VCO

VCOとは

VCO

VCOとは、入力電圧によって発振周波数が変化する発振器のことです。

「Voltage Controlled Oscillator」の略で、日本語では圧制御型発振器と呼びます。VCOの入力電圧に対する出力できる周波数範囲は様々で、製品によってその周波数範囲が異なります。

一般的にVCOは、PLL (Phase Locked Loop) に用いられます。PLLは位相同期回路とも呼ばれ、入力信号と出力信号の位相を同期させる回路で、周波数を安定化させることが可能です。

VCOの使用用途

VCOは、様々な電子機器アプリケーションで使われる周波数制御の目的で用いられています。具体的な使用用途は、メディアプレイヤーやデジタルカメラ、オーディオ類の民生用機器、また通信システムなどの携帯電話、無線LAN、ラジオ、そしてTVチューナーやGPS、Bluetoothなどです。

特に高い周波数を扱う電子機器内に使用する場合は、主にVCOをPLLとして使用し、周波数を安定化させています。PLLシンセサイザとしての活用は、無線通信用の高周波を合成する発振回路としてよく用いられます。

VCOの原理

VCOの原理は、電波を生成する発振回路の発振周波数を電圧で制御するために、発振回路の一部に共振周波数を電圧で可変可能とする回路を有し、その共振周波数の電力を維持し増幅する増幅回路によって、所望の周波数を生成する動作にあります。

VCOの共振周波数生成の手法は、大きく分けてリングVCO、LC VCO、VCXOの3つがあります。

1. リングVCO

リングVCOは、インバータを複数段もちリング状につなぐことで発振回路を構成するVCOです。インバータの段数とゲートの遅延量を利用して発振周波数を制御することが可能であり、その段数や遅延量は外部からのバイアス電流で制御可能です。

周波数可変範囲に優れ、広くPLLに用いられますが、電源ノイズの影響を受けやすく、一般に周波数安定度は高くありません。

2. LC VCO

LC VCOは、LC発振器とバラクタを用いて構成するVCOです。ここでのバラクタとは容量可変ダイオードのことであり、印加電圧によってPN接合の接合容量を可変させることが可能なダイオードです。容量を可変することで、LCの共振に起因する発振周波数を変化させ、VCOの発振周波数を電圧で可変させています。

3. VCXO

VCXOは、水晶振動子 (Xtal) を用いたVCOです。水晶振動子は高いQ値 (Quality factor) を持つため、周波数安定度が高くなります。その代わりに、可変できる出力周波数の範囲が狭まくなります。

また、水晶振動子ではなくセラミックの振動子SAWの振動子を用いてもVCOを作ることが可能です。水晶振動子に比べて、周波数の可変範囲を大きくできますが、安定度では水晶振動子の方が優れています。

VCOのその他情報

1. VCOの実装形態

VCOは、その周波数とアプリケーションによって実装形態はさまざまです。発振周波数を決定付ける因子にはLC値がありますが、低い周波数を発振させる時に比較的大きなインダクタや容量が必要になるため、すべてをIC化するには小型化や低コスト化の観点にそぐわない場合があります。状況によってはチップ部品や水晶、MEMS、セラミック基板などの振動子を用いるケースも多いです。その場合はVCOモジュールとしての実装形態になります。

一方で、RF高周波やミリ波などの無線通信対応には、PLLとの集積やミキサやデジタルロジックなど含めRFICの一部分として用いられるケースがあります。

2. VCOの位相雑音

VCOの位相雑音の低減は、無線通信のアプリケーションにおいて、PLLのジッタや変調精度 (EVM) などの諸特性とも密接に関連するため、非常に重要な特性です。位相雑音の低減が高品位な通信実現には不可欠であり、メーカー各社はこのノイズ低減に向けてしのぎを削っています。

発振周波数安定性にも関係しますが、VCOの共振回路のQ値を上げることはVCOの位相雑音低減に非常に有効で、良好なPLL特性にも不可欠です。一方で、高いQ値の実現には、材料物性の観点からICの1チップ化が困難である場合があり、また高いQ値は周波数可変範囲に影響を与えます。

昨今では、アナログ・デジタル回路の進展により、ノイズ低減と周波数可変範囲の拡大の両立を目指すべく、フィルタ回路内蔵によるノイズ低減や逓倍回路との併用による周波数可変範囲の拡大を図ったVCO関連製品も登場しています。

参考文献
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/backnumber/2004/05/p098-099.pdf

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