熱板溶着

熱板溶着とは

熱板溶着は、プラスチック同士を接合する際に用いられる代表的な技術です。

熱可塑性樹脂を溶融させ圧力を加えることで、分子同士を結合させます。熱板溶着は、自動車部品、家電製品、医療機器など多岐にわたる分野で利用されています。熱板溶着は接合強度が高く、気密性・水密性に優れている点が特徴です。熱板溶着の原理は比較的シンプルです。まず、接合する2つのプラスチック部品を専用の治具にセットします。次に、2つの部品の接合面を熱板で加熱し溶融させ、熱板を退かせた後、溶融した面同士を押し付け冷却することで接合が完了します。

熱板溶着は、高い接合強度が得られるという点がメリットです。溶融したプラスチック同士が直接結合するため、非常に高い接合強度が得られます。また、優れた気密性・水密性も熱板溶着のメリットです。接合面が完全に密着するため気密性・水密性に優れています。さらに、多様なプラスチックに対応できる点も熱板溶着のメリットとして挙げられます。熱可塑性樹脂であれば、様々な種類のプラスチックを接合できます。そして、大型部品の接合に最適な点も熱板溶着のメリットです。熱板のサイズを調整することで、大型部品の接合も可能です。一方、熱板溶着は加熱時間の調整が必要な点がデメリットです。プラスチックの種類や部品の形状に合わせて、適切な加熱時間を設定する必要があります。また、溶着時にバリが発生しやすい点も熱板溶着のデメリットです。溶融したプラスチックが接合面から溢れ出し、バリが発生することがあります。

熱板溶着の使用用途

熱板溶着の使用用途として、自動車部品、家電製品、医療機器の3つを解説します。

1. 自動車部品

自動車部品では、燃料タンク、ラジエータータンク、エアダクト、ヘッドライト、テールランプなどの部品の接合に熱板溶着が用いられています。自動車部品は高い強度と気密性・水密性が求められるため、熱板溶着が最適な接合方法となります。

2. 家電製品

家電製品では、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、エアコンなど、多くの製品の外装部品や内部部品の接合に熱板溶着が用いられています。

3. 医療機器

医療機器では、輸液バッグ、透析器、カテーテルなど、患者の安全に関わる重要な部品の接合に熱板溶着が用いられています。医療機器は高い気密性・水密性だけでなく生体適合性も求められるため、熱板溶着の技術が活用されています。

黒ニッケル

黒ニッケルとは

黒ニッケルとは、金属表面に施される特殊なめっき処理の一種です。

その名の通り、黒色の外観を特徴としています。その色合いは単なる黒ではなく、深みのある独特な黒色であり光沢感も有しています。

黒ニッケルめっきはニッケルと亜鉛の合金を主成分としており、この合金の組成を調整することで色の濃さや光沢感を微妙に変化させることが可能です。また、黒ニッケルめっきはその外観だけでなく優れた機能性も持ち合わせています。耐食性、耐摩耗性に優れており、様々な環境下での使用に耐えられます。さらに光の反射を抑える効果もあり、光学機器や精密機器など光の反射が問題となる用途にも利用されている点も特徴です。

黒ニッケルの使用用途

黒ニッケルの使用用途として、自動車部品、光学機器、精密機器、装飾品、建築部材の5つを解説します。

1. 自動車部品

自動車のエンブレムや内装部品などに黒ニッケルめっきが施されることで、高級感のある外観を演出することが可能です。また黒ニッケルは光の反射を抑える効果があるため、運転席周りの部品に採用することで運転中の眩しさを軽減する効果も期待できます。

2. 光学機器

カメラのレンズや望遠鏡の内部部品に黒ニッケルめっきを施すことで、不要な光の反射を抑えより鮮明な画像を撮影することが可能です。また黒ニッケルは耐摩耗性に優れているため、レンズの保護にも役立ちます。

