ボルテックスクーラー

ボルテックスクーラーとは

ボルテックスクーラー (英: vortex tube cooler) とは、圧縮空気を使用した小型クーラーのことです。

ボルテックスチューブと呼ばれる内部部品のボルテックス効果で、圧縮空気を利用して−60℃もの冷気を作ることができます。冷風の温度は、熱風側と冷風側との比率によって決定されます。クーラー内の熱交換により生じた熱気は自動で排出されます。

駆動部分がないため故障の心配がなく、メンテナンスが不要です。安定して冷気をつくるため、ドライクリーンエアの使用が推奨されます。ドライクリーンエアとは、空気中の不純物が除去された清浄でかつ乾燥した空気のことです。

ボルテックスクーラーの使用用途

ボルテックスクーラーは、生産の現場などで冷却用途として使われています。具体的には、高温になったハンダや刃物などの冷却、プラスチック加工時の急速冷却やポリエチレンフィルムの加工の冷却などです。

その他、電子機器や制御ボックスの冷却、造船所・鉄鋼・ガラス製造用の冷却作業服など様々な分野で幅広く使用されます。

ボルテックスクーラーの原理

ボルテックスクーラーは、ボルテックスチューブを使用して、冷気と暖気を分離して取り出す装置です。冷気側の空気を利用します。

暖気吐出口にあるバルブの開度により、暖気側の風量を調整します。バルブを開けて暖気量を増加させると暖気温度は低下し、冷気の流量が減少し、ある冷気量までは温度が低下します。

ボルテックスクーラーの特徴

1. 簡易な冷却作用

ボルテックスクーラーは、空気源があるところで、簡易な装置を使って容易に冷気が得られます。可動部がなく、冷媒などの化学物質も不要で、電源のないところでも、直ぐ冷風が出ます。

2. 低設備コスト

ボルテックスクーラーは、ノズル、直管、冷気口、熱気口のバルブなどで構成され、通常の冷凍機に比べ非常に廉価です。

3. 特殊な用途向け

ボルテックスクーラーは、効率をそれほど問題にしないスポット冷却などに適しています。冷却効果の1例は、供給空気圧力0.7MPaのとき、最大温度差 (入口空気温度と冷気温度の差) は75℃に達します。

鋳造・ガラス製造、溶接などの高温の作業現場で冷却作業服の用途があります。加工工場では、切削工具の冷却、金属や樹脂など粘度が高い素材の加工中の冷却などに適しています。また、電子計測器や電源制御ボックスの局所冷却の用途もあります。

ボルテックスクーラーのその他情報

1. ボルテックスチューブとは

ボルテックスチューブとは、直管の内径に円周方向に吹き出すノズルを設け、圧縮空気を吹き出し、冷風と熱風を分離する装置です。直管の一方には冷気吐出口のオリフィスを設け、直管の一定の長さの端にバルブを設けます。バルブ出口が熱気吐出口です。

供給された圧縮空気を円周方向に高速で吹き出して、流体の速度を上げると、同一流線上では圧力が低下するという流体の特性を利用します。空気の全量が旋回室に続く直管に入り、遠心力で管壁近くに圧縮されます。この空気流の圧力はノズルの噴出圧力より少し低いですが、大気圧より高い状態です。

直管の端にあるバルブを開けて、空気の一部を逃がして、暖気を排出します。残りの空気は直管の中心へ押し戻され、旋回して旋回室へ戻り、冷気吐出口から外部へ出ます。旋回の方向は、外側の旋回流と同じ方向です。2つの旋回流は、同じ角速度で回転し、外側の旋回流は、暖気吐出口へ向かって流れ、内側の旋回流は冷気吐出口へ流れます。

2つの流れの境界に強烈な乱流が生じることで、2つの流れを閉じ込めて各々単一の塊にします。旋回流のエネルギーは、外側の方が内側に比べ何倍もあり、エネルギーが熱となって内側の空気流から外側に運ばれることにより、温度の異なる空気の排出を可能にしています。

2. ボルテックスクーラーの効率

ボルテックスクーラーの効率は、良いとは言えません。同じような働きをするものに、膨張エンジンがあります。ジェット機の空調に使用される膨張タービンと比較すると、膨張タービンの効率が0.6以上ありますが、ボルテックスクーラーの効率0.5程度です。

したがって、電気設備があれば、冷媒を使用する冷凍サイクルが効率面で優れており、ボルテックスクーラーは冷房・冷凍装置としては難点があります。ボルテックスクーラーは、スポット冷却に使われます。

参考文献
https://www.kogi.co.jp/img/bumon/kikai/transe/mokuji/katarogu.pdf
https://www.kogi.co.jp/bumon_kikai_13.html
https://www.kogi.co.jp/img/bumon/kikai/transe/mokuji/VC_PGC.pdf

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