ロールタップとは
ロールタップは、ねじを成形するための工具の一種です。ロールタップは切削刃を持たないため、ねじ山を形成する際に切りくずをほとんど出さないことが特徴です。そのため加工時に出る切りくずが作業環境や機械に影響を及ぼすことが少なく、清掃の時間やコストを削減できます。
ロールタップは塑性加工でねじ山を形成するため、切削工具としてのタップとは異なります。ロールタップは材料をプレスするように加工するため、ねじ山を作る際の加工負荷が比較的低いことが特徴で、ねじ山形状によって異なる下穴サイズが必要です。
ロールタップの使用用途
- 柔らかい材料の加工
ロールタップは柔らかい材料に適しており、アルミニウム合金などの軽合金に特に適しています。 - 切りくずの問題がある加工
ロールタップは切りくずをほとんど出さないため、切りくずによる問題がある加工に適しています。 - ねじ山の強度向上
ロールタップは塑性加工によりねじ山を形成するため、加工されたねじの強度を向上できます。 - 有効径のバラツキ抑制
ロールタップは塑性加工によりねじ山を形成するため、有効径のバラツキを抑制できます。 - 止まり穴加工
ロールタップは止まり穴加工にも使用できます。切削刃を持たないため切削力が低く、止まり穴加工に適しています。 - 通り穴加工
ロールタップは、通り穴加工にも使用できます。塑性加工によりねじ山を形成するため、比較的低い回転数で加工できます。
ロールタップの原理
ロールタップは、塑性加工によりねじ山を形成するための工具です。ロールタップは切削刃を持たないため、材料を押し込むようにしてねじ山を形成します。材料を加工するためには十分な加工圧力と摩擦力が必要です。
ロールタップはタップと材料との間に高い圧力をかけることで塑性変形を起こさせて、材料はタップの突起部に沿って変形し、ねじ山形状を形成することが、ロールタップによるねじ山形成の原理です。この際、材料がタップの突起部に押し込まれることにより加工に必要な圧力が発生します。この加工圧力により材料が塑性変形を起こし、ねじ山形状が形成されます。
ロールタップには切削刃がないため切削力が非常に低く、材料の塑性変形が生じやすいため、比較的低い回転数で加工できます。またねじ山形状が材料の塑性変形によって形成されるため、切りくずがほとんど発生しないという特徴があります。
ロールタップの特徴
長所
(切りくずが少ない)
ロールタップは塑性加工によりねじ山を形成するため切りくずがほとんど発生しません。そのため切りくずによるトラブルを防ぎながらクリーンな加工が可能です。
(ねじ山の強度向上)
ロールタップは塑性加工によりねじ山を形成するため、ねじ山の強度を向上できます。
(有効径のバラツキ抑制)
ロールタップは塑性加工によりねじ山を形成するため、有効径のバラツキを抑制できます。
(比較的低い回転数で加工可能)
ロールタップは切削刃を持たないため、切削力が低くて比較的低い回転数で加工できます。
(柔らかい材料に適している)
ロールタップは塑性加工によりねじ山を形成するため、柔らかい材料に適しています。
(止まり穴加工に適している)
ロールタップは切削刃を持たないため、切削力が低くて止まり穴加工に適しています。
(加工精度が高い)
ロールタップは切削刃を持たないため、回転中にタップと材料との位置関係がほとんど変化しません。よって加工精度が高くなります。
短所
(下穴サイズの精度が重要)
ロールタップは塑性加工によりねじ山を形成するため、下穴サイズの精度が非常に重要です。下穴サイズが正確でない場合、ねじ山形状が不良になることがあります。
(切りくずの除去が難しい)
ロールタップは切削刃を持たないため、切りくずの除去が難しいことがあります。そのため加工に使用する材料によっては、切りくずが詰まってしまって加工が停止してしまうことがあります。
(高精度な設定が必要)
ロールタップは塑性加工であるため正確な設定が必要です。加工前には適切な下穴サイズや加工条件を設定することが重要です。設定が不正確な場合、ねじ山形状が不良になることがあります。
(鉄などの硬い材料には不向き)
ロールタップは、塑性加工によりねじ山を形成するため、鉄鋼などの硬い材料には不向きです。硬い材料に対しては、切削刃を持つタップが適しています。
ロールタップのその他情報
ロールタップは柔らかい材料に適していた工具です。これはロールタップがねじ山を形成する際に塑性加工を行うためです。塑性加工は、金属を変形させるために金属を圧縮してその形状を変えることを利用する加工方法です。このため金属材料が柔らかく、変形しやすいほど、ロールタップの塑性加工が効果的に働きます。
例えばアルミニウム合金は比較的柔らかい材料の一種です。アルミニウム合金は、非常に軽量でありながら、高い強度や耐食性を持っているため航空機や自動車の部品、電子機器など、様々な産業で使用されています。アルミニウム合金はロールタップによる加工に適しており、ロールタップを使用することでより高精度なねじ山を形成できます。