薄膜コーティング

薄膜コーティングとは

薄膜コーティングとは、ベースとなる基材・基板の上に薄膜層を作り、様々な機能を付与する技術・サービスです。

一般的には、10μm以下の膜が薄膜と呼ばれますが、100μmでも薄膜と呼ぶ場合もあり、厳密な定義はありません。薄膜は、基材表面の保護、意匠性の付与、反射防止、絶縁など様々な機能性向上のために使用されます。CPU、HDDの記録面、液晶ディスプレイや、レンズ、電子部品の電極、工具の耐久性向上など、さまざまな製品に使用されているテクノロジーです。

薄膜コーティングの使用用途

薄膜コーティングは、主に下記のような用途で使用されています。

  • 物体の表面の強化や保護
  • 光学的性質の付与 (反射防止膜・反射膜・蛍光・光学フィルタ)
  • 低摩擦化
  • 導電性付与・絶縁性付与
  • 意匠性の付与
  • 撥水・撥油

薄膜コーティングによって付与されるこれらの表面効果は、様々な産業分野で活用されています。

1. 電子工業

電子工業産業において、薄膜コーティング技術は、電子機器・ディスプレイ機器の高性能化、小型・薄型化、耐久性向上などに貢献しています。成膜される薄膜の種類は、絶縁膜、保護膜、磁性膜などです。主な用途には下記のようなものがあります。

  • 集積回路・半導体素子の電極や配線
  • 表示素子の透明導電膜、絶縁膜、保護膜、蛍光体
  • 磁気素子の軟磁性膜、硬磁性膜、ギャップ材、絶縁膜
  • オプトエレクトロニクス素子

2. エネルギー関連分野

薄膜コーティングはエネルギー分野においても活用されている技術です。特に、太陽電池にアモルファスシリコン膜が使用されています。アモルファスシリコン膜とは、シランガスという物質をプラズマ化学蒸着して得られる薄膜です。エネルギー分野における主な用途には下記のようなものがあります。

  • 太陽電池用薄膜
  • 透明導電膜
  • 電極
  • 反射防止膜
  • 光熱変換素子用薄膜 (選択吸収膜、反射膜、選択透過膜など)

3. 工業

各種工業製品では、ガラス表面などの反射膜、反射防止膜、保護膜などに薄膜コーティングが施されます。これらの薄膜コーティングが施されたガラスは、

  • 電車・鉄道車両の窓
  • 鉄道の信号機・表示灯
  • 航空機の計器類・ディスプレイ
  • 車載ディスプレイ機器

などに使用されます。また、各種切削工具や金型の表面に施される薄膜コーティングは、耐摩耗、耐食、耐熱、潤滑などの機能を付与することなどが目的です。その他、レーザー加工機、医療機器、分析装置、プロジェクターなどにも薄膜コーティングは使用されます。

薄膜コーティングの原理

薄膜を形成する方法で一般的なものは、真空成膜です。
真空成膜では、真空中で膜の材料を基板の表面に堆積させます。真空成膜には、物理蒸着 (PVD) 、化学気相成長 (CVD) などがあります。

真空成膜以外には、メッキ、溶射、塗装、スプレー法なども薄膜コーティングの一種として含まれることがあります。ただし、これらは真空成膜よりも膜が厚くなることが多いので、塗膜や皮膜と呼ばれることのほうが一般的には多いです。

1. PVD (物理蒸着)

PVD (英: Physical Vapor Deposition) とは、真空容器内で発生させた原料の蒸気を工具や部品などの成膜対象物に付着させることで薄膜を形成する方法です。最も一般的な PVD法にはアーク放電とスパッタリングがあります。処理温度は 70 ~ 600℃程度で、原料や条件を変えることで様々な薄膜を作製することが可能です。

構造は単層膜、多層膜、グラデーションをつけたもの
など多種にわたり、TiN、AlTiN、TiAlN、CrNなどがあります。膜の種類や構造,組成などを変えることで、膜の硬さや弾性、密着性などの特性を変化させることが可能です。

2. CVD (化学気相成長)

CVD (英: Chemical Vapor Deposition) は、原料の蒸気を気相中もしくは成膜対象物の表面において分解及び化学反応させ,薄膜をコーティングする方法です。主には熱CVDとプラズマCVDがあります。

熱CVDとは減圧下において原料ガスを熱のエネルギーによって分解・反応させる方法です。700~1050℃の処理温度で、TiC、TiCN、TiN、Al2O3 (アルミナ) などの単層膜や多層膜を形成します。ガスが触れるすべての表面にコーティングが可能であるため、複雑な形状や内側への均一なコーティングも可能です。

プラズマ CVDとは、原料ガスをプラズマ放電のエネルギーによって分解・反応させる方法です。成膜温度は 200℃程度と、熱CVDに比べて低くなります。プラズマ CVD で形成される DLC 膜 (Diamond-Like Carbon) 膜はアモルファス構造をしており、これによって潤滑不足の条件でも硬さや耐摩耗
性、低摩擦特性に優れているという特徴があります。

薄膜コーティングの種類

薄膜コーティングの成膜材料には、金属 (Zn、Au、Al、In、Ag、Cr、Tiなど) 、誘電体 (Al2O3、Nb2O5、SiO2、TiO2) など様々な種類が使用されます。平面、曲面、ドーム、フィルムロール、円筒、ワイヤーや繊維、特殊立体物などの様々な形状に適用可能です。

機能別の種類では、主に下記のようなものがあります。

  • 反射防止膜: 光の反射を抑えて透過率を向上させる薄膜
  • フィルタ膜: 光を弱めたり、特定の波長範囲の光だけを透過させたりする目的で使われる光学薄膜
  • 透明導電膜: 導電性と可視光を透過する性質の両方を持った材料で作られた薄膜
  • 耐摩耗性膜: 耐摩耗性を向上させる機能を持ち、工作機械やドリルビットなど、さまざまな工具・金型の表面に施される薄膜
  • 固体潤滑膜: 潤滑油やグリースなどを使用できない部品や機械などに使用される薄膜

