スタティックミキサー

監修:株式会社ジェイエムエス

スタティックミキサーとは

スタティクスミキサーとは、駆動部のない静止型混合器です。

各種流体 (液体・気体・スラリーなど) に適用され、輸送配管のライン内に設置して使用されます。ラインミキサーと呼ばれることもあります。分散、溶解、乳化、反応などを効率よく行うことができ、食品や化学薬品、医薬品、半導体原料など幅広い分野で使用されている装置です。動力が不要であるため、省エネルギー化にも効果があります。

スタティックミキサーの使用用途

スタティクスミキサーは、食品・飲料、水処理、化学、医薬品、半導体など様々な分野で使用されている装置です。

1. 水処理

水処理分野では、スタティクスミキサーは下記の用途で使用されます。

  • pH調整
  • エアレーション
  • 凝集剤混合
  • 次亜塩素酸ナトリウムによる上水の滅菌
  • 薬品の添加注入

2. 化学・製紙

化学分野では製品製造における混合希釈や、反応用途で主に使用されています。主な用途は下記の通りです。代表的な製造物では、水とアンモニアの混合物によるアンモニア水の製造があります。

  • 原料の混合希釈 (ガスの混合・液体原料の希釈)
  • 添加剤等の混合
  • 原料・中間原料の加熱、冷却
  • 樹脂の重合反応
  • 均質化
  • 温度均一化
  • SCR脱硝設備の窒素酸化物の還元促進

また、紙製造・パルプにおいても化学分野と類縁の用途として、下記のような用途があります。

  • 薬液の希釈
  • 製紙用澱粉スラリーの糊化、直接加熱
  • 温水の製造
  • 塩素ガスによるパルプの漂白
  • 次亜塩素酸カルシウムの製造

3. 食品

食品分野は、スタティクスミキサーの主要な用途の一つです。飲料、調味料や酒など、あらゆる流体に使用されています。具体的な用途には下記のようなものがあります。

  • 原料クリームなどの混合
  • 原料の直接加熱
  • 加熱殺菌、冷却
  • 洗浄用温水の製造
  • 炭酸ガス等の吸収

4. 医薬品・化粧品

医薬品などの製造においても、前述の分野と同様に洗浄用温水の製造や原料の希釈混合などにスタティクスミキサーは用いられます。その他、特有の用途としては、

  • 回収酵母の加熱失活
  • ペースト、ジェルの加熱、冷却

があります。

5. 電子・半導体

電子半導体分野におけるスタティクスミキサーの主な用途は下記の通りです。基本的には、上述の分野と同様、希釈混合に用いられています。

  • ガス混合
  • 原料調合
  • 粘度調整
  • スラリー原料等の沈殿防止 (リチウムイオン電池など)
  • 純水の加熱

スタティックミキサーの原理

スタティクスミキサーの配管内にはエレメントと呼ばれる、長方形の板を180度ねじった部品が挿入されており、スタティクスミキサー内に入った流体は、このエレメントにより転換・反転させられ、効果的に混合されます。エレメントには、ねじれの方向により、右エレメントと左エレメントがあります。

エレメント内の流体が混合されるメカニズムは下記の通りです。流体が回転・転換するため、動力が無いことが特徴です。

  • 転換: エレメントのねじれに沿って管中央部から管壁へ、管壁から管中央部へと流れが転換します。
  • 反転: 1エレメントごとに回転方向が替わり、慣性力の反転により乱流撹拌します。

構造がシンプルであることから内部の洗浄が容易です。また、可動部品が無いため、消耗部がほとんど無いことも特徴の1つと言えます。

スタティックミキサーの種類

混合攪拌するという基本機能