非常停止スイッチ

非常停止スイッチとは

非常停止スイッチ

非常停止スイッチとは、非常時に設備を停止できるスイッチのことです。

産業用機械は、人の骨が耐えられないほど高いトルクや圧力で使用されるケースは珍しくありません。強い力を持つ機械が人間と接触した場合、重大な労働災害や人身事故が起こる危険性があります。非常停止スイッチは装置を強制的に止めることで、人身事故を未然に防げるようになります。

また、装置が暴走したときに、壊れるのを防ぐことも役割の1つです。非常停止スイッチは、人命を守る重要なスイッチであるため、誤作動が許されません。スイッチ本体および非常停止回路は、安全を最優先に設計されています。

非常停止スイッチの使用用途

非常停止スイッチは、誤作動や誤操作によって人間に危害が及びうる機械の多くに設置されています。特に、コンベアやプレス機や溶接ロボットなど、巻き込まれや挟まれによって重大な災害を引き起こす可能性がある機械です。

具体的には、ベルトコンベア等の中腹に設置される使用例が挙げられます。コンベアの巻き込まれ事故は過去に数えきれないほどあるため、労働安全衛生法施行規則にて、設置が義務付けられています。また、ベルトコンベアは長距離を輸送する装置として使う場合、広範囲にわたって非常停止スイッチを設けなければなりません。

押しボタンスイッチでは手が届かない可能性もあるため、引綱スイッチを非常停止スイッチとして使用するのが一般的です。引綱スイッチであれば、コンベアのどの部分でも非常停止することが可能です。そのほか、装置点検時に非常停止スイッチが利用されることもあります。非常停止スイッチを押した状態で点検を行えば、誤って装置が起動することがなくなるためです。

非常停止スイッチの原理

1. 押しボタン式非常停止スイッチ

非常停止スイッチ_プッシュロック式

図1. プッシュロック・ターンリセット

押しボタン式では、他の押しボタンより目立つ必要があるため塗装色は赤となる場合がほとんどです。また、押しボタンから手を離すと解除されてしまうと危険なため、押すとロック状態が保持されるプッシュロック式が採用されます。

プッシュロック式の場合、非常停止状態を解除する際はボタンを時計回りに回すパターンがほとんどです。押しボタンスイッチの裏は、電気回路を制御するための接点が付いています。押しボタンを押すことで回路を遮断するB接点を使うことが一般的です。

非常停止スイッチ_A接点B接点

図2. A接点・B接点

A接点 (押すことで回路が接点が閉じる。ノーマルオープン) を用いると、仮に接点間にゴミが入った場合、押しボタンを押しても非常停止しない可能性があります。そのような事態を避けるため、非常停止スイッチにおいてはB接点を用いて回路を設計する必要があります。

また、非常停止スイッチに誤って体が当たり、装置が停止すると生産現場の仕事に支障が出ます。そこで、体が当たった程度では停止しないように周囲をガードリングで覆う構造を取ることが多くあります。

2. 引綱式非常停止スイッチ

コンベアなどで使用される引綱式非常停止スイッチは、ワイヤーをコンベア周辺に張り巡らせた構造を取ります。ワイヤーを引くことでスイッチ部分が倒れ、機械を停止させます。押しボタン式と同様に、一度作動すると復帰させるまでロックされる構造が採用されています。

非常停止スイッチのその他情報

1. スイッチの配置場所

非常停止スイッチを設置する場合は、設置場所もよく検討する必要があります。緊急の事態が生じた際にすぐに非常停止スイッチにアクセスできるように、作業者にとって押しやすい場所に設置することが重要です。大きな設備の場合は、スイッチを複数個配置するケースもあります。

2. ロックアウト機構

非常停止スイッチ_ロックアウト機構

図3. ロックアウト機構

過去には、作業者が非常停止スイッチを押して装置内に進入し装置点検を行っていたところ、別の作業者が非常停止を解除し装置を起動させ、装置内の作業者が装置に巻き込まれ亡くなってしまったという痛ましい災害が起きています。

このような災害を避けるため、ロックアウト機構を搭載した非常停止スイッチも開発されています。非常停止スイッチに南京錠をかけられるようになっており、非常停止を行った人間しか非常停止を解除できないようになっています。

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