タープ取付金具

監修:浅野金属工業株式会社

タープ取付金具とは

タープ取付金具とは、各種タープ・シェード・オーニングなどの設置に使用される金具です。

タープ・シェード・オーニングとは、日差しを遮る目的で張られる布製のシートです。夏を中心に紫外線対策・熱中症対策で使用されることが多くなっています。これらの日除けは、専用の金具 (タープ取付金具) を用いて支柱や柵などに固定されます。幼稚園・保育園や、飲食店及び商業施設などのテラス、屋上スペース、個人住宅の庭など、幅広く使用されている製品です。

また近年のアウトドアブームで、車やテントにタープを金具で連結して使用する人が多くなってきました。

タープ取付金具の使用用途

1. 取り付け場所

タープ取付金具は、日除けのためのタープ・シェード・オーニングを設置することに使用されます。金具の種類にもよりますが、取り付ける場所は主に下記のような場所です。

  • 柵・フェンス・支柱
  • 物干しざお・手すり
  • サッシ枠
  • 窓 (ガラス面)
  • シャッター・雨戸
  • 建物外壁 (木・金属・コンクリート)

また、キャンプなどのアウトドアシーンでは、テントや車にタープを連結する用途もあります。車に取り付けるタープは、カーサイドタープと呼ばれ、そのタープを連結する金具はカージョイントと呼ばれることがああります。

2. 使用シーン

タープ取付金具は、個人使用・業務利用を問わず様々な分野での用途があります。

  • 個人住宅の庭・ベランダ
  • 幼稚園・保育園の園庭・プール・砂場など、教育施設の屋外
  • オフィスビルやマンションなどの屋上施設
  • 飲食店・商業施設・ホテルなどのテラス・屋上施設
  • キャンプなどのアウトドア

それぞれの利用シーンにおいて、用途にあったタープ・シェード・オーニングを設置することに使用されています。

タープ取付金具の原理

タープ取付金具は、用途に合わせて、フック・吊り滑車・カラビナなどのうち一種類もしくは複数の種類を組み合わせて使用されます。

1. 個人用

個人住宅で使用する場合は比較的タープも小型で簡易的な使用であるため、サッシ・外壁用のフックが使用されることが多いです。製品によりますが、ねじ留めもしくはマグネットや粘着テープで取り付けることが可能です。

アウトドアなどで車に取り付けるカーサイドタープでは、吸盤式のフックが用いられます。また、窓などのガラス面に取り付ける場合も吸盤式のフックを使用することが可能です。

2. 業務用

業務用の使用では、タープの使用期間も長く大型になる傾向があります。安全に設置するために、カラビナなどが使用されることが多いです。更に吊り滑車などを併用することで昇降式として利用される場合もあります。フェンスなどに設置したり、専用の支柱などに取り付けたりします。

使用の都度外す必要のない商業施設の屋上などでは、ステンレスワイヤー・滑車・カラビナなどを使用し、タープにパイプを通して吊り上げている場合もあります。ワイヤーを使用することで大規模まで広く対応することが可能です。また、滑車を組み合わせて用いることで、開閉式として使用することができ、利便性が向上します。

タープ取付金具の種類

タープ取付金具は、前述の通り様々な種類があり、用途に合わせて一種類もしくは複数種類を組み合わせて使用されます。

材質では、ステンレス製の金具は特に耐食性、耐久性に優れており、腐食しやすい屋外での使用に適しています。雨や雪の多いエリア、沿岸地域などでも劣化しにくく使用することが可能です。

1. 家庭用

家庭用では、サッシ枠取り付け用・外壁用 (木・コンクリート・金属) などの種類があり、ねじ留め・マグネット・粘着テープ・接着剤・吸盤などの設置方法があります。タープ側はフック形状になっていることが一般的です。耐荷重等は大きくないことが多いですが、取り付けが比較的容易であるものが多いです。

2. 業務用

業務用では、カラビナ、滑車、シャックル、リングキャッチなど、家庭用よりも丈夫な金具が使用されることが多く、必要に応じてステンレスワイヤーやタープ用のパイプなども併用されます。滑車などの可動式の金具を組み合わせることで、開閉式や昇降式のタープとして使用することが可能です。

本記事はタープ取付金具を製造・販売する浅野金属工業株式会社様に監修を頂きました。

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マイクロバンプ

マイクロバンプとは

マイクロバンプとは、半導体デバイスと回路基板側の電極を接合するために形成する微細なはんだの突起です。

一般的に、ピッチが50μm未満であるバンプがマイクロバンプと呼ばれています。近年高性能化が求められるIC製品において、TSVとマイクロバンプ でICチップを接合する積層型三次元IC (3D-IC) 技術などの開発が進められています。ICチップを貫通電極とマイクロバンプで接続することに より、チップ間の配線長を劇的に短くすることが可能です。これにより、配線遅延時間の低減、省電力化を実現することができます。

マイクロバンプの使用用途

1. 概要

半導体チップの小型化、高性能化に伴って、接続ピン数は増加し、接続ピッチや電極サイズは微細化する傾向にあります。マイクロバンプとは、このような微細化、狭ピッチ化に対応することを目的とした接合プロセスです。

マイクロバンプによって接合部の機械的ストレスが分散され、特性の変動を防ぐことができます。また、一対の電極をたくさんのマイクロバンプで接続することにより、歩留まりをあげることが可能です。

