マイクロシリンジとは
マイクロシリンジ (英: micro syringe) とは、液体クロマトグラフ (HPLC) やガスクロマトグラフ (GC) に対して液体試料を注入するための筒状の実験器具です。
シリンジの容量は0.1 µLから500 µL程度まで幅広く、また材質もガラス製や金属製のものがあるため、注入対象となる装置や目的の分析物質によって適切なマイクロシリンジを選ぶ必要があります。
ただし、近年では試料が自動注入されるオートサンプラ (英: Auto Sampler) が広く用いられているので、手動で注入操作を行うことは少なくなっています。
マイクロシリンジの使用用途
マイクロシリンジは、主にガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーに使用されます。クロマトグラフ装置でマイクロシリンジを使って、分析試料を注入して測定可能です。
クロマトグラフ装置の試料導入部位には、自動で試料が注入されるオートサンプラーと手動で注入が必要なマニュアルインジェクターがあります。マニュアルシリンジとオートサンプラー用シリンジがあり、それぞれに対応したマイクロシリンジが使用されます。
オートサンプラーでは5 µLの微量試料溶液から1 µLだけを注入するなどの操作は困難ですが、マニュアルインジェクションを行うことで、微量のサンプルからその一部を測定に使用可能です。
マイクロシリンジの原理
マイクロシリンジを取り扱う際には、まず使用前に針先の歪みや本体のひび割れなどがないか点検します。次に分析対象以外の望まない物質によるコンタミネーション (英: contamination) を防ぐため、注入するサンプルで数回洗浄します。
その後、シリンジ内に目的注入量よりも多く液体を吸引した後に針を上向きにし、液体を押し出すことで気泡を除去可能です。このとき、押し出される液体はティッシュなどで綺麗にふき取ることで、コンタミネーションなどの問題を防止可能です。
クロマトグラフィー装置に液体をインジェクションする場合には、マニュアルインジェクターがinjectionの位置になっていることを確認してからシリンジの針を奥まで差し込みます。その後、素早くインジェクターの位置をloadに変更し、シリンジの中身を押し出して、注入が終了したらそのまま素早くインジェクターの位置をinjectionに変更してシリンジを引き抜きます。
試料注入後は試料溶媒でインジェクターとシリンジを数回共洗いすると、キャリーオーバーなどの問題を防止可能です。
マイクロシリンジの種類
マイクロシリンジには、針先端の形状の違いによって2種類あります。液体クロマトグラフィー用マイクロシリンジとガスクロマトグラフィー用マイクロシリンジです。
液体クロマトグラフィー用マイクロシリンジは針の先端が直角にカットされており、ガスクロマトグラフィー用マイクロシリンジは鋭角にカットされています。ガスクロマトグラフィー用マイクロシリンジを液体クロマトグラフィーに使用すると、導入部の奥に当たって傷つけます。
その一方で、液体クロマトグラフィー用マイクロシリンジは、ガスクロマトグラフィーの導入部には気密性を高めるために取り付けられたゴムのようなセプタムを刺し通せません。
マイクロシリンジの構造
マイクロシリンジは、注射器に形状が似ています。シリンジ部とプランジャーで構成され、シリンジ部には針が取り付けられています。プランジャーを引くとシリンジ内に試料ガスや試料溶液が吸い上げられ、押すと排出されてシリンジ部に目盛りが付いている場合が多いため計量可能です。容量は幅広く、数μL〜数百μLなどです。
一定量を採取する際には、ガイドを取り付けて用いる場合もあります。低容量のマイクロシリンジはプランジャーが細くてデリケートなため、プランジャーの抜け落ちや押し込み操作の失敗で曲がることを防止するためにガイドを取り付けています。