ねじ込みフランジとは
ねじ込みフランジ (英: Threaded flange) とは、配管に使用するねじ込み継手の一種で、フランジと配管 (パイプ) の接続方法がねじ込み式のフランジのことです。
ねじ込みフランジは、フランジ内径に管用テーパねじのメスねじが加工され、管用テーパねじのオスねじ加工された配管端部をねじ込み接続します。
※管用 (くだよう) テーパねじとは、JIS B0203で「配管・配管用部品・流体機器などの接合において、ねじ部の台密性を主目的とするねじ」と示されています。
ねじ込みフランジの使用用途
図1. ねじ込みフランジの使用例
ねじ込みフランジは、流体の圧力・温度があまり高くなく、ある程度の流体の漏洩が危険ではない空気配管用などで使用されます。他の接続方法 (溶接式、遊合形など)とは異なり、限定的な使用用途である点が特徴です。
ねじ込みフランジを使用し、漏洩が発生した場合は、一度配管取り外してシールテープを巻き直して、再度締め付け直す必要があります。配管とフランジの取り付け・取り外しの作業が容易でなければならない場合に使用されるケースが多いです。
また、配管とフランジの接続方法がねじ込みであることで、現場で溶接などの火気が使用できない場合に使用することができます。ねじ込みフランジの選定は、流体の種類・圧力・温度・流量などを基準として、材質・耐圧・サイズ等を選択します。
ねじ込みフランジの原理
図2. ねじ込みフランジの原理
ねじ込みフランジの原理は、通常の配管フランジと全く同じで、接続するフランジ面同士を密着させることで密閉しています。
使用されるねじの規格は、下記になります。
- JIS B0203 管用テーパねじ
- ASME B1.20.1 Pipe Threads, General Purpose, Inch
ねじ込みフランジは、使用する流体の圧力や温度に限界があるため、万が一漏洩が発生した場合でも危険ではないときに使用します。配管をねじ込み取り付けは、シールテープなどを配管側のオスねじ部に巻き付けることで、取り付け部のシール性を向上させられます。
ねじ込みフランジは、通常の配管フランジと同様に、フランジ締結用のボルト・ナットは均等な締め付けが必要です。締め付けが不均等の場合は、漏洩することがあります。そのため、ボルト・ナットを並びの順番に締め付けるのではなく、対角に締め付けていく方法が一般的です。
また、ガスケット材質やボルト・ナットの規定トルク値で締め付けることが重要で、必要な締め付けトルク値まで対角の順番に、徐々に締め付けトルクを強めて締め付けていきます。高温流体に使用する場合は、実際に高温流体を流した後に、熱膨張によりねじ部の締め付けが緩むことがありますが、その場合はボルト・ナットを増し締めが必要です。
ねじ込みフランジの種類
図3. JIS B2220/B2239 ねじ込みフランジの例
1. 規格による分類
フランジの規格は、JIS、JPI、ASME/ANSI等の各種規格があり、代表的な例として下記があります。
- JIS B2220 鋼製管フランジ
- JIS B2239 鋳鉄製フランジ
- JPI-7S-15-2011 石油工業用フランジ
- ASME/ANSI B16.5 Pipe Flange and Flanged Fittings
「JIS B2220 鋼製管フランジ」では、呼び圧力は5K~63Kまでありますが、ねじ込みフランジが適用されているのは、呼び圧力5K、10K、16K、20Kになります。「JPI-7S-15-2011 石油工業用フランジ」と「ASME/ANSI B16.5 Pipe Flange and Flanged Fittings」では、呼び圧力 クラス150、300、600、900、1500、2500に適用されています。
なお、JIS規格のフランジ仕様の表記例は、下記の通りです。
- JIS B 2220 TR FF 10K 80A SCS 13A
- 鋼製管フランジ,ねじ込み式フランジ,全面座,10K,80A,SCS 13A
2. 材質による分類
JIS規格における代表的なフランジの材質下記の通りです。
- 圧延材:JIS G3101 SS400, G4051 S20C/S25C
ASTM A515 70, A516 70
- 鍛造材:JIS G3201 SF390A/SF40A, G3202 SFVC1
ASTM A105, A350 LF2
- 鋳造材:JIS G5101 SC410/SC480, G5151 SCPH1
ASTM A216 WCB
低合金鋼
- 延材:ASTM A201 A/B, A387 11 CL2
- 鍛造材:JIS G3202 SFVC2A, G3203 SFVAF1/SFVAF11A
ASTM A182 F1/F11 CL2/F12 CL2
- 鋳造材:JIS G5151 SCPH2/SCPH11/SCPH21
ASTM A217 WC1/WC6、A352 LC1
- 圧延材:JIS G4304/4305 SUS304/SUS304L/SUS316/SUS316L
ASTM A240 304/304H/304L/316/316H/316L/317
- 鍛造材:JIS G3214 SUSF304/SUSF304L/SUSF316/SUSF316L
ASTM A182 304/304H/304L/316/316H/316L
- 鋳造材:JIS G5121 SCS13A/SCS14A/SCS16A/SCS19A
ASTM A351 CF3/CF3M/CF8/CF8M/CG8M
フランジは2枚/1組で使用し、必ず2枚とも同じ材質を使用します。フランジの材質の選定は、各規格に示されています。JIS規格では、配管内を流れる使用流体の「最高使用圧力」と「流体の温度」により、「呼び圧力」と「材料グループ番号」が選択されます。
材料グループ番号に区分けされた複数の規格材料から、フランジ製造方法、使用環境やコストなどにより材質を選定することが大切です。