ステンレス鋼管とは
ステンレス鋼管とは、ステンレス鋼を材料とする配管のことです。
ステンレス鋼の中でもSUS304のようなオーステナイト系のステンレスは、含有されるクロムにより表面が不導体膜で保護されているので、錆が発生しません。そのため、錆が問題になるような配管に使用されます。高温・低温に強いのもステンレス配管の特徴です。
また、内面を光輝焼鈍 (無酸化焼鈍) や電解研磨により仕上げたものは、高純度な製品が必要な半導体工場や食品工場でも使用可能です。
ステンレス鋼管の使用用途
ステンレス鋼管は工場やプラントで多く使用されます。具体的な使用用途は以下の通りです。
- 高温反応を有する化学プラント
- 超低温の液体を搬送する産業ガスプラント
- 異物やバクテリアの発生が厳禁な食品・医薬品プラント
- 高純度な製品が必要とされる半導体工場
- 硫酸プラントや苛性ソーダプラント
- 石炭火力発電プラント
- 液体酸素・液体窒素の移送配管
錆が発生すると困る配管に幅広く使われており、純水や蒸気配管に使用されることもあります。
ステンレス鋼管の原理
ステンレス鋼管でもオーステナイト系ステンレス製の配管は、クロムによる不導体被膜によって錆が発生しません。ただし、溶接時の熱による鋭敏化という現象により耐食性が低下することがあります。
特に、溶接部近辺ではクロムが炭化クロムとなり、不導体被膜を形成するのに十分なクロムが無くなることがあります。この現象を避けるために、溶接時の熱管理が必要です。
また、内部を光輝焼鈍 (無酸化焼鈍) や電解研磨に仕上げたステンレス鋼管は、見た目もきれいでコンタミの原因となる残存部がありません。そのため、食品業界や半導体工場などで多用されます。ステンレス配管は溶接方法を誤ると、液だまりの発生や溶接部の凸凹などが発生します。そのため、ステンレス鋼管の能力を完全に発揮するには正確な施工が必要です。
ステンレス鋼管のその他情報
1. 配管用ステンレス鋼管と一般配管用ステンレス鋼管の違い
配管用ステンレス鋼管 (JIS G 3459:2016) は、耐食用や低温用などの配管に用いるステンレス鋼管です。外径の範囲は、10.5mm〜660.4mmである場合が多いです。
一方で、一般配管用ステンレス鋼管 (JIS G 3448:2016) は、給水用や給湯用水に用いるステンレス鋼管です。従来のステンレス鋼管に比べて薄肉であり、SUS304、SUS315J1、SUS315J2、SUS316の4種類に分類されます。外径は9.52mm〜318.5mmです。
2. 水道とステンレス鋼管
一般配管用ステンレス鋼管 (JIS G 3448:2016) に類似した規格で、水道用ステンレス鋼管(WWA G 115:2012) があります。水道用ステンレス鋼管 (JWWA G 115:2012) は、日本水道協会規格の定めた規格で、最高使用圧力1.0MPa以下の水道に使用します。
肉厚は一般配管用ステンレス鋼管と同じであり、SUS304とSUS316の2種類で規定しているのが特徴です。外径は15.88mm〜48.60mmの管があります。
3. ステンレス鋼管の継手
ステンレス鋼管の継手とは、ステンレス鋼管同士をつなぎ合わせるための部品です。継手を使用することにより、ステンレス鋼管の方向を変えたり外径のサイズを変えたりすることができます。
継手の代表的な種類は以下があります。
- エルボ
配管の方向を45°, 90°, 180°に変える - チーズ
配管の合流や分岐をさせる - レジューサー
外径の異なる配管をつなぎ合わせる - ブッシング
径の異なる配管の外ネジと内ネジを接続する - ニップル
配管の内ネジ同士を接続する - ソケット
配管の外ネジ同士を接続する - フランジ
配管と配管を接続する
つなぎ方は主に、溶接式とネジ込み式の2種類です。溶接式には突合せ溶接式管継手と差込み溶接式管継手があり、ネジ込み式にはネジ込み式管継手があります。また、ネジ込み式管継手は、溶接で固定しないので補修メンテナンスがしやすい点が魅力です。
参考文献
https://www.mory.co.jp/product/stainless/circle/02.html
https://jis.jts-tokyo.com/stainless-pipes-standards/