トレオニンとは
トレオニン (英: Threonine) とは、アミノ酸の1種で化学式C4H9NO3で表される物質です。
側鎖にヒドロキシエチル基を持つ構造を有します。略号はThrまたはTであり、CAS登録番号は80-68-2 (L体は72-19-5) です。光学活性中心を2つ持つため4つの異性体が存在し、それぞれL-トレオニン(2S,3R) 、D-トレオニン(2R,3S)、L-アロトレオニン(2S,3S) 、D-アロトレオニン(2R,3R) と呼ばれます。
トレオニンの使用用途
トレオニンの主な用途は、医薬品原料 (輸液等) 、培地、食品添加物などです。トレオニンは、生体内ではL体のみが存在し、L-トレオニンはヒトや動物の体内で合成ができない必須アミノ酸の1つです。
成長や新陳代謝を促進する効果や、肝臓の機能を高める効果、胃炎改善作用、筋緊張昂進の抑制作用などがあると言われています。肝臓に脂肪が蓄積するのを防ぎ、脂肪肝を予防する効果もあります。動物性タンパク質に多く含まれ、卵、スキムミルク、ゼラチンなどに特に多く含まれる物質です。
トレオニンの性質
トレオニンは、分子量119.12、融点244℃であり、常温での外観は白色粉末です。水にやや溶けやすく、エタノール及びジエチルエーテルにほとんど溶けません。
無臭の物質であり、密度は1.07g/mL、酸解離定数pKaは2.63 (カルボキシル基) 、10.43 (アミノ基) です。
トレオニンの種類
トレオニンは、主に研究開発用試薬製品や、飼料用アミノ酸、食品添加物などとして販売されています。飼料用アミノ酸や食品添加物としては、L体のみが利用されますが、試薬製品としてはDL混合体、D体、L体の製品がそれぞれ存在します。
1. 研究開発用試薬製品
研究開発用試薬製品としては、DL混合体、D体、L体などの種類があり、容量の種類も0.5g、1g、5g、25g、100g、500gなど、実験室で取り扱いやすい容量を中心に様々なものがあります。通常、室温で保管可能な試薬製品として扱われる物質です。
2. 飼料用アミノ酸
飼料用アミノ酸としてはL-トレオニンのみが用いられており、肥育豚やブロイラーなどの肥育期の飼料に利用される物質です。25kg (袋包装) など、比較的大容量で提供されることが一般的です。
3. 食品添加物
トレオニンは、食品添加物としては、食品や飲料に用いられる物質です。調味料や栄養強化剤などの用途が一般的です。業務用では25kgや50kgなど、産業用に使用しやすい大容量で提供されています。
トレオニンのその他情報
1. トレオニンの反応性
トレオニンは、通常の保管条件では安定と考えられている物質ですが、光により 変質するおそれがあります。高温と直射日光を避けて保管することが必要です。強酸化剤は混触危険物質に指定されており、危険有害な分解生成物として、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物が指摘されています。
2. トレオニンの生合成
トレオニンは、植物や微生物の体内において、次のような各反応を経て生合成されています。
- 酵素アスパルトキナーゼがアスパラギン酸のβ-カルボキシル基をリン酸化する
- β-アスパルテートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼによって前段階の中間体生成物が還元され、β-アスパルテートセミアルデヒドが生成する
- ホモセリンデヒドロゲナーゼによる還元反応によりアルデヒド基がヒドロキシ基となる
- ホモセリンキナーゼによるリン酸化を受ける
- トレオニンシンターゼにより脱リン酸化とヒドロキシ化反応が進行し、トレオニンが生成する
3. トレオニンの取扱い上の注意
トレオニンの取り扱いの際は、局所排気装置を設置し、保護衣、保護メガネなどの適切な個人用保護具を使用することが必要です。また、保管の際は容器を遮光し、換気のよいなるべく涼しい場所に密閉して保管することとされています。