バニシング加工とは
バニシング加工とは、旋盤加工機にバニシングローラーという特殊工具を装着し、表面を削らずに面を押しつぶして塑性変形によって滑らかにする加工です。
内面・外面・端面などに対して行うことができ、特に、外径では、リング形状の製品で、外径面に高い面粗度を求められる製品などに施されている加工です。バニシングとは英語の「burnish:磨く・光らせる」を由来としています。旋削並みの加工精度と研磨並みの面粗度を両立していることが特徴です。
バニシング加工の使用用途
切削加工で加工した金属製品の表面には、微細な山形状の凹凸が発生します (挽き目) 。バニシング加工は、金属ワークの内面・外面・端面などに発生するこのような凹凸を押しならして、滑らかにする目的で行われる加工です。精密機器や自動車業界等の様々な分野で使用されています。
内面・外面・端面などに対して加工を行うことができますが、外径では、シャフトなどの軸形状の金属や、高圧油圧部品などのリング状の金属部品の外周面上などに適しています。また、半導体製造装置用継手のように、金属同士の接触によって流体をシールする機構などにも行われる加工です。この場合、表面粗さの改善と加工面の硬度向上を同時に目的とします。
バニシング加工の原理
1. 概要
外径等のバニシング加工では、旋盤加工機にローラバニシングツールを使用し、切削加工後の表面を押しならします。切削加工ではなく表面を塑性変形させる加工であり、切屑が出ません。更に、表面の硬度が上昇するという特徴があります。加工後の表面は鏡のように反射し、滑らかな仕上がりです。
内径におけるバニシング加工では、穴あけ加工と同時にバニシング加工を行うバニシングドリルが使用されます。
2. バニシング加工の特性
研磨で表面を滑らかにした場合、削るという特性の都合上小さなギザギザが残りますが、バニシング加工では山をならすことで表面が滑らかな形状になります。そのため、ほかの部品と擦れたときに相手を傷つけにくい表面に仕上がることが特徴です。その他、バニシング加工の特性には下記のようなものがあります。
- 切り屑が出ない
- 面粗度と強度が向上する
- 汎用性が高く、使い勝手が良い
- 納期が短く済み、効果的な方法で仕上り面を得ることが可能 (研磨加工との比較)
- 粗さの大幅な低減(用途によって90%以上の低減が可能)
- 表面の硬度化・耐摩耗性・耐食性の向上
- 加工公差の向上
バニシング加工の種類
バニシング加工に用いられるツールにはいくつかの種類があります。
1. ローラーバニシングツール
ローラーバニシングツールは、旋盤加工機に取り付けてバニシング加工を行う代表的なバニシングツールです。外径、端面、テーパや穴など、様々な形状に対するツールがあります。
ローラーの圧力を調整することで、さまざまな研磨レベルを実現することができます。サイズや材質 (鉄系・非鉄系) を問わず、さまざまな製品に対応可能です。
2. バニシングドリル
バニシングドリルとは、穴あけ加工と同時にバニシング加工を行うことができるドリルです。
切削による穴加工を行いながら、金属の凹凸面を押しつぶして面をならします。ねじれのないストレートな形状が一般的で、チゼルで切削加工をしながら、ガイドと呼ばれる部分が追従するようにバニシング加工を行っていく仕組みになっています。
3. ダイヤモンドバニシング
ダイヤモンドバニシングは、単結晶ダイヤモンドと加工に適切な圧力を保つスプリング機構を組み合わせてバニシング加工を行うバニシングツールです。単結晶ダイヤモンドは、高硬度で摩耗に強い素材であり、ダイヤモンドバニシングは、ダイヤモンドのチップを素材に押し当てて、旋盤後の挽き目の山をならします。ダイヤは再研磨を行うことができます。内径用、外径用など様々な形状・種類があります。
4. その他
その他、特殊なバニシングツールに、Oリング溝仕上げ加工用バニシングツールや、ディープローリング加工を行うことのできるローラーバニシングツールなどがあります。ディープローリング加工とは、シャフト形状の段差部分など、疲労破壊が懸念される部位に圧縮残留応力を持たせて疲労強度を向上させるためのバニシング加工です。