フルシトシン

フルシトシンとは

フルシトシンとは、抗真菌薬の1種として知られている有機化合物です。

化学式 C4H4FN3Oで表される組成をしており、別名では5-フルオロシトシン (5-FC) と呼ばれている通り、ピリミジン塩基であるシトシンの5位がフルオロ化された構造をしています。その他の別名には、4-アミノ-5-フルオロ-2(1H)-ピリミジノン、 フルシトシンなどがあります。CAS登録番号は、2022-85-7です。

フルシトシンの用途

フルシトシンは、主にカンジダ感染症やクリプトコッカス症の治療に用いられる抗真菌薬です。分類では、フッ素化ピリミジンアナログに属します。適応は、真菌血症、真菌性髄膜炎、真菌性呼吸器感染症、黒色真菌症、尿路真菌症、消化管真菌症などであり、有効な菌種はクリプトコックス、カンジダ、アスペルギルス、ヒアロホーラ、ホンセカエアです。

真菌細胞内でシトシンデアミナーゼによる脱アミノ化を経て5-フルオロウラシルとなり、RNAのミスコードを引き起こしてDNAやRNAの合成を阻害する作用を及ぼします。その結果、リボソームタンパク質の合成が阻害され、抗真菌効果が得られます。フルシトシンは、研究用途でヌクレオシド誘導体の1種としてTMP生合成研究に使用される物質です。

フルシトシンの性質

フルシトシンは、分子量129.09、融点298-300 ℃ (分解) であり、常温での外観は白色粉末です。密度は1.40g/mLであり、水やエタノールに溶けにくい性質を示します。

フルシトシンの種類

フルシトシンは、主に研究開発用試薬製品や医薬品として販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、1gや5gなどの容量の種類があります。実験室で取り扱いやすい容量での提供ですが、その中でも小容量が中心であり比較的高価な試薬製品ということができます。通常、冷蔵 (2-8℃)で保管される物質です。

2. 医薬品

フルシトシンは抗真菌薬として販売されています。医師の処方の元で服用される薬剤であり、購入に当たっては処方箋が必要です。フルシトシンの名称は一般名であり、製品名には「アンチコル」などの名称があります。

剤形は、経口投与 (錠剤: アンチコル錠500mg) や静脈点滴が一般的です。

フルシトシンのその他情報

1. フルシトシンの取扱い上の注意

フルシトシンはGHS分類にて、生殖毒性: 区分2に指定されている物質です。具体的には生殖能又は胎児への悪影響を及ぼす恐れがあります。保護衣、保護手袋、保護メガネなどの適切な個人用保護具を用いることが必要です。

2. フルシトシンの反応性

通常の保管・取り扱い環境では、安定と考えられている物質です。強酸化剤は混触危険物質に指定されています。火災などの場合における危険有害な分解生成物として、炭素酸化物、窒素酸化物 (NOx) 、フッ化水素が挙げられます。

3. フルシトシンの副作用

フルシトシンを医薬品として投与する場合の主な副作用は、食欲不振、嘔気、白血球減少、発疹、胃部不快感、下痢、血清カリウム低下、AST、ALTの上昇などです。特に重篤な副作用には、汎血球減少、無顆粒球症、腎不全 (頻度不明) があります。異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うことが必要です。

4. フルシトシンと他の薬剤との相互作用

薬剤の中にはフルシトシンと相互作用する物があるため、注意が必要です。例えば、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤は、フルシトシンとの併用により早期に重篤な血液障害や下痢、口内炎等の消化管障害等が発現するおそれがあり、併用禁忌とされています (これらの薬剤の投与中止後少なくとも7日以内はフルシトシンを投与しない) 。

また、抗悪性腫瘍剤等や放射線照射、アムホテリシンBやトリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤は、骨髄抑制作用を増強するおそれがあるため、併用注意に指定されています。

参考文献
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907004854896151

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です