酸洗鋼板とは
酸洗鋼板とは、熱間圧延で製造された鋼板 (熱延鋼板) を塩酸などの酸溶液に浸漬し、表面に生成された酸化被膜 (スケール) を化学的に除去した鋼板です。
熱延鋼板は製造過程で高温にさらされるため、表面に強固な酸化被膜が形成されます。酸化被膜は鋼板の加工性や塗装性に悪影響を及ぼすため、様々な用途に使用される前に除去する必要があります。
酸洗鋼板は、熱延鋼板の特性である強度や成形性を維持しつつ、冷延鋼板と比較して安価で経済的という点がメリットです。酸洗工程は単に表面の酸化被膜を除去するだけでなく、表面に油膜を形成する効果もあります。油膜は錆の発生を抑制するだけでなく、プレス加工などの際の潤滑剤としても機能します。
酸洗鋼板の使用用途
酸洗鋼板の使用用途として、自動車部品、電気機器、建築資材の3つを解説します。
1. 自動車部品
酸洗鋼板の主要な用途の一つが自動車部品です。特に、車体フレームやサスペンションなどの構造部品や、ドア、フェンダー、ボンネットなどの外板部品に広く用いられています。酸洗鋼板は強度と成形性のバランスが良く、プレス加工によって複雑な形状に成形することが可能です。また溶接性にも優れているため、部品同士の接合にも適しています。さらに、塗装の密着性が高いため美しい外観を長期間維持することが可能です。
2. 電気機器
家庭用電化製品や産業用電気機器の外箱や内部構造部品にも酸洗鋼板は広く使用されています。例えば冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの家電製品や配電盤、制御盤などの筐体などが挙げられます。酸洗鋼板は加工性に優れているため、複雑な形状への成形や、穴開け、曲げ加工などが容易です。
3. 建築資材
建築分野においても酸洗鋼板は様々な用途で使用されています。例えば屋根材、壁材、間仕切り、シャッター、ダクト、パイプなどが挙げられます。酸洗鋼板は、塗装やメッキ処理によって耐候性をさらに向上させることが可能です。