大電流基板とは
大電流基板とは、大電流への対応を可能にした回路を搭載するプリント基板です。
ハイブリッド、EV、PHEV等自動車の電動化が進み、プリント基板にも大電流の対応の電子部品が求められるようになってきています。プリント基板の大電流化では、パターン幅を広くすることで対応することも可能です。しかし、同時に電子部品の小型化も要求されている現在では、パターン幅の拡大にも限界があります。
そこで、プリント基板の銅箔厚を厚くすることで、大電流に対応できるようになります。一般的なプリント基板の銅厚が35μmであるのに対し、2,000μmまで厚銅による回路を実現することにより、大電流への対応を可能にしたのが大電流基板です。
大電流基板の使用用途
大電流基板は、電子化が進むガソリンエンジン車はもちろん、電気自動車、ハイブリット、PHEVにも使用されています。また、ロボットなどの大電流制御回路やハイパワー電源、スイッチング、モーター回路、ブレーカやヒューズボックスなど、電気的負荷の大きい電気部品の小型化に有用です。
IGBTやパワーMOSFET、ショットキーダイオード、サイリスタなどの高温に発熱するパワーデバイス、信号機や屋外掲示板などのLED放熱対策の一部においては、熱拡散と放熱にも優れたプリント基板として活用されます。
大電流基板の原理
プリント基板のパターンに大電流を流すには、銅パターンの断面積を広くする必要があります。これは、パターン幅を太くすることと銅箔厚を厚くすることで実現しています。
1. パターン幅の変化
パターン幅を太くする場合、導体厚が薄い配線と厚い配線が混在することが容易です。流す電流量にあった銅パターンの断面積をパターン幅で調整することで、通常の信号伝送用基板と同じ感覚で設計が可能です。
2. 銅箔厚の変化
銅箔厚を厚くする場合、大電流経路でも比較的小さいパターン幅で設計することが可能です。銅箔厚と流せる電流量は比例関係にあるため、ある電流を流す経路を設計する際に銅箔厚を2倍にするとパターン幅を半分にすることができます。
一方で、配線の幅と隣り合う配線同士の間隔との比であるラインアンドスペース (L/S) が通常基板より大きくなってしまう点がデメリットです。L/Sが大きくなってしまうとパッド間隔が小さいパッドを設計できなかったり、大きな部品を持つパッドを搭載できなくなります。設計と部品選定で制約が生まれるため、注意が必要です。
大電流基板のその他情報
1. 大電流基板の作成方法
大電流基板は普通のプリント基板に比べ、非常に大きい電流を扱います。例えば、自動車用の電子機器では、おおよそ2A~100Aが必要です。パターンに流す電流量に見合った銅パターンの断面積を作成しなければなりません。
現在のプリント基板の一般的な製造方法は、エッチング法 (銅箔を溶解する方法) です。銅表面に描いたエッチングレジストのパターンを元に、銅のエッチング (溶解) を行います。
対して大電流基板は、銅箔厚が厚いため、この手法では銅箔の上面より溶解が進みます。深さ方向だけでなくパターン間もエッチングが進行するので、パターンの断面が台形です。これは断面積の精度低下に繋がります。
そのため、普通の信号用のプリント回路基板の設計と同じ手法で大電流基板を設計することは好ましくありません。厚銅配線の多層化製造技術を最適化し、プリプレグ工法と真空積層プレスで厚銅回路を実現するといったメーカー独自の工法で大電流基板を作成します。
2. 製造コスト
大電流基板は、銅箔の厚い銅張積層板を使用しています。標準材料でないため割高となり、製造コストが高くなってしまう点がデメリットです。
一般のプリント基板に比べかなりコストアップとなりますが、大電流製品を量産するユーザにとっては大きなメリットがあります。
参考文献
https://www.noise-counterplan.com/tweet/678/
https://integran.co.jp/development/current/
http://tssg.com/pwb-products-daidenryu.html
https://h-network-s.net/board/high_current/