2. 具体的な用途

マイクロバンプの具体的な用途例には下記のようなものがあります。

  • 半導体パッケージ一般
  • 3次元集積回路
  • 非破壊検査用X線センサ
  • 医療用X線センサ
  • 遠赤外線イメージセンサ
  • 高エネルギー物理学研究用の素粒子検出器

マイクロバンプは、X線センサの解像度を従来の100倍以上に上げる効果があり、医療用などのセンサの性能向上に貢献しています。これにより、X線の照射量が少なくて済むため、人体への影響を軽減することができます。また、マイクロバンプは、従来のデザインで作った積層チップにも適用可能です。

マイクロバンプの原理

1. 半導体はんだバンプ

半導体デバイスの実装方式には、ワイヤーボンディング実装方式と、フリップチップ実装方式があります。

ワイヤーボンディング実装方式は、半導体デバイスの電極と回路基板側の電極を金などのワイヤーで接続します。

一方、フリップチップ実装方式は、半導体デバイスと回路基板側の電極同士を直接接続する実装方法です。 反転 (フリップ) させた半導体デバイスと回路基板を熱や超音波で圧着します。圧着のためには、あらかじめ半導体ウエハの電極部に突起を形成する必要があり、この突起がはんだバンプです。また、この作業工程を半導体はんだバンプ加工工程と呼びます。

2. Cuピラーバンプ形成

マイクロバンプの接合は、一般的なバンプよりもピッチが狭いため電解めっき法によるCuピラーが主流です。

はんだボールではリフロー時に横方向に大きく広がるため、端子間ピッチを確保する必要があり、マイクロバンプにはあまり適しません。Cuピラーは、はんだボールよりも少量のはんだで接合することが可能です。

Cuピラーバンプ形成工程では、下記の順に工程が進められます。

  1. スパッタリングによるTi/Cuシード層 (導電層) 形成
  2. フォトリソグラフィによるレジストパターンの形成
  3. 電極形成部におけるCuめっきによる柱状の電極形成
  4. バリア層としてのニッケル層の形成及び、スズ-銀 (Sn-Ag)などの鉛フリーはんだの連続的な積層めっき形成

3種類の積層めっきは1台のめっき装置で連続処理が行われます。Cuピラーの高さのバラツキが大きいと実装する際の接続性に直接影響するため、めっき工程においては膜厚均一性を確保することが非常に重要です。

マイクロバンプの種類

マイクロバンプには、Cuピラーバンプ形成の他、無電解スズめっきによる形成などの方法があります。無電解スズめっきには還元型と置換型の2種類が有り、置換型の無電解スズめっきは原理的にスズの膜厚を厚くすること ができません。一方、塩化チタン (Ⅲ) を還元剤とする無電解スズめっきは自己触媒反応により連続析出することが可能であり、バンプ形成に適しています。

被加工物は、通常のSiウェハをはじめとして、SiC、GaAs、 InP、サファイアなどです。ウェハ以外の四角形状基板や、FPCなども加工される場合があります。ウェハサイズは2〜12インチ程度様々なものがあります。バンプ径は最小φ3μm程度から有り、バンプピッチは最小6μm前後から幅広くあります。

自動乳鉢

監修:株式会社石川工場

自動乳鉢とは

自動乳鉢とは、乳鉢と乳棒をモーターで動かして硬質物質や分析試料などを粉砕、混合、分散、混練する機械です。

電子部品材料分野、砥石分野等の各種産業や医学・理科学分野における実験・研究の現場で活用されています。ポットミルなどに比べて、小さな粉砕エネルギーであることが特徴で、その特徴により、電子部品材料分野では、メカノケミカルやメカニカルアロイングが達成できます。また、粉砕中の試料を肉眼で容易に確認することができます。

自動乳鉢は単に手擂りの代替手法として用いられるだけではなく、従来になかった事象を発現させ、新たな材料開発に寄与するものです。さらには、量産まで見据えた工法であるため、量産立ち上げ時間も短縮できます。

自動乳鉢の使用用途

1. 概要

自動乳鉢は、食品、電子部品材料、金属化学などの産業分野や、各種分野の試験研究用途で使用されている機器です。研究では、特にメカノケミカル反応やメカニカルアロイング反応を用いた状態で使用されることもあります。具体的な活用事例には、

  • 全固体電池の試作とその評価
  • ゼオライトの粒子分布の擂潰時間依存性の評価
  • ガラス粉砕実験
  • 磁器杵を原材料とした磁器ナノ粒子の生成

などがあります。

2. 分野と被加工物

自動乳鉢は多くの分野で活用されており、分野と被加工物には下記のような例があります。

  • 理化学: 金属・ガラス・カーボン・シリカなどの各種ペースト、スラリー、カーボンナノチューブ、磁気材料
  • 電気・電子: 導電性インク、半導体材料 (導電性接着剤など)、各種センサー素材、フェライト磁石素材、ハンダ材、セラミック材料 (チタン、ジルコニア、アルミナなど) 、パッケージ封止材
  • 電池用材料: 全固体電池の電極材、リチウム電池電解質
  • 医療・医学: 歯科材料 (義歯素材など) ・人工骨、軟膏材、香料、漢方薬、健康食品
  • 塗料: 塗料用粉末、インク材料、染料、顔料、絵具・漆材、七宝釉薬、朱肉、墨汁
  • 樹脂・油脂: 触媒、接着剤添加物、グリース添加物、火薬類
  • 窯業・金属・ガラス: ファインセラミック粉、貴金属粉末及び各種金属粉末、カーボン粉末、ガラス添加物、粉末治金、酸化アルミナ、鉱物試料、陶芸釉薬
  • 砥石・研磨剤: 砥粒、研磨剤、ダイアモンド、ボロンナイトライド、シリコンカーバイド、コランダム
  • 化粧品: ファンデーション、色材、金属粉
  • 食品: 蕎麦・うどん、菓子材料、製餡、豆腐、こんにゃく、練り物 (蒲鉾・はんぺん、竹輪)、ハム、カレールウ・粉末スープ、すりごま・味噌すり、ピーナッツペースト