3. 精密機器

精密機器の筐体や部品に黒ニッケルめっきを施すことで、静電気の発生を抑制することが可能です。また黒ニッケルは耐食性に優れているため、精密機器を錆から守る効果も期待できます。

4. 装飾品

腕時計のバンドやアクセサリーに黒ニッケルめっきを施すことで、落ち着いた雰囲気の装飾品に仕上げることが可能です。黒ニッケルの独特な黒色は他の素材との組み合わせやすく、様々なデザインの装飾品に利用されています。

5. 建築部材

建物の外装や内装に使われる金属部品に黒ニッケルめっきを施すことで、シックでモダンな雰囲気を演出することが可能です。黒ニッケルは耐候性に優れているため、屋外での使用にも適しています。

ロールフォーミング

ロールフォーミングとは

ロールフォーミングとは、金属板を連続的に曲げ加工して断面形状の製品を成形する加工方法です。

複数のロール (ローラー) を配置し、その間を金属板を通すことで徐々に曲げていきます。 冷間加工であるため、材料の強度を維持したまま複雑な形状に加工できる点が特徴です。ロールフォーミング加工は、高い生産性と品質の安定性から数多くの産業分野で採用されています。

ロールフォーミングの使用用途

ロールフォーミングの使用用途として、建材分野、自動車部品分野、家電製品分野の3つを解説します。

1. 建材分野

建材分野では、屋根材、外壁材、雨樋、軽量鉄骨などの部材の成形にロールフォーミング加工が用いられています。 特に屋根材は、その形状の複雑さからロールフォーミング加工が加工方法として適切です。また軽量鉄骨は建築物の構造材として重要な役割を担っており、ロールフォーミング加工による高い精度と強度が求められます。

2. 自動車部品分野

自動車部品分野では、ドアフレーム、サイドメンバー、バンパー、マフラーなど様々な部品の成形にロールフォーミング加工が活用されています。こうした部品は高い強度と軽量化が求められるため、ロールフォーミング加工による材料特性を活かした成形が必要です。 また自動車の生産ラインにおける高い生産性も、ロールフォーミング加工が採用される理由の一つです。

3. 家電製品分野

家電製品分野では、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの外装部品や内部構造部品の成形にロールフォーミング加工が少しずつ普及していると言えます。近年ではデザイン性の高い家電製品が増えており、複雑な形状を成形できるロールフォーミング加工のニーズが高まっています。 また、環境意識の高まりから軽量化やリサイクル性に優れた材料を使用した製品が増えており、ロールフォーミング加工による成形技術が注目されています。

酸洗鋼板

酸洗鋼板とは

酸洗鋼板とは、熱間圧延で製造された鋼板 (熱延鋼板) を塩酸などの酸溶液に浸漬し、表面に生成された酸化被膜 (スケール) を化学的に除去した鋼板です。

熱延鋼板は製造過程で高温にさらされるため、表面に強固な酸化被膜が形成されます。酸化被膜は鋼板の加工性や塗装性に悪影響を及ぼすため、様々な用途に使用される前に除去する必要があります。

酸洗鋼板は、熱延鋼板の特性である強度や成形性を維持しつつ、冷延鋼板と比較して安価で経済的という点がメリットです。酸洗工程は単に表面の酸化被膜を除去するだけでなく、表面に油膜を形成する効果もあります。油膜は錆の発生を抑制するだけでなく、プレス加工などの際の潤滑剤としても機能します。

酸洗鋼板の使用用途

酸洗鋼板の使用用途として、自動車部品、電気機器、建築資材の3つを解説します。

1. 自動車部品

酸洗鋼板の主要な用途の一つが自動車部品です。特に、車体フレームやサスペンションなどの構造部品や、ドア、フェンダー、ボンネットなどの外板部品に広く用いられています。酸洗鋼板は強度と成形性のバランスが良く、プレス加工によって複雑な形状に成形することが可能です。また溶接性にも優れているため、部品同士の接合にも適しています。さらに、塗装の密着性が高いため美しい外観を長期間維持することが可能です。

