サーボプレスとは
サーボプレスとは、プレス加工において加圧部の動きを数値制御を用いたサーボモータ制御で行うプレス加工です。
プレスの駆動にサーボモータを用いることによって、従来難しいとされていた加圧部の移動速度や回数などの動きを、細かく制御するスライドモーションが可能になりました。スライドの細かな制御によって、さまざまなメリットが得られます。
なお、サーボプレスに対して、油圧や空圧を利用した従来のプレス加工は機械式 (メカ式) プレスと呼ばれます。
サーボプレスの使用用途
サーブプレスはさまざまな加工に用いられます。主な加工は圧入、カシメ、歪み取り、打ち抜き、成型、熱溶着、粉末成形などです。
成型においては、自動車用のドアやボンネットなどの生産に、サーボプレスが広く用いられています。自動車用部品では強度と軽量化の両立が強く求められており、複雑な形状に成型できるためです。
サーボプレスの原理
サーボプレスでは加圧に、サーボモータを利用しているので、複雑で精密なスライド動作が実現できます。サーボモータは、自身の状態 (回転数やトルクなど) を常にモニターし、設定した値になるようにフィードバックをかけることができるモーターシステムです。
これによって、プレス機の速度を可変にしたり、正確な位置決めを行ったりと自由自在に設定吸うことができます。油圧や空圧を使った従来のプレス機では、一定の速度でしか動作しないので、ゆっくり加圧する必要がある素材を加工する際は、作業時間がかかってしまう問題がありました。
しかし、サーボモータはプレス機が材料に接触して、加圧するときだけ速度を落とし、最下点までプレスしたらもとの位置には素早く戻すというような複雑な設定も可能です。そのため、加工精度を保ちながら作業時間を大幅に短縮することができます。
また、サーボプレスはコンピューター数値制御 (CNC) 化されたプレス機です。外部装置との連携も簡単に行える上に、更に複雑な動作をプログラムすることもできます。
サーボプレスのその他情報
サーボプレスの長所
従来の機械式プレスに対するサーボプレスの長所は、大きく分けて以下の6つがあります。
1. 成形性の向上
従来ではプレス加工難しかった高張力鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム合金板に対しても、プレス加工がしやすくなります。スライドモーションを工夫することによって、しわや割れの発生を抑制することが可能になりました。
2. スプリングバックを制御できる
高張力鋼板を用いたプレス加工においては、材料の降伏点が高いために、スプリングバックが起きやすいという欠点がありました。サーボプレスであれば、追加でプレスを行うリストライク加工によって、スプリングバックを抑制できます。
3. 高精度化
機械式プレスでは、加工による発熱や環境温度によって、ダイハイトが変化してしまうという欠点がありました。ダイハイトの変化は、部品の精度に影響します。サーボプレスであれば下死点をモニターし自動的に補正することが可能です。
4. 金型寿命の向上
サーボプレスによって、金型の寿命を向上させる効果が得られます。サーボプレスなら成形時の速度を下げることも可能であり、速度低下によって金型の摩耗も低減させることが可能です。
5. 潤滑剤切れの防止
スライドモーションに振動モーションを加えると、潤滑剤切れを防止することができます。プレス時に振動動作が加わると、素材と金型の間の隙間が変化し、変化する際に潤滑剤が隙間に侵入しやすくなります。
6. 工程削減
複雑な形状などの理由によって、従来は複数のプレス工程が必要な部品の成形もサーボプレスによって工程数を減らすことが可能になります。工程の削減は必要となる設備はもちろん金型や金型のメンテナンス費用も削減できます。工程数が減らせるのも、サーボモータによる緻密なスライドモーションが可能になるからです。
参考文献
http://www.amada-f.or.jp/r_report2/ftr/2017/201701-0101.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/73/2/73_2_175/_pdf