撹拌翼

撹拌翼とは

撹拌翼とは、モーターからの回転エネルギーを槽内へ伝達する役割を持ち、撹拌機の中で最も重要な構成要素です。

主に回転エネルギーは、槽内全体の循環流を生み出す吐出作用と局所的な剪断力をかける剪断作用に使用されます。撹拌翼は、吐出作用と剪断作用のどちらを優先して求めるかによって、形状を最適化できます。

モーターの一定動力内において発揮できる最大の能力を見極め、目的に合った撹拌翼を選択可能です。代表的な撹拌翼として、プロペラ翼やタービン翼、アンカー翼、パドル翼、リボン翼が挙げられます。

撹拌翼の使用用途

撹拌翼は、撹拌機内の物質を混合させる際に使用されています。比較的大きな工場では、撹拌槽の容量は大きく、それに伴い撹拌に要する時間も多くなります。一方で、小型の撹拌機は実験室レベルから工場現場など容易に使用できるもので、短時間での撹拌が可能です。

小型の撹拌機で検討された撹拌翼の形状を、大型の撹拌機でも使用できるようにスケールアップするのが一般的です。しかし、物質の粘度域により、単に撹拌翼をスケールアップするだけでは物質を混合できないケースもあります。撹拌翼のスケールアップには、検証を十分に重ねていかなければなりません。

撹拌翼の原理

1. 撹拌翼により生じる物質の状態

槽内を混合させるには、拡散と対流が必要です。拡散は分子運動によって自然に、細部まで均一に混合していく現象を表します。一方、対流は異なる物質同士を槽内で引き伸ばしたり分割したりして、広い空間として捉えた場合に、その空間全体に物質が分散する現象を表します。

2. 撹拌翼がもたらす撹拌現象

2種類の液体が、槽内に2層で存在すると仮定します。モーターの力により撹拌翼が回ると、まず強制的に液体を細かく分散させます。ドレッシングを使用する前に振る時と同様のイメージです。

撹拌翼の形状により、撹拌翼に接触した液が上下左右に流れを作ることで、撹拌翼特有の挙動へと変化します。例えば、パドル翼は傾斜が付いていて、上下方向にもより流れを形成できる形状です。また、タービン翼は円盤に取り付けたブレードが槽内で高速回転し、高い剪断力を生み出しています。

3. 撹拌翼の動力

モーターが回転することで、軸に動力が伝わります。その際に減速機を付けていれば、減速機に応じた減速とトルク上昇が可能です。また、軸封装置により、回転を妨げずに槽内を密閉できます。軸封装置は一般的に、グランドパッキンやメカニカルシールが用いられています。

撹拌翼の種類

物質の低粘度域で用いられる撹拌翼は、プロペラ翼、タービン翼、パドル翼です。撹拌翼の枚数や取り付ける角度によって、物質の混合状態を変化させられます。

一方、物質の高粘度域で用いられる撹拌翼は、アンカー翼とリボン翼です。高粘度液の均一化や熱交換に用いられます。

1. 低粘度域で用いられる撹拌翼

プロペラ翼
一般的な撹拌翼で、ヘリコプターのプロペラに類似した形状です。槽内で軸方向に液体の流れを形成できるため、エネルギー的に効率よく撹拌できます。

タービン翼
円盤にブレードを付与した形状で、剪断力が高く、液滴の微細化や気液分散に向いています。消費動力が大きい点がデメリットですが、広範囲の粘度域にて使用可能です。

パドル翼
船のオールに類似した形状です。構造がシンプルであるため、基本的な撹拌データを取得する材料として用いられています。大型の撹拌機にて低速で使用されるケースが多く、バッフルを付属させて強い乱流を引き起こせるため、効率よく液体を撹拌できます。

2. 高粘度域で用いられる撹拌翼

アンカー翼
船の錨のような形状です。撹拌槽の壁面付近に滞留する物質を混合させられますが、軸方向への流れはできにくい点がデメリットとして挙げられます。

リボン翼
高粘度域における代表的な撹拌翼です。アンカー翼と同様の特徴を特徴を持ちますが、構造がより複雑化しています。撹拌翼を傾斜させ、その分軸方向への流れを形成できます。

参考文献
https://www.satake.co.jp/research/technical/about_mixer/
https://www.kobelco-eco.co.jp/process_equipment/agitation/general.html
https://www.mizuho-ind.co.jp/labo/about/basic_knowledge_03_13/
https://www.shi-pe.shi.co.jp/technology/mixing-lecture/basic001/index.html

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