2. 電気機器

家庭用電化製品や産業用電気機器の外箱や内部構造部品にも酸洗鋼板は広く使用されています。例えば冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの家電製品や配電盤、制御盤などの筐体などが挙げられます。酸洗鋼板は加工性に優れているため、複雑な形状への成形や、穴開け、曲げ加工などが容易です。

3. 建築資材

建築分野においても酸洗鋼板は様々な用途で使用されています。例えば屋根材、壁材、間仕切り、シャッター、ダクト、パイプなどが挙げられます。酸洗鋼板は、塗装やメッキ処理によって耐候性をさらに向上させることが可能です。

発泡成形

発泡成形とは

発泡成形とは、樹脂に発泡剤を混ぜ、気泡を含んだ状態で成形する技術です。

気泡を樹脂内部に均一に分散させることで、製品の軽量化、断熱性・遮音性の向上、衝撃吸収性の付与など様々な特性を付与することが可能です。発泡成形は通常、熱可塑性樹脂を原料とし、化学的または物理的に気体を発生させる発泡剤を混ぜ合わせて行います。成形機内部で樹脂を加熱溶融し発泡剤を分解または気化させることで、樹脂内に無数の気泡が形成され、その後に金型内で冷却固化させることで気泡を保持したままの成形品が得られます。発泡倍率は、発泡剤の種類や添加量、成形条件などを調整することで用途に合わせて制御することが可能です。

発泡成形によって製造された製品は、通常の樹脂成形品に比べて軽量かつ高強度となる点が大きな特徴です。さらに、気泡の存在は断熱性や遮音性の向上にも寄与します。また、発泡成形は使用する樹脂の種類を限定しない汎用性の高い技術でもあります。ポリスチレンやポリプロピレン、ポリエチレンなどの汎用樹脂からエンジニアリングプラスチックまで、幅広い樹脂材料に適用可能です。

発泡成形の使用用途

発泡成形の使用用途として、建築・土木分野での活用、自動車分野での活用、包装・物流分野での活用の3つを解説します。

1. 建築・土木分野での活用

発泡成形は建築・土木分野において、断熱材や軽量構造部材として広く用いられています。例えば発泡ポリスチレン (EPS) は、優れた断熱性能から住宅や建築物の外壁や屋根の断熱材として広く普及しています。

2. 自動車分野での活用

自動車分野では、軽量化による燃費向上や衝撃吸収性による安全性の向上に活用されています。バンパーや内装材、シートのクッション材などに発泡ポリプロピレン (EPP) や発泡ポリエチレン (EPE) が使用されています。

3. 包装・物流分野での活用

包装・物流分野では、製品の保護や輸送効率の向上を実現しています。発泡ポリスチレン (EPS) は、その優れた緩衝性から、家電製品や精密機器などの輸送用梱包材として広く使用されています。

ガラスビーズブラスト

ガラスビーズブラストとは

ガラスビーズブラストとは、微細なガラスビーズを圧縮空気と共に高速で噴射し、対象物の表面に衝突させることで表面処理を行うブラスト工法です。

ガラスビーズは球形であり、他の研磨材と比較して対象物を傷つけにくいという特徴を持ちます。そのため、表面を粗面化しつつも過度な損傷を与えずに洗浄や仕上げを行うことが可能です。ガラスビーズの特性から、繊細な加工が求められる製品や光沢のある仕上がりが求められる場合に適しています。

ガラスビーズブラストでは、使用するガラスビーズの粒径や噴射圧力、噴射距離などを調整することで仕上がりの質感や粗さを制御することが可能です。粒径が小さく圧力が低いほど、滑らかで光沢のある仕上がりとなります。一方、粒径が大きく圧力が高いほど、粗いマットな仕上がりとなります。また下地処理として研磨加工を施すことで、さらに多様な表現が可能です。ガラスビーズ自体は対象物を削る力が弱いため、強い研磨目を消すことは難しい傾向があります。そのため深い研磨目が残っている場合にはあらかじめバフ研磨などで除去しておくことが重要です。

