝導性とシールド性を得る仕組みです。

電磁波シールドの選び方

電磁波シールドを選ぶうえで知っておくべきことは、電磁波の構成と性質です。

電磁波は、大別すると「放射線」「光」「電波」「電磁界」で分類され、さらに細かく分類が分かれています。

例として放射線であれば「ガンマ線」「エックス線」のように細別されています。それぞれの周波数や波長は、異なっており、電磁波シールドを選択する際にも考慮しなければなりません。

ここからは上記に挙げた中であまり聞き慣れない「電磁界」について解説していきます。

電磁波シールドのその他情報

1. 電磁波シールドの使い方

電磁波シールドには、電磁シールドと磁気シールドが存在しています。電波と磁気は、性質が異なるため、低減や防止を行う方法も異なります。

電磁シールド
電磁シールドは、導電性の材料により対象の空間を囲むことによって、電波を反射して電波の侵入や漏洩を防止します。

つまり、壁面の電波の遮断にシールド層を造ることで対応するということです。窓や扉には、シールドを施したシールドガラスやシールド扉を取り付けることで防止します。換気口には、特殊なフィルターを設置することで対応が可能です。

しかし、材料のあいだに隙間が存在すると、電波の侵入や漏洩が発生してしまいます。電磁シールドは、施工した面や部材の表面で電波を反射する技術のため、反射した電波が減衰せずに反射する点に注意が必要です。

磁気シールド
磁気シールドは、鉄などの磁性材料を使用して遮断したい空間を密閉することで、磁気を迂回させて侵入を防ぐ技術です。磁気の影響を多く受ける半導体工場や磁気を発生する装置を取り扱う病院などで使用されています。

電磁シールドでは、反射させることによって、電波の侵入や漏洩を防止していました。

一方、磁気シールドでは、磁性材料の内部に磁気を誘導することで磁気を防いでいます。

この両方の性質を兼ね備えている材料が電磁波シールドです。

2. 電磁波の吸収

電磁波シールドは、電磁波を反射するだけではなく、電磁波を吸収することで電磁波の防止や予防を行う方法もあります。具体的な方法は、以下のとおりです。

電磁波シールドにより電磁波を吸収するには、電磁波を内部に通過させることで、電磁波のエネルギーを減衰させる方法があります。一般的に電磁波シールドは、損失性媒体という物質で構成されています。この物質は、電磁波を熱として消費し、電磁波強度を減衰させます。

一方で、電磁波を吸収する場合には、電磁波吸収体という電磁波を吸収する素材を使用します。通常、電磁波は、損失性媒体に入射を開始すると、一部が物質を通過せずに反射されてしまうため、電磁波吸収体などが使用されます。

この方法を採用したのが、ピラミッド型電磁波吸収体です。ピラミッド型電磁波吸収体は、奥行き方向の距離を必要とするため、厚みが非常に大きくなってしまいますが、周波数に依存せずに電磁波を完全に吸収することが可能です。

3. 電磁波シールドの効果

電磁波シールドは、定量的に評価されており、一般的にSE(Shielding Effectiveness)という数値を使用して評価を行います。

そして、シールドの効果は、電磁波がシールドを通り抜けた際の減衰量から算出され、一般的に下記の式が用いられます。

シェルクノフの式
SE(シールド効果)= R(反射損失)+ A(減衰損失)+ B(多重反射項)

この考え方では、シールド材を設置していない状態で、空間一点の電界強度か磁界強度を基準として設定し、シールド材を設置した後に同空間での電界強度と磁界強度の値からシールドの効果を定義しています。

電界と磁界のどちらの比を選択するかは、電磁波を発する対象によって検討します。

4. 電磁界について

電磁界は、送配電線や家庭の電化製品に存在しています。電磁界とは、電界と磁界を合わせた現象のことを呼んでいます。

電界は、電圧がかかっている状態のことをいいます。下敷きで頭を擦ると髪の毛が立ち上がりますが、これが電界の発生している状態です。

磁界は、磁気が働く空間のことを呼んでおり、磁石の周りに砂鉄などを巻くと弧を描いたように綺麗なラインが発生します。この現象が磁界の発生している状態です。

電磁界の原理
まず、プラグをコンセントに接続してコードに電圧がかかることで電界が発生します。次に、コードが繋がっている製品の電源を入れることで、コードに電流が流れ、磁界も発生します。

この両方の現象が電磁界の発生している状態となっています。これらの現象による電磁波の混線などを防ぐためには、シールド塗料やシールド効果を有したコンクリートによる施工などを検討していくことが必要です。

また、周波数を選択して電磁的なシールドを生み出すことができるフィルムなども販売されています。近年では、閉鎖的だった磁気シールドも開放的に帯状のシールド材を等間隔で設置することにより、少ない材料でもこれまで以上に効果を発揮する技術も開発されています。

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