監修:株式会社ユーテクノロジー
IR照明とは
IR照明とは、赤外線領域の波長の光 (赤外光) を発光する照明です。
赤外線 (IR) は、可視光線の赤色より波長が長く (約800nm以上) 、人間の肉眼で見ることはできません。赤外線はカメラなどのセンサーで検知され、IR照明は特に赤外対応レンズ・カメラと併用して使用され、赤外線の透過性や水分に吸収される特性を用いた製品検査に利用されています。リング照明、バー照明など、様々な形状の種類があります。
IR照明の使用用途
赤外線は、可視光では検出が難しいものを検出したり、物質を透過して撮像できるため非破壊検査に用いられたりします。また、可視光域に化学反応してしまう物質の検査にも赤外線撮影は有効です。
IR照明はこのような赤外線の特性を用いた検出において、その光源として使用される照明です。各種産業的検査の他、監視カメラなども赤外線カメラは使用されており、夜間や低照度環境において、赤外線照度を補う目的でもIR照明が使用されます。主な検査には下記のようなものがあり、半導体、ウェハー、電子基板、太陽電池、農産物、食品、偽造防止、工程品質管理などの分野で活用されています。
- 基板やシリコンウエハの検査
- パッケージ製品の内容物検査や異物検出
- ブラシ製品などの樹脂部分内部の検査
- 完成品や内容物の検査
- 工業製品・食品の水分の可視化・検出
- 基板やシリコンウエハの検査
- 液体の透過による内部の異物検査
- 表面の印刷や塗装面を透過しての非破壊検査
IR照明は、これらの検査における光源として利用されています。また、波長域が狭いため、一般的なランプと比較しても照射熱が少ないため、熱によるダメージを受けやすい対象物の取り扱いにも適しています。
IR照明の原理
IR照明には、主に赤外線LEDが使用されています。赤外線LEDは発光ダイオードの一種です。赤外線LEDで照射される赤外線は、赤外線の中でも特に近赤外線 (NIR) と呼ばれる波長740nm~1000nmの領域や、短波赤外波長 (SWIR) と呼ばれる1000nm~1700nmの領域の光です。一般的にSWIRのほうが透過性が良いとされています。
紫外光や可視光と比較すると赤外光は散乱率が非常に小さいため透過率が高くなります。物質の中には、可視光を通さないものでも赤外線を透過するものが在るため、赤外線は透過検査に利用することができます。シリコンウエハ・パッケージ・液晶・活字を透過して検査・観察したり、有色液中の状態を把握することが可能です。
また、水は1450nm付近の波長を吸収するため、水分の有無を利用する検査に適しています。850nm波長の光では水を透過してしまいますが、1450nmの光は水に吸収されて黒く映ります。
IR照明の種類
IR照明には様々な種類の製品があります。光源にはLEDが使用される事が多く、製品によってピーク波長は異なっています。一般的には、780nm、850nm、940nm、1050nm、1100nm、1200nm、1300nm、1450nm、1550nm、1650nmなどの波長の種類があります。一般的なCMOSカメラの感度がおおよそ1000nmまでということもあり、波長850nmの照明は特に多くの製品が販売されています。
リング照明、バー照明、面発光型照明、ドーム型照明、スポット照明、ファイバー照明、光源照明、投光照射照明などの形状があり、用途に合わせて使い分けることが可能です。スポット照明や投光照射照明は、遠距離から明るく集光照射することに適した製品と、近距離から広範囲を照射することに適した製品などの種類があります。
また、その他にも、赤外線監視カメラで広い範囲を監視したい場合などには、赤外線投光器が用いられています。
本記事はIR照明を製造・販売する株式会社ユーテクノロジー様に監修を頂きました。
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