ガラスビーズブラストの使用用途

ガラスビーズブラストの使用用途として、装飾・意匠性向上、バリ取り・表面仕上げ、ピーニング効果、洗浄・表面改質の4つを解説します。

1. 装飾・意匠性向上

ガラスビーズブラストの特徴的な用途は、金属表面に独特の質感と光沢を付与し、装飾性や意匠性を向上させることが可能です。白銀に輝く上品な仕上がりは宝飾品のような高級感を演出し、製品の付加価値を高めます。例えばステンレス製の手摺にガラスビーズブラストを施すことで、エレガントで洗練された印象を与えることが可能です。建築物の内外装、家具、照明器具など、意匠性が重視される製品に多く採用されています。

2. バリ取り・表面仕上げ

製造過程で発生するバリや微細な傷を除去し表面を滑らかに仕上げるためにも、ガラスビーズブラストは有効です。球形のガラスビーズが表面に均一に衝突することで鋭利な突起を丸め、滑らかな手触りを実現します。こうした効果は、精密機械部品や医療機器など安全性や機能性が求められる製品において重要です。

3. ピーニング効果

ガラスビーズブラストは、対象物の表面に圧縮残留応力を付与し、疲労強度や耐摩耗性を向上させるピーニング効果も期待できます。ガラスビーズの衝突によって表面が微細に塑性変形し、内部に圧縮応力が生じるためです。ピーニング効果は、航空機部品や自動車部品など高い耐久性が求められる製品において有効です。

4. 洗浄・表面改質

ガラスビーズブラストは、金属表面に付着した酸化被膜や汚れを除去し、清浄な表面を得るためにも用いられます。ガラスビーズの衝突エネルギーによって汚れや酸化物が剥離されるためです。また表面を適度に粗面化することで、塗料や接着剤の密着性を向上させられます。

コンプレッション成形

コンプレッション成形とは

コンプレッション成形とは、日本語で圧縮成形とも呼ばれ、ゴム製品の製造方法として歴史のある成形方法です。

金型の凹部 (キャビティ) に予め計量したゴム材料を投入し、熱と圧力を加えて成形します。金型を加熱した状態で圧縮機によって型締めし、ゴム材料を金型内で流動させ加硫 (架橋反応) させることで、目的の形状に成形します。コンプレッション成形はたい焼きやおやきを作るプロセスに例えられることが多く、直感的に理解しやすい製造技術です。

コンプレッション成形は他の成形方法と比較して金型構造が単純であるため、金型製作費用を抑えられるという大きなメリットがあります。また比較的単純な操作で成形が可能なため、高度な技術や熟練した作業者を必要とせず生産現場への導入ハードルが低いことも特徴です。少量生産や試作品の製造にも柔軟に対応できるため、研究開発段階や多品種少量生産が求められる製品の製造にも適しています。コンプレッション成形は、成形工程で発生するバリの処理に手間がかかるというデメリットも存在します。

コンプレッション成形の用途

コンプレッション成形の用途として、工業用パッキン・ガスケット、自動車用部品、医療機器部品の3つを解説します。

1. 工業用パッキン・ガスケット

コンプレッション成形はOリングやガスケットなどのシール材の製造に広く利用されています。Oリングやガスケットなどの部品は機械や装置の接合部から流体や気体が漏れるのを防ぐ役割を担っており、自動車、航空機、産業機械など、幅広い分野で使用されています。コンプレッション成形によって製造されるシール材は、耐熱性、耐油性、耐薬品性など、使用環境に応じた特性を持つ材料を選ぶことで様々な用途に対応することが可能です。金型さえあれば多種多様な形状を成形できるため、特殊形状のパッキンやガスケットの製造にも適しています。