自動乳鉢の原理

自動乳鉢は、鉢もしくは乳棒をモーターによって回転させ、粉体の粒子を細かくすり潰ししながら、同時に均一に混ぜ合わせて分散させ、混練する機械です。材料を擂り潰しながら、同時に撹拌も行えるのが大きな特長になります。ポットミルなどに比べて、粉砕エネルギーが小さいため、時間をかけて、少しずつ繰返し行われます。

このことにより、被加工物に発熱や衝撃などの負荷を与えず、意図しない変質を防ぎながら、均一に混練することが可能です。また、メカノケミカル現象やメカニカルアロイングなども発現し、ポットミル等ではできない加工が可能となります。

機構には大きく分けて2つあります。乳棒と乳の両方が回転するタイプと、乳棒のみが自転公転をするタイプです。乳棒と乳の両方が回転するタイプの装置は、乳鉢側の装置内部に強力なモーターが設置されて乳鉢が回転し、乳棒の垂直圧力と壁面圧力によって、強い摩擦力と圧力で試料を粉砕します。

乳鉢用、乳棒用の2つのモーターが必要になります。乳棒のみが自転公転するタイプの装置は、乳鉢と乳棒の両方が回転するタイプと同様の強い摩擦力と圧力が発生します。また、ギアの設計が必要にりますが、モーターは1つでよいので部品点数は少なくなります。

乳棒が自転公転回転するタイプは、ギアの組み合わせにより、乳鉢は固定されてますが、乳棒が公転しながら自転する複雑な動きとなります。杵筒にばねが内蔵されているため、圧力をかけながら撹拌・擂潰が行われます。

自動乳鉢の種類

自動乳鉢には様々な種類の製品があります。鉢と乳棒の素材も製品によって異なり、小型機以上の大きさでは、鉢は花崗岩、磁器、砲金、ステンレスなど、乳棒 (杵) は木、テフロン、磁器などです。微量機では、メノウ、アルミナ、炭化タングステンなどが鉢・杵共に使用されます。乳棒が2軸式になっている製品では効率よく粉砕が可能です。

また、製品によっては、自動乳鉢に真空機能や加熱機能などの付帯機能があるものもあります。真空機能のある製品では、真空/減圧雰囲気、アルゴンや窒素ガスなどの不活性ガス置換雰囲気で濃縮、乾燥、脱泡、撹拌擂潰処理を行うことが可能です。

酸化を避けたい材料処理など、嫌気性素材に最適です。兼ねる機能が付加されたものは、通常温度では非常に粘度が高く、混錬が出来ないものも、加熱することにより、粘度が小さくなり、混錬が可能となります。また、微量機はグローブボックス内で使用することのできる製品もあります。

大きさ別では、微量機 (加工容積0.05 L程度) ・小型機 (加工容積0.2〜7.0L程度) は実験机の上に乗せて実験が可能なため、研究開発向けに最適です。大型機 (12〜150L) は、また、一度に多くの材料の処理が可能なため、量産用として使用されることが多くなっています。

本記事は自動乳鉢を製造・販売する株式会社石川工場様に監修を頂きました。

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自動設計ツール

監修:新明和ソフトテクノロジ株式会社

自動設計ツールとは

自動設計ツールとは、各種パラメーターを設定して仕様に合った3Dモデルや図面を自動生成するプログラムです。

あらかじめプログラミングされた設計ルールやロジックを元に、3D CADなどを活用して設計を行うシステムや、AIを駆使して設計を行うようなシステムなど設計の自動化度合いには様々な製品があります。特に、マスターモデルから各顧客に合わせた細かな仕様変更・寸法変更を行うような設計での使用が多く、構成部品・関連部品や図面まで自動で変更することができます。全ての変更を人の手で行う必要がなくなるため、作業時間短縮や人件費の削減、ヒューマンエラーの削減などの業務効率化に活用されています。

自動設計ツールの使用用途

自動設計ツールは、様々な製造業分野で部品や製品の設計に使用されています。具体的な活用事例には下記のようなものがあります。

  • 鋼鈑桁橋
  • 鉄道信号装置 (自動列車制御装置、列車集中制御装置、連動装置)
  • 自動車部品
  • 航空機部品
  • 産業機械
  • 送風機などの風力機械
  • 構造設計などの建築設計

製造現場では、手作業で設計をする場合、一箇所サイズを変更するために、それを取り巻く周囲の部品のサイズや配置に多大に影響を及ぼし、管理が難しく、見積り・設計・エンジニアリングの作業が煩雑で時間がかかり、エラーが発生しやすくなります。例えば水処理システムの沈殿ユニットの設計仕様を作成するには100以上の図面が必要なため、複雑な設計により修正にかなりの工数がかかってしまいます。しかしこれらの作業も自動設計ツールであれば効率的に工程を進めることが可能です。また精密な設計が必要箇所など、自動設計ツールは顧客ニーズに合わせてカスタム設計がされることがあります。

自動設計ツールの原理

1. 概要

自動設計ツールは、自動化の程度によっていくつかの段階があります。自動化の程度が簡易的であるほど、コストを抑えることができます。例えば、AIを用いて最適な設計を算出するシステムも自動設計ツールですが、簡易的なルールやマスターモデルを設定しておき、仕様の変更・修正に合わせて数値を入力すると自動で修正数値や図面を出力するようなシステムも自動設計ツールの一種です。

