プレス加工とは
プレス加工とは、プレス機を使って柔らかい金属などを変形させる加工のことです。
素材に型を押し付け、プレス機で強い圧力をかけることで自分の思い描く形に変形させます。押し付ける型は「金型」と呼ばれ、材質となるプレハードン鋼のような合金鋼やステンレス鋼を切削・旋盤加工して使用します。
プレス加工は強い圧力をかけて一度のプレスで一気に金属を変形させ成型することが特徴となっており、加工時間が非常に短いことから一度にたくさんの数を短時間で大量生産できることが最大のメリットですが、早い加工スピードに耐えるため単純な形しか成型することができない点がデメリットです。
また、プレス機は初期投資が必要なため、長期にわたって製品を量産する必要がある場合に推奨されます。
プレス加工の使用用途
プレス加工は1つの部品を大量生産する場合に使われます。
簡単で量産化しやすい加工法であることから身近な金属製品の成型に使用されることが多いです。 自動車や家電のフレーム部分は金属でできているものも多く、精度高く同型に加工できるため部品のほとんどはプレス加工されています。
1つの金型を製作するためには、加工時の寸法精度を上げる微調整等も含めて一般的に3〜6ヶ月の期間が必要になります。単純な曲げ加工だけではなく、自動車の外板のような複雑な折り曲げや湾曲面を精度良く成型するためには、複数の金型を使って何度も1枚の板をプレスする必要があります。
プレス加工は金型を準備するのに時間とコストが掛かるため、少量しか使わない部品には不向きです。
プレス加工の原理
プレス加工の原理は、プレス機で高い圧力をかけながら金型を押し当てることで、成型したい被加工金属の塑性変形を起こさせることです。
金属は荷重をかけると元に戻ろうとする力が発生します。これを弾性変形と呼びますが、ある一定以上の荷重を加えると元に戻れなくなり完全に変形します。これを塑性変形と呼び、プレス機で一気に塑性変形を起こさせることで短時間で精度良く大量に生産することができます。
プレス加工の種類
プレス加工には、大きく分けて3つの種類があります。
この3つの加工を組み合わせることで、1つの被加工金属に対して連続で加工を行うことがあります。
1. せん断加工
図1. せん断加工
せん断加工とは、金属の加工材の上下に2枚の刃を用意し一気にプレスすることにより目的のサイズや形に切断する加工法です。せん断加工を応用した加工法として、クッキーの抜型のように目的の金型をパンチすることで平たい板状の加工剤からの目的の形に切り出す「抜き加工」と呼ばれる加工法もあります。
2. 曲げ加工
図2. 曲げ加工
曲げ加工とは、加工材に対しV字やL字のような曲げ型をプレス機で押し付けることで金属を曲げる加工法です。金属は硬度が高いものが多く、強い圧力をかけなければ曲がらないものが多いため、一度に強い圧力をかけられるプレス機で曲げることが重要です。
プレス機の使用によって曲げの角度まで精密に設定することができるのが特徴ですが、加工後に金型から製品が抜けなくなってしまう「アンダーカット」が発生する場合があるため、設定できる曲げの角度には限界があります。
3. 絞り加工
図3. 絞り加工
絞り加工とは、プレス機の受け側に目的の形の金型の凹部、押し出し側に凸部を用意し、プレス機にかけることによって金属の平板を容器型に変形させる加工法です。
凹凸を合わせて目的の形にするため、直角の曲げには対応できませんが、Rがかかった立体形状を成型できます。曲げ加工に比べ、金型へ押し付けて成型を行う関係で外周をしっかり押さえつけておく必要があるため、材料が一回り余分に大きく必要になり部材費が高くなる傾向にあります。
これらの加工法は組み合わせることでより複雑な形状の作成が可能になります。
プレス加工のその他情報
プレス加工に用いられる機械
1. 動力源別のプレス機の種類
- 機械プレス機
モーターを回してスライドを上下運動させてプレスする機械です。加工するスピードが速いので大量生産をする工場ではほとんどが機械プレス機を使用しています。 - 油圧プレス機
モーターによりポンプでシリンダ内の油に圧力をかけることでピストンを動かし、スライドを上下運動させてプレスする機械です。幅広い加工ができますが、加工するスピードが遅いので大量生産には向いていません。 - ハンドプレス機
ハンドルやレバーを手動で動かしてプレスする機械です。人力で動かすプレス機はハンドプレス機の他に足で動かすフットプレス機があります。