2. 自動車用部品

自動車産業においてもコンプレッション成形は活用されています。例えばエンジン周りの耐熱性や耐油性が求められるシール材や、車体の振動を吸収する防振ゴムなどの製造に用いられます。

3. 医療機器部品

医療機器分野では、安全性や衛生面への配慮から高品質なゴム部品が求められます。コンプレッション成形は、医療用チューブやカテーテル、人工臓器の部品など人体に直接触れるような部品の製造にも用いられています。

圧縮成形

圧縮成形とは

圧縮成形とは、熱硬化性樹脂を金型内で加熱・加圧し、化学反応によって硬化させて成形品を得る加工方法です。

熱硬化性樹脂は、加熱することで架橋反応を起こし硬化する性質を持つ樹脂であり、一度硬化すると再び加熱しても軟化・溶融しないという特徴を有します。熱硬化性樹脂の特性を活かし、耐久性や耐熱性、耐薬品性が求められる製品の製造に用いられる成形方法が圧縮成形です。圧縮成形はプラスチックの成形方法の中でも歴史が古く、基本的な原理は発明当初から大きく変わっていません。金型はキャビティ (雌型) とコア (雄型) で構成されています。まずキャビティ内に粉末状またはタブレット状の成形材料を投入し、その後に加熱された金型を閉じ高い圧力をかけることで成形材料を流動化させると同時に架橋反応を進行させ、金型の形状に固化させます。成形後、金型を開いて製品を取り出し、必要に応じてバリなどの仕上げ処理を行います。

圧縮成形は、射出成形などの他の成形方法と比較して設備が比較的安価であること、金型構造が単純であること、大型製品の成形に適していることなどがメリットです。一方で、成形サイクルが長い、複雑な形状の成形には不向き、バリの発生など後処理が必要となる場合があるといったデメリットも存在します。

圧縮成形の使用用途

圧縮成形の使用用途として、食器類、電気絶縁部品、服飾用ボタンの3つを解説します。

1. 食器類

メラミン樹脂やユリア樹脂を用いた圧縮成形は、食器類の製造に広く用いられています。メラミン樹脂やユリア樹脂は耐熱性、耐水性、耐薬品性に優れており、食器としての使用に適した性質を備えています。また表面硬度が高く傷がつきにくいため、長期間美観を保つことが可能です。軽量で割れにくいという特徴も、食器としての利便性を高めています。具体的には、皿、茶碗、丼、コップ、トレーなど様々な食器が圧縮成形によって製造されています。

2. 電気絶縁部品

フェノール樹脂やエポキシ樹脂を用いた圧縮成形は、電気絶縁部品の製造に不可欠な技術です。フェノール樹脂やエポキシ樹脂は高い電気絶縁性を備えているため、電気を通さないことが求められる部品に適しています。また耐熱性や機械的強度にも優れているため、過酷な環境下でも安定した性能を発揮します。

3. 服飾用ボタン

ユリア樹脂を用いた圧縮成形は、服飾用ボタンの製造にも用いられています。ユリア樹脂は硬度が高く耐摩耗性に優れているため、ボタンとしての使用に適しています。

冷延鋼板

冷延鋼板とは

冷延鋼板とは、熱間圧延された鋼板 (熱延鋼板) を、さらに常温で再結晶温度以下で圧延加工 (冷間圧延) を施した鋼板です。

冷間圧延によって、熱延鋼板よりも薄く表面が滑らかで、寸法精度に優れた高品質な鋼板となります。熱間圧延では、高温状態の鋼を圧延するため表面に酸化スケールと呼ばれる酸化膜が発生し、寸法精度にも限界があります。一方、冷間圧延では、常温で加工するため酸化スケールの発生が抑えられ、より薄く、表面が美麗で均一な厚みを持つ鋼板を製造することが可能です。