2. テンプレート設計

テンプレート設計は、ひな型であるマスターモデルに3Dモデルや図面にパラメーターを設定しておき、最低限のプログラムで自動設計を実現する手法です。仕様に応じた組み立てモデル、部品、図面がすべて自動で出力されます。例えば、Excelシートに条件を入力すると、ひな型モデルが変形して3Dモデルが完成し、更に3Dモデルが投影されて自動で承認図が作成されるようなツールがあります。コストを抑えつつ、効果的で即効性の高い自動設計を行うことが可能です。また、最近では、オリジナルの設計ツールを使用して、プログラミングレスでの自動設計を行うことも可能になっています。

3. トポロジー最適化

他の方法では、トポロジー最適化を活用した設計自動化の事例もあります。トポロジー最適化を使用することで、材料の配分と形状の最適化により、製品の軽量化や強度向上の実現が可能です。必要な強度を確保しながら不要な材料を削減することができるため、例えば自動車では車両の軽量化により、燃費の向上や環境への負荷の軽減につながります。また、航空機の部品でも軽量化や強度向上により、燃費改善や運航コストの削減を効果的に行うことが可能です。

自動設計ツールの選び方

自動設計ツールを選定する際には、機能性やコスト、サポート体制に注意して選定することが必要です。また、既に導入されているその他のシステムとの互換性も重要です。

高機能になればなるほどコストは高くなりますが、ニーズに合わせて適切に機能を絞ればコストダウンを行うことが可能です。例えば、同じような設計課題が目的であれば、テンプレートやルール化を使用することで時間やコストを節約できます。また、ツールのカスタマイズは、設計自動化の効果を最大限に引き出すために重要な要素であり、使用のニーズに合っていることが重要です。

総合的に検討し、使用用途・シーン・予算などに合ったものを選択することが必要です。

本記事は自動設計ツールを製造・販売する新明和ソフトテクノロジ株式会社様に監修を頂きました。

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レールシステム

監修:シンテック株式会社

レールシステムとは

レールシステムとは従来からある電動クレーンを簡易的に人が引っ張って動作させることができるシステムです。

天吊りすることにより、X・Y方向へ自在に移動させることができます。電動チェーンブロック、エアーホイスト、電動バランサー、エアーバランサーなどの昇降装置と組み合わせて三次元的な動きが可能になります。

レールの素材はスチールとアルミ製があり、耐荷重や操作荷重を考慮しながら選定します。比較的軽い重量のものや1t程度の重量物もスムーズに移動できます。操作荷重は持ち上げるものの重さの1%〜1.5%と言われており、運搬作業を効率的かつ安価に行うことが可能です。

レールシステムの使用用途

レールシステムは、様々な産業シーンで活用されており、主な用途には下記のようなものがあります。

  • 部品や製品の搬送用
  • 搭載補助装置のレール
  • 介護用レール
  • 昇降機器のガイド
  • 農業用途における省力化

製造業では、自動車産業をはじめとして、様々な産業分野で使用されており、主な運搬物には

  • 自動車部品
  • 段ボール/袋物
  • ロール材
  • 電子機器・機械
  • 缶・容器
  • 板材 (木材・鋼板・ガラス)
  • 建築資材

などがあります。また、クリーンルーム対応のレールシステムもあり、クリーンルームを必要とするような製品製造にも利用可能です。

農業分野においては、ビニールハウス内の搬入・搬出や、畑での収穫作業など作業の省力化・効率化などに活用されている機器です。また、介護用途では、病院や施設において、リフトを用いて要介護者を運ぶことに利用されています。居室・病室から、トイレ、浴室、デイルーム、リハビリ室や、手術室などへの移動に活用されています。

レールシステムの原理

1. 構成

レールシステムは、レールの他、下記のような部品から構成されています。

  • ハンガー:  上部の梁からランウェイレールを吊る金具
  • エンドトラック: ランウェイレールとガーターレールをつなぐ金具
  • トロリー: ホイストやバランサーを吊るす、レールの中を通る滑車
  • エンドキャップ: レールの端部に取り付ける金具
  • 中間ストッパー: トロリーやエンドトラックの停止位置を調整する可動式の金具

これらの部品と、直線レールやカーブレールを組み合わせて搬送経路が構築されます。万一トロリーが破損しても落下することの無いよう、落下防止ピンなどの装置が取り付けられていることが多いです。ハンガーやエンドトラックには、レール貫通式のボルトが入っているなど、製品によって落下の危険性を少なくする工夫があります。

2. レール

レールシステムには主にアルミ製とスチール製があります。

アルミレールは押出成形によって製造されるレールです。軽量で走行性・操作性ともに高く、腐食しにくいことが特徴です。サビが出ないため、作業空間を衛生的に保つことができ、劣化・破損のおそれも小さくなります。また、自重がスチールレールに比べて軽いので、操作荷重が小さいこと、耐荷重がスチール製に比べて小さいことも特徴です。

スチールレールは、アルミレールに比べて強度が大きいレールです。そのため、耐荷重が大きくなります。また、価格が安いという特徴があります。

レールシステムの選び方

レールシステムには様々な種類があります。形状には天井設置型や懸垂型があり、作業場所に合わせて選択されます。

また、前述の通りレールの材質にはアルミとステンレスの種類があり、レールの耐荷重は、材質やレールピッチ (長さ) 、使用するハンガーなどによって異なります。使用したい場所の可動範囲と耐荷重に合わせてコース設計・レール敷設を行うことが必要です。一般的には、レールピッチが短い方が耐荷重が大きくなります。レールは1mから1m刻みで6mまでの長さで製造されていることが多いです。最も短く耐荷重の多いものでは推奨荷重で1000kgまで耐え、レールが長く耐荷重の小さいものでは推奨荷重数十kg程度になります。用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

