電解加工

電解加工とは

電解加工 (英: electrochemical machining) とは、電解液中で加工物に電流を流し、化学反応により加工する方法です。

ECMとも呼ばれます。電極を負極 (-極) 、加工物を正極 (+極) としてその間を電流を流すと、正極側の加工物金属が金属イオンになり、電解液中に溶け出します。

また、溶出した金属イオンは電解液中で別の生成物 (スラッジ等) を作り出します。負極では水素ガスが発生します。この一連の電気化学反応を利用し、工具の電極を加工物の表面に非常に近づけながら加工すると、電極形状を加工物側に転写することが可能です。

機械加工が困難な航空エンジンのタービン羽根などや、自動車エンジン部品のようなバリを嫌う部品などの加工に使われます。

電解加工の使用用途

1. 通常の電解加工 (ECM) 

  • 航空機エンジンの部品 (タービン羽根等の複雑な形状部品)
  • 各種自動車用エンジン部品
  • 圧力がかかる流体軸受け部品

2. パルス電源を使用した精密電解加工 (PECM) 

  • 航空機用部品 (ステンレス、ニッケル主体の超合金、チタン合金) 
  • 医療用部品
  • 造幣局向け金型加工
  • 自動車エンジン用部品 (高炭素クロム鋼)
  • ディーゼルポンプ用部品
  • 半導体、MEMUSの製造

電解加工の原理

電解加工は、その加工精度により2種類の方法があります。

1. 通常の電解加工 (ECM) 

電解液中にワーク金属を正極、工具である電極を負極とし、その電極間隔を非常に近い距離 (通常0.02~0.7mm) に保って電解液中で加工する方法です。 その加工速度はきわめて早く、数10秒で完了します。

加工可能な金属は、従来では加工が難しい高硬度材も可能です。 また、今まで切削加工が難しい複雑な形状や穴加工を、高精度で加工できます。

2. パルス電源を使用した精密電解加工 (PECM) 

工具電極のフラッシング動作とパルス電源を組み合わせた精密電解加工 (PECM) は、更なる高精度加工が実用化されています。

この方法は、電極をワークに近づける時に電極またはワークを高速で上下振動させ、スラッジ等の生成物を高速で排出して、常に新しい電解液を供給する方式です。この際、パルス電源によりワークー電極間の距離は数10μ前後で精密コントロールされます。

電解加工の特徴

1. 複雑形状の加工が可能

電解加工は、他の機械加工では困難な複雑輪郭や空洞の加工ができます。

2. 加工速度が速い

難切削材では他の機械加工に比べ、非常に早く加工できます。

3. 非接触加工

非接触で加工するので、加工物に機械応力や熱応力がかからないメリットがあります。

4. 鏡面仕上げ

電解加工は、化学反応による加工なので、表面仕上げを鏡面にすることが可能です。

5. 硬脆材料の加工が可能

機械加工では加工の困難な硬脆材料の加工ができます。硬脆材料は超硬合金・セラミックス・石英ガラス、単結晶シリコン、ジルコニアなど硬く脆い材料です。

電解加工のその他情報

1. 電解加工のデメリット

電解加工に使用する電解液は、均一性を保つのが困難なので、加工精度が不安定なのがデメリットです。また、加工物と電極との距離の検出が難しく、さらに機器に耐食性の処置が必要になります。また、生成物に毒性がある場合もあります。

2. 電解加工の電解液

電解液は、電気を流す役目がある他、加工物の冷却を行います。また、液量が少ないと、仕上がりにばらつきが出る可能性があり、逆に多すぎると、変色の原因になります。適切な液量を保って加工を行う必要があります。

電解液には、「中性塩溶液」「酸溶液」「アルカリ溶液」の3種類が使われます。

中性塩溶液
最も多く使われる電解液です。アルカリ溶液に比べて電導度は低いが、腐食度が低く、大部分の金属材料に使用されます。一般的に使用されるのは、塩化ナトリウム電解液です。この電解液は液中濃度を均一にしにくいため、加工精度が良くないことが発生します。

塩素酸ナトリウムや硝酸ナトリウムを電解液に使用する場合もあります。しかし、加工精度は向上しますが、電流効率が低下するため、消費電力が増加します。

酸溶液
酸溶液は、取り扱いに注意が必要であり、特殊な場合に使用される電解液です。電導度は比較的高いですが、腐食性が強く、長時間使用すると電導度が減少します。

アルカリ溶液
アルカリ溶液は、超硬合金の加工用の電解液です。タングステンやモリブデンなどの加工に使用されます。超硬合金に対しては、中性塩溶液に比べて質の良い仕上がりとなります。

一般的な金属には、加工時に不溶解の生成物が発生して、加工物の溶出を妨げるため、使用されません。

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