冷延鋼板は優れた特性から、幅広い用途で使用されています。冷延鋼板は広幅帯鋼をシャー (剪断機) にかけて一定寸法に剪断した切り板です。また、冷延鋼板の製造過程で生まれる幅600mm以上でコイル状のものは冷延広幅帯鋼と呼ばれ、ブリキや亜鉛めっき鋼板の素材としても使われます。熱延帯鋼をスリットして冷間圧延したもの、あるいはそのまま直接冷間圧延したもので幅600mm未満のコイル状のものは、みがき帯鋼と呼ばれます。

冷延鋼板の使用用途

冷延鋼板の使用用途として、自動車、家電製品、鋼製家具、建材の4つを解説します。

1. 自動車

冷延鋼板は、自動車のボディ、フレーム、ドア、ボンネットなど車体の主要な部分に広く使用されています。自動車には軽量化と衝突安全性の両立が求められますが、冷延鋼板は高強度で加工性にも優れているため、こうした要求を満たす適した素材です。

2. 家電製品

冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの家電製品の外装や内部部品にも、冷延鋼板が多用されています。冷延鋼板は、表面が美しく塗装やめっきなどの表面処理にも適しているため、家電製品の外観を美しく仕上げることが可能です。

3. 鋼製家具

オフィスで使用されるデスク、ロッカー、キャビネットなどの鋼製家具にも、冷延鋼板は必要な素材です。冷延鋼板は薄くて強度があるため、軽量で丈夫な家具を製造することが可能です。また加工性にも優れているため、複雑な形状の家具を製造できます。

4. 建材

冷延鋼板は、建物の屋根材や外壁材などの建材としても使用されています。特に、表面にめっき処理を施した鋼板は耐食性に優れているため、屋外で使用される建材として適しています。

プレス鍛造

プレス鍛造とは

プレス鍛造とは、プレス加工と鍛造加工の2つの技術を組み合わせた加工方法です。

一般的に鍛造加工は、金属を加熱し金型を用いて叩いたり押し付けたりして成形する技術であり、プレス加工は常温の金属板を金型で挟み込み、圧力をかけて成形する技術です。プレス鍛造はそれぞれの長所を活かし、複雑な形状の製品を高精度かつ効率的に製造することを可能にします。具体的には、鍛造加工によって素材の強度を高め内部構造を均質化した後、プレス加工によって精密な形状に仕上げるという流れになります。

プレス鍛造ではまず鍛造工程で素材に大きな圧力をかけ、金属内部の結晶粒を微細化させます。その後プレス工程で金型を用いて目的の形状に成形することが可能です。プレス工程では、鍛造工程で得られた強靭な素材に対して精密な形状を付与することが可能であり、複雑な形状の製品も高精度に製造可能です。

プレス鍛造の使用用途

プレス鍛造の使用用途として、自動車部品、航空宇宙部品、産業機械部品、建設機械部品の4つを解説します。

1. 自動車部品

自動車部品は安全性と性能に直結するため、高い強度と耐久性が要求されます。プレス鍛造は、エンジン部品、サスペンション部品、駆動系部品など重要な部品の製造に用いられています。

2. 航空宇宙部品

航空宇宙分野では、軽量かつ高強度な部品が必要です。プレス鍛造はチタン合金やアルミニウム合金などの難加工材にも適用可能であり、航空機やロケットの構造部品、エンジン部品などに使用されています。厳しい環境下で使用される航空宇宙部品には、極めて高い信頼性が求められます。プレス鍛造によって製造された部品は優れた強度と耐久性を備え、安全性と性能の要求を満たすことが可能です。

3. 産業機械部品

産業機械部品は、長時間の連続稼働に耐えうる高い耐久性が求められます。プレス鍛造は、ギア、シャフト、ベアリングハウジングなど様々な産業機械部品の製造に活用されています。

4. 建設機械部品

建設機械は過酷な環境下で使用されるため、極めて高い強度と耐久性が求められます。プレス鍛造は、掘削機のバケットやアーム、クレーンのフックなど強度と耐摩耗性が要求される部品の製造に用いられています。