本記事はレールシステムを製造・販売するシンテック株式会社様に監修を頂きました。

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DfAM設計サービス

監修:Primal Design.Labo合同会社

DfAM設計サービスとは

DfAM設計サービスとは、主に3Dプリントのための設計手法であるDfAMを行うサービスです。

DfAMとは、Design for Additive Manufacturing (付加製造のための設計) の略称です。付加製造とは材料を積層しながら立体造形する製法を意味しており、今日では一般的に3Dプリントのことを指します。既存の3D CADによる設計の多くは、切削加工や射出成形といった従来工法が前提とした設計です。そのため、単にこれらを置き換えるだけでは、3Dプリンタならではの強みやメリットを最大限に発揮することは難しくなっていました。DfAMは、3Dプリンタ特有の検討事項を検討したり、3Dプリンタの機能を生かした設計を実現したりすることに活用されています。

DfAM設計サービスの使用用途

DfAM設計サービスは主に3Dプリンタによる造形を行うために活用されているサービスです。使用される主な用途・目的として、

  • 部品形状の最適化、軽量化、熱マネジメント
  • 複数部品の一体化 (従来工法で不可能な複雑な構造の実現)
  • 部素材の機能や構造の最適化解析

などが挙げられます。部品形状の最適化では、特定の力に耐え得る形状の造形などが可能であり、部品の軽量化では、部品の中身などをラティスと呼ばれる格子構造にすることで従来のパーツを軽量化させることが可能です。DfAMを用いて複数のパーツを統合させることにより、機能性を損わずに (或いは増幅して) 組立てパーツの数を減らすことができます。また、パーツの数を減らすことにより、複数パーツのアセンブリに関わる時間や組立コストを削減することが可能です。

これらの技術は、車両、航空機、宇宙工学、電子部品、工具など、様々な製造現場・分野で活用されています。また、人工骨やインプラントなどの医療分野でも使用されている技術です。

DfAM設計サービスの原理

1. 概要

DfAMは、3Dプリンタならではの設計を可能にする設計手法です。主な設計要素には

  • インフィルの設計
  • トポロジー最適化
  • ジェネレーティブデザイン

などが挙げられます。

また、設計時にパーツの形状 (壁の厚さや自立する形状など) が3Dプリントに適切であるかどうかをチェックし、データを修復 (ノイズや穴など) したり、編集 (サイズオーバー、反り防止など) したりする機能もあります。

2. インフィル

インフィルとは、3Dプリントにおいて製品の内部を埋めるために使用される素材の形状パターンや密度です。インフィルのパターンには格子状、ハニカム (蜂の巣)、線形など、さまざまな形状があります。代表的なインフィルの構造にはラティス構造とポーラス構造があります。3Dプリントにおいては、内部の密度を下げて造形速度を速くすることが可能です (インフィルレート調整) 。

  • ラティス構造とは、格子状の構造です。素材の使用量を削減しつつ軽量化と強度の両方を実現できることが特長です。
  • ポーラス構造とは、多くの小さな空隙 (ポーラス=孔) を持つスポンジや軽石のような構造です。物体の表面積を大きくすることができ、冷却効率が向上します。そのため、金属3Dプリンターで特に適用されています。また、骨に似た構造のため、人工骨やインプラントなど医療分野でも使用されます。

3. トポロジー最適化

トポロジー最適化とは、材料の配置を最適化する手法です。元となるデザインに対して負荷の条件を設定し、最適化シミュレーションが実行されます。使用する材料を少なく保ちながら、大きな強度を持つ製品を設計することができます。

4. ジェネレーティブデザイン

ジェネレーティブデザインは、AIやアルゴリズムなどを使用して、多数の設計案を生成する手法です。トポロジー最適化と組み合わせて使用されますが、トポロジー最適化がオリジナルのデザインをシミュレーションによって最適化するのに対し、ジェネレーティブデザインは目的と要件からデザインを生成します。

設計者は要件を入力し、システムがそれを満たす多様な設計案を提供するため、これまでの常識にとらわれない斬新な形状設計が可能であるとされます。

DfAM設計サービスの種類

DfAM設計サービスは、製品製造の様々なステップで活用することができます。具体的には

  • 工法・機種選定
  • 機構部設計
  • 形状の最適化
  • 部品点数削減
  • メタマテリアルやメカニカルマテリアルの提案

などのサービスがあります。

製品の構造や工法を最適化するほか、メタマテリアルやメカマテリアルなどの提案では、自然界には無い振る舞いをする構造体、及び、形状や材質を制御して目的の機械的振る舞いをする構造体を提案することが可能です。既存のCAD/CAMなどと連携するサービスも各種用意されています。

本記事はDfAM設計サービスを提供するPrimal Design.Labo合同会社様に監修を頂きました。

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IR照明

監修:株式会社ユーテクノロジー

IR照明とは

IR照明とは、赤外線領域の波長の光 (赤外光) を発光する照明です。

赤外線 (IR) は、可視光線の赤色より波長が長く (約800nm以上) 、人間の肉眼で見ることはできません。赤外線はカメラなどのセンサーで検知され、IR照明は特に赤外対応レンズ・カメラと併用して使用され、赤外線の透過性や水分に吸収される特性を用いた製品検査に利用されています。リング照明、バー照明など、様々な形状の種類があります。

IR照明の使用用途

赤外線は、可視光では検出が難しいものを検出したり、物質を透過して撮像できるため非破壊検査に用いられたりします。また、可視光域に化学反応してしまう物質の検査にも赤外線撮影は有効です。

