X線管とは
X線管とは、X線を発生させるX線発生装置の一種です。
X線管内部で、陰極から陽極へ高速で移動する熱電子が、陽極の金属原子核に引き寄せられて進行方向を変えるときにX線を発生します。X線管には種類があり、管の形態によって、管内が常時真空に保たれた真空管タイプの密閉管と管外部に真空ポンプを設置して高真空状態にする開放管の2種類です。
密閉管はさらに、陽極が回転構造になっている回転陽極管と、回転構造になっていない固定陽極管に分類されます。固定陽極管は陽極が回転するため熱の分散が可能であり、X線管内を流れる電流を増大させることが可能です。
また、X線管には焦点寸法によって、マイクロフォーカス型とミニフォーカス (またはミリフォーカス) 型があります。それぞれ焦点寸法がミクロンオーダーとミリオーダーのX線管です。
X線管の使用用途
X線管はさまざまな分野で、X線発生装置として使用されています。X線は紫外線より波長が短い電磁波で、エネルギーが大きいことから、物質を通り抜けることができる透過作用があります。
この透過作用を利用した使用用途は、以下の通りです。
X線管の原理
X線管は、外囲器と陰極 (フィラメント) と陽極 (ターゲット) で構成されます。陰極フィラメントに電流を流し加熱しておいてから、陰極と陽極の間に高電圧をかけると、フィラメントから熱電子が放出され、高速で陽極ターゲットに向かいます。
1. 制動X線
熱電子は、陽極の材料であるタングステンなどの原子核に引き寄せられて急激に進行方向を変え、エネルギーを放出します。このとき、エネルギーの99%は熱エネルギーに変換されますが、残りの1%がX線となって放出されます。このX線は制動X線と呼ばれ、連続したスペクトルを持つのが特徴です。
熱電子が原子核に対してどこを通るかは一意に決まらず、どこを通るかでX線強度が変わります。そのため、制動X線は連続スペクトルを持ちます。
2. 特性X線
熱電子の中には、まれにターゲット原子の電子に衝突するものもあります。衝突された電子は熱電子からエネルギーを得てはじき飛ばされ、外側の電子軌道に遷移しますが、不安定であるためすぐに元の軌道に戻ります。
このとき、電子軌道のエネルギー状態の差分がX線として放出されます。このX線は特性X線と呼ばれ、線スペクトルとして現れます。X線管で発生するX線は、ほとんどが制動X線です。X線管の外囲器にはX線の吸収率が低いベリリウムなどの窓があり、X線はその窓から取り出されます。
X線管のその他情報
1. 管電圧と管電流
X線管で発生するX線の強度やエネルギーは管電圧と管電流に依存します。
管電圧
X線管の陽極と陰極間に印可する電圧です。管電圧を高くすると短波長のX線が発生します。管電圧は強度とエネルギーに影響するパラメータです。
管電流
X線管内部を流れる電流です。陰極で発生した熱電子が陽極に衝突することで、電流となります。回転陽極管では陽極が回転するため熱の分散が可能であり、管電流を増大させることができます。
管電流とX線全強度は比例関係にあります。一方、管電流を変化させてもX線のエネルギーは変化しません。
2. X線の透過性質
X線は波長が非常に短い電磁波であることから物質を透過する性質を持ちます。物質によって透過率は異なり、透過時にX線は減衰します。
透過時に電子と相互作用を起こさずに直進したX線を透過X線と呼び、透過X線の線量の大小がレントゲン写真における白黒の濃淡を決定します。X線の透過能力はX線が持つエネルギーが高いほど大きくなります。
参考文献
http://www.020329.com/x-ray/bougo/contents/chapter3/3-2-ref01.html
http://www.trc-center.imr.tohoku.ac.jp/mono59_2.pdf
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28kiso-01-03-04.html