引張り試験

引張り試験とは

強度試験の種類

図1. 強度試験の種類

引張り試験とは、曲げ試験圧縮試験と同様、材料に対する強度試験の一種です。

試験片の両端を外側に引っ張る力、すなわち引張り力を加えたときの強度を測定する試験です。引張試験機万能試験機により引張荷重を加え、ロードセルひずみゲージ変位計などを用いて測定を行います。試験により得られた、ひずみと負荷荷重または応力の関係を分析することで、材料の力学的特性を評価することができます。

引張り試験は、様々な分野で実施されています。試験により得られたデータは、安全で安心して利用できる製品の開発に寄与しています。

引張り試験の使用用途

引張り試験は、土木・建築・機械・医学など様々な分野で行われています。

引張り試験の目的は研究開発や品質保証であり、金属・ゴム・プラスチック・紙など様々な材料が対象です。また、大学等の授業に用いられることもあり、実際に材料を引き延ばし、破断に至るまでの様子を観察、データの分析や考察を行うことで、材料についての学びを深めます。

引張り試験により得られるデータは、各種シミュレーションや設計などを行う際に用いられます。安全で安心に利用できる製品の開発にとって、その基礎を支えるような重要なデータです。

引張り試験の原理

応力-ひずみ曲線_

図2. 応力 – ひずみ曲線

試験片の両端に引張り力を加えると、材料は引張り力の方向に伸びはじめ、最終的に、破断に至りますが、引張り試験では、この間の、応力とひずみの関係、試験片の様子に基づき材料の評価を行います。

材料に加わる応力とひずみは比例しますが、引張り力を加え続けると、応力 – ひずみ間の比例関係が崩れ、ひずみの変化に対する応力の上昇のし方が緩やかになります。さらに加重し降伏点と呼ばれる状態を過ぎると、応力は一度下がりますが、再び加重とともに応力が上がります。このときの応力の最大値が引張り強度です。

引張り強度は、試験片が破断されるまで続けることで、信頼性のあるデータになります。

引張り試験のその他情報

1. 引張り試験により得られるデータ

引張り試験より得られるデータの例

図3. 引張り試験より得られるデータの例

引張り試験により得られる情報は、応力 – ひずみ曲線や伸び・絞り・ポアソン比などがあり、応力 – ひずみ曲線を分析することで、弾性率・上降伏点・下降伏点・引張り強さ・破断点などの情報が得られます。

1. 伸び (%)
伸びは、試験片が破断までにどれだけ伸びたのかを示す割合のことであり、一般的に、高強度であるほど小さく、低強度であるほど大きな値となります。試験片の2か所に標点と呼ばれる印をつけ、試験開始前と破断時に標点間の距離を測定します。もともとの標点間の距離に対する距離の変化量を百分率で表したものが伸びとなります。

2. 絞り (%)
絞りは、試験片の断面積がどれだけ変化したのかを表す割合のことであり、この値が大きいほど、深絞り加工などに向いているということになります。破断後の試験片において最もくびれた部分の断面積を測定します。もともとの断面積に対する断面積の変化量を百分率で表したものが絞りとなります。

3. ポアソン比
ポアソン比は、引張荷重が加えられた方向のひずみとそれに垂直な方向のひずみの比の絶対値です。試験片に2軸のひずみゲージを貼り付け、引張り試験を実施しることで求めることができます。材料ごとに一定の値であり、ポアソン比が大きいほど、引張荷重に対して垂直な方向にひずむということになります。

4. 弾性率 (N/mm2)
弾性率は、応力とひずみの関係を一次式で表すことができる区間、弾性域における傾きのことです。ここで、弾性域とは、材料が変形したとしても、荷重を取り除けば元の形状に戻る区間のことです。この傾きが緩やかであるほど、柔らかい材料であるということになります。

5. 上降伏点 (N/mm2)
上降伏点は、弾性域と塑性域の境界で、応力値が最も高くなる点のことで、一般的に降伏点と呼ばれます。ここで、塑性域とは、荷重を取り除いても変形が戻らない区間のことであり、塑性変形が急激に生じ始める現象を降伏と呼びます。降伏点が高いということは、塑性変形しにくいということになります。

6. 下降伏点 (N/mm2)
下降伏点は、降伏棚において応力値が最も低い点のことであり、この値が低いほど塑性加工の成型能がよくなります。ここで、降伏棚とは、上降伏点で急激に降伏が始まった後に現れる、応力度が低下し、ひずみが増加しても応力が増加しない区間のことです。

7. 引張り強さ (N/mm2)
引張り強さは、引張り試験中に加わった最大引張応力であり、材料のもつ最大強度のことです。引張り強さが高いほど、高強度であるということになります。

8. 破断点
破断点は、応力 – ひずみ曲線において、試験片が破断したときの点のことであり、そのときの応力を破断応力、ひずみを破断ひずみといいます。 

2. 引張り試験に必要な設備

引張り試験では、引張荷重を加える目的で引張り試験機や万能試験機が、測定の目的でロードセル・ひずみゲージ・変位計が用いられます。

試験機には、モーター式・油圧式・電磁式などの種類があります。万能試験機は治具を取り替えることで様々な試験を実施することができますが、引張り試験においては、ねじ式平面つかみ具、空気式平面つかみ具、定位置くさび式つかみ具などの治具が用いられます。

ひずみゲージは、試験片に貼り付けて使用され、測定対象と一緒にひずみ、その際の電流の変化量を測定することによって、ひずみを算出します。測定に用いられる変位計には、接触式と非接触式のものがあり、前者は小さな伸びを高精度で測定することができ、後者は接触による試料への影響を抑えることができます。これらは、いずれも、さらに、いくつかの種類があるため、材料や用途により使い分けられます。

参考文献
https://info.shiga-irc.go.jp

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