IR照明はこのような赤外線の特性を用いた検出において、その光源として使用される照明です。各種産業的検査の他、監視カメラなども赤外線カメラは使用されており、夜間や低照度環境において、赤外線照度を補う目的でIR照明が使用されます。主な検査には下記のようなものがあり、半導体、ウェハー、電子基板、太陽電池、農産物、食品、偽造防止、工程品質管理などの分野で活用されています。

  • 基板やシリコンウエハの検査
  • パッケージ製品の内容物検査や異物検出
  • ブラシ製品などの樹脂部分内部の検査
  • 完成品や内容物の検査
  • 工業製品・食品の水分の可視化・検出
  • 基板やシリコンウエハの検査
  • 液体の透過による内部の異物検査
  • 表面の印刷や塗装面を透過しての非破壊検査

IR照明は、これらの検査における光源として利用されています。また、波長域が狭いため、一般的なランプと比較しても照射熱が少ないため、熱によるダメージを受けやすい対象物の取り扱いにも適しています。

IR照明の原理

IR照明には、主に赤外線LEDが使用されています。赤外線LEDは発光ダイオードの一種です。赤外線LEDで照射される赤外線は、赤外線の中でも特に近赤外線 (NIR) と呼ばれる波長740nm~1000nmの領域や、短波赤外波長 (SWIR) と呼ばれる1000nm~1700nmの領域の光です。一般的にSWIRのほうが透過性が良いとされています。

紫外光や可視光と比較すると赤外光は散乱率が非常に小さいため透過率が高くなります。物質の中には、可視光を通さないものでも赤外線を透過するものが在るため、赤外線は透過検査に利用することができます。シリコンウエハ・パッケージ・液晶・活字を透過して検査・観察したり、有色液中の状態を把握することが可能です。

また、水は1450nm付近の波長を吸収するため、水分の有無を利用する検査に適しています。850nm波長の光では水を透過してしまいますが、1450nmの光は水に吸収されて黒く映ります。

IR照明の種類

IR照明には様々な種類の製品があります。光源にはLEDが使用される事が多く、製品によってピーク波長は異なっています。一般的には、780nm、850nm、940nm、1050nm、1100nm、1200nm、1300nm、1450nm、1550nm、1650nmなどの波長の種類があります。一般的なCMOSカメラの感度がおおよそ1000nmまでということもあり、波長850nmの照明は特に多くの製品が販売されています。

リング照明、バー照明、面発光型照明、ドーム型照明、スポット照明、ファイバー照明、光源照明、投光照射照明などの形状があり、用途に合わせて使い分けることが可能です。スポット照明や投光照射照明は、遠距離から明るく集光照射することに適した製品と、近距離から広範囲を照射することに適した製品などの種類があります。

また、その他にも、赤外線監視カメラで広い範囲を監視したい場合などには、赤外線投光器が用いられています。

本記事はIR照明を製造・販売する株式会社ユーテクノロジー様に監修を頂きました。

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バニシング加工

バニシング加工とは

バニシング加工とは、旋盤加工機にバニシングローラーという特殊工具を装着し、表面を削らずに面を押しつぶして塑性変形によって滑らかにする加工です。

内面・外面・端面などに対して行うことができ、特に、外径では、リング形状の製品で、外径面に高い面粗度を求められる製品などに施されている加工です。バニシングとは英語の「burnish:磨く・光らせる」を由来としています。旋削並みの加工精度と研磨並みの面粗度を両立していることが特徴です。

バニシング加工の使用用途

切削加工で加工した金属製品の表面には、微細な山形状の凹凸が発生します (挽き目) 。バニシング加工は、金属ワークの内面・外面・端面などに発生するこのような凹凸を押しならして、滑らかにする目的で行われる加工です。精密機器や自動車業界等の様々な分野で使用されています。

内面・外面・端面などに対して加工を行うことができますが、外径では、シャフトなどの軸形状の金属や、高圧油圧部品などのリング状の金属部品の外周面上などに適しています。また、半導体製造装置用継手のように、金属同士の接触によって流体をシールする機構などにも行われる加工です。この場合、表面粗さの改善と加工面の硬度向上を同時に目的とします。

バニシング加工の原理

1. 概要

外径等のバニシング加工では、旋盤加工機にローラバニシングツールを使用し、切削加工後の表面を押しならします。切削加工ではなく表面を塑性変形させる加工であり、切屑が出ません。更に、表面の硬度が上昇するという特徴があります。加工後の表面は鏡のように反射し、滑らかな仕上がりです。

内径におけるバニシング加工では、穴あけ加工と同時にバニシング加工を行うバニシングドリルが使用されます。

2. バニシング加工の特性

研磨で表面を滑らかにした場合、削るという特性の都合上小さなギザギザが残りますが、バニシング加工では山をならすことで表面が滑らかな形状になります。そのため、ほかの部品と擦れたときに相手を傷つけにくい表面に仕上がることが特徴です。その他、バニシング加工の特性には下記のようなものがあります。

  • 切り屑が出ない
  • 面粗度と強度が向上する
  • 汎用性が高く、使い勝手が良い
  • 納期が短く済み、効果的な方法で仕上り面を得ることが可能 (研磨加工との比較)
  • 粗さの大幅な低減(用途によって90%以上の低減が可能)
  • 表面の硬度化・耐摩耗性・耐食性の向上
  • 加工公差の向上

バニシング加工の種類

バニシング加工に用いられるツールにはいくつかの種類があります。

1. ローラーバニシングツール

ローラーバニシングツールは、旋盤加工機に取り付けてバニシング加工を行う代表的なバニシングツールです。外径、端面、テーパや穴など、様々な形状に対するツールがあります。

