自動乳鉢

監修:株式会社石川工場

自動乳鉢とは

自動乳鉢とは、乳鉢と乳棒をモーターで動かして硬質物質や分析試料などを粉砕、混合、分散、混練する機械です。

電子部品材料分野、砥石分野等の各種産業や医学・理科学分野における実験・研究の現場で活用されています。ポットミルなどに比べて、小さな粉砕エネルギーであることが特徴で、その特徴により、電子部品材料分野では、メカノケミカルやメカニカルアロイングが達成できます。また、粉砕中の試料を肉眼で容易に確認することができます。

自動乳鉢は単に手擂りの代替手法として用いられるだけではなく、従来になかった事象を発現させ、新たな材料開発に寄与するものです。さらには、量産まで見据えた工法であるため、量産立ち上げ時間も短縮できます。

自動乳鉢の使用用途

1. 概要

自動乳鉢は、食品、電子部品材料、金属化学などの産業分野や、各種分野の試験研究用途で使用されている機器です。研究では、特にメカノケミカル反応やメカニカルアロイング反応を用いた状態で使用されることもあります。具体的な活用事例には、

  • 全固体電池の試作とその評価
  • ゼオライトの粒子分布の擂潰時間依存性の評価
  • ガラス粉砕実験
  • 磁器杵を原材料とした磁器ナノ粒子の生成

などがあります。

2. 分野と被加工物

自動乳鉢は多くの分野で活用されており、分野と被加工物には下記のような例があります。

  • 理化学: 金属・ガラス・カーボン・シリカなどの各種ペースト、スラリー、カーボンナノチューブ、磁気材料
  • 電気・電子: 導電性インク、半導体材料 (導電性接着剤など)、各種センサー素材、フェライト磁石素材、ハンダ材、セラミック材料 (チタン、ジルコニア、アルミナなど) 、パッケージ封止材
  • 電池用材料: 全固体電池の電極材、リチウム電池電解質
  • 医療・医学: 歯科材料 (義歯素材など) ・人工骨、軟膏材、香料、漢方薬、健康食品
  • 塗料: 塗料用粉末、インク材料、染料、顔料、絵具・漆材、七宝釉薬、朱肉、墨汁
  • 樹脂・油脂: 触媒、接着剤添加物、グリース添加物、火薬類
  • 窯業・金属・ガラス: ファインセラミック粉、貴金属粉末及び各種金属粉末、カーボン粉末、ガラス添加物、粉末治金、酸化アルミナ、鉱物試料、陶芸釉薬
  • 砥石・研磨剤: 砥粒、研磨剤、ダイアモンド、ボロンナイトライド、シリコンカーバイド、コランダム
  • 化粧品: ファンデーション、色材、金属粉
  • 食品: 蕎麦・うどん、菓子材料、製餡、豆腐、こんにゃく、練り物 (蒲鉾・はんぺん、竹輪)、ハム、カレールウ・粉末スープ、すりごま・味噌すり、ピーナッツペースト

自動乳鉢の原理

自動乳鉢は、鉢もしくは乳棒をモーターによって回転させ、粉体の粒子を細かくすり潰ししながら、同時に均一に混ぜ合わせて分散させ、混練する機械です。材料を擂り潰しながら、同時に撹拌も行えるのが大きな特長になります。ポットミルなどに比べて、粉砕エネルギーが小さいため、時間をかけて、少しずつ繰返し行われます。

このことにより、被加工物に発熱や衝撃などの負荷を与えず、意図しない変質を防ぎながら、均一に混練することが可能です。また、メカノケミカル現象やメカニカルアロイングなども発現し、ポットミル等ではできない加工が可能となります。

機構には大きく分けて2つあります。乳棒と乳の両方が回転するタイプと、乳棒のみが自転公転をするタイプです。乳棒と乳の両方が回転するタイプの装置は、乳鉢側の装置内部に強力なモーターが設置されて乳鉢が回転し、乳棒の垂直圧力と壁面圧力によって、強い摩擦力と圧力で試料を粉砕します。

乳鉢用、乳棒用の2つのモーターが必要になります。乳棒のみが自転公転するタイプの装置は、乳鉢と乳棒の両方が回転するタイプと同様の強い摩擦力と圧力が発生します。また、ギアの設計が必要にりますが、モーターは1つでよいので部品点数は少なくなります。

乳棒が自転公転回転するタイプは、ギアの組み合わせにより、乳鉢は固定されてますが、乳棒が公転しながら自転する複雑な動きとなります。杵筒にばねが内蔵されているため、圧力をかけながら撹拌・擂潰が行われます。

自動乳鉢の種類

自動乳鉢には様々な種類の製品があります。鉢と乳棒の素材も製品によって異なり、小型機以上の大きさでは、鉢は花崗岩、磁器、砲金、ステンレスなど、乳棒 (杵) は木、テフロン、磁器などです。微量機では、メノウ、アルミナ、炭化タングステンなどが鉢・杵共に使用されます。乳棒が2軸式になっている製品では効率よく粉砕が可能です。

また、製品によっては、自動乳鉢に真空機能や加熱機能などの付帯機能があるものもあります。真空機能のある製品では、真空/減圧雰囲気、アルゴンや窒素ガスなどの不活性ガス置換雰囲気で濃縮、乾燥、脱泡、撹拌擂潰処理を行うことが可能です。

酸化を避けたい材料処理など、嫌気性素材に最適です。兼ねる機能が付加されたものは、通常温度では非常に粘度が高く、混錬が出来ないものも、加熱することにより、粘度が小さくなり、混錬が可能となります。また、微量機はグローブボックス内で使用することのできる製品もあります。

大きさ別では、微量機 (加工容積0.05 L程度) ・小型機 (加工容積0.2〜7.0L程度) は実験机の上に乗せて実験が可能なため、研究開発向けに最適です。大型機 (12〜150L) は、また、一度に多くの材料の処理が可能なため、量産用として使用されることが多くなっています。

本記事は自動乳鉢を製造・販売する株式会社石川工場様に監修を頂きました。

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