ローラーの圧力を調整することで、さまざまな研磨レベルを実現することができます。サイズや材質 (鉄系・非鉄系) を問わず、さまざまな製品に対応可能です。

2. バニシングドリル

バニシングドリルとは、穴あけ加工と同時にバニシング加工を行うことができるドリルです。

切削による穴加工を行いながら、金属の凹凸面を押しつぶして面をならします。ねじれのないストレートな形状が一般的で、チゼルで切削加工をしながら、ガイドと呼ばれる部分が追従するようにバニシング加工を行っていく仕組みになっています。

3. ダイヤモンドバニシング

ダイヤモンドバニシングは、単結晶ダイヤモンドと加工に適切な圧力を保つスプリング機構を組み合わせてバニシング加工を行うバニシングツールです。単結晶ダイヤモンドは、高硬度で摩耗に強い素材であり、ダイヤモンドバニシングは、ダイヤモンドのチップを素材に押し当てて、旋盤後の挽き目の山をならします。ダイヤは再研磨を行うことができます。内径用、外径用など様々な形状・種類があります。

4. その他

その他、特殊なバニシングツールに、Oリング溝仕上げ加工用バニシングツールや、ディープローリング加工を行うことのできるローラーバニシングツールなどがあります。ディープローリング加工とは、シャフト形状の段差部分など、疲労破壊が懸念される部位に圧縮残留応力を持たせて疲労強度を向上させるためのバニシング加工です。

欠陥検査装置

欠陥検査装置とは

欠陥検査装置とは、製品や部品の欠陥を検出するための検査装置です。

特に外観の欠陥検査を行うための装置は、外観検査装置と呼ばれる場合もあります。装置の一部は、赤外線などを用いることで内部欠陥を検出することが可能です。金属製品や樹脂製品の欠陥検出の他、OCRなどを用いて食品パッケージの欠陥を検出することなどにも使用されます。

欠陥検査装置の使用用途

欠陥検査装置は、機械、電子・半導体、金属、食品など様々な製造分野で利用されている装置です。主に下記のような欠陥の検出に使用されます。

  • 製品表面のキズや汚れ
  • 布に付着した汚れや縫製不良
  • 樹脂やゴムの成型時に発生する欠けやバリ
  • 塗装面の変色や色ムラ
  • 食品パッケージなどの印字検査 (OCR) 、穴や異物

また、このような欠陥検査が行われる製品には、下記のようなものがあります。

  • リチウムイオン二次電池の部材 (電極、電極セパレータ)
  • ベアリング・ボルト・ネジ
  • プリント基板
  • 半導体ウエハ
  • フラットパネルディスプレイ⽤の各種フィルム
  • タッチパネル、タッチデバイス
  • 紙・不織布・炭素繊維
  • 板ガラス
  • FCCL用の金属箔
  • 自動車用の鋼板
  • リードフレーム
  • 圧延・電解銅箔
  • アルミ材
  • 食品パッケージ
  • 医薬品容器

欠陥検査装置の原理

1. 欠陥検査装置で検出される欠陥の例

  • 傷やクラック
  • 欠け・バリ
  • 汚れや凹み
  • 寸法異常
  • 位置・角度の異常
  • 異物付着・混入
  • 形状異常
  • 変色
  • 印字不備 (OCR検査)

2. 欠陥を検出する仕組み

欠陥検査装置が欠陥を検出する仕組みには、画像処理方式やレーザースキャン方式などがあります。

画像処理方式では、CCDカメラなどのカメラで撮影した画像データを処理して欠陥検査を行います。あらかじめ良品の情報を登録しておき、撮影したデータと照合して合否判定を行う仕組みです。また、AIを用いて不良検出を行う仕組みも近年取り入れられています。

レーザースキャン方式では対象物に光学レーザーを照射し、反射光の分析によって表面の傷や欠陥を検査します。一般的に、画像処理方式よりも高精度な検査が可能です。また、内部欠陥の検出が可能な製品もあります。レーザーの種類には、平行ビーム型とレーザー集光型、可変焦点方式があります。平行ビーム型が安定した照射が可能であるのに対し、レーザー集光型は検査精度が高いことが特徴です。可変焦点方式は、集光スポットが安定しないというレーザー集光型の弱点を克服しています。

欠陥検査装置の種類

欠陥検査装置には、検査対象物によって様々な種類があります。半導体産業で使用されるウエハ欠陥検査装置や、電子部品用検査装置、不織布向け欠陥検査装置、パッケージの検査などに使用されるOCR文字検査装置などがあります。

1. ウエハ欠陥検査装置

ウエハ欠陥検査装置は、半導体産業で使用されるウエハの欠陥検出に特に特化している欠陥検査装置です。

半導体ウエハには、同じパターンの電子デバイスが並んで製造されます。欠陥は、異物などのごみに起因してランダムに発生することが多く、特定の場所に繰り返し発生する確率は、非常に低いと考えられます。典型的なウエハ欠陥検査装置であるパターン付きウエハ検査装置は、隣接するチップのパターンの画像同士を比較し、その差分を取ることで、欠陥を検出します。

一方、パターン無し検査装置は、異物や欠陥にレーザー光線が当たると、光が散乱することを利用し、レーザー照射と散乱光の検出によって欠陥検出を行います。主に、ウエハメーカーによる出荷検査、デバイスメーカーにおける受け入れ検査、などに使用される装置です。

その他、赤外光による内部欠陥検査を行うことができる装置もあります。

2. 電子部品用欠陥検査装置

電子部品用欠陥検査装置では、各種基板やイメージセンサなどの外観検査を行う装置などがあります。

セラミック基板に発生するクラックや汚れ、オーバーエッチング、パターンショート等の欠陥検査に特化した装置や、出荷前イメージセンサ製品の素子面・ケース内面・ワイヤ接合部・ガラス面それぞれに適した欠陥検査装置などがあります。これらの装置では、微細な異物や欠陥の検出や、膨れや凹みといった立体的な欠陥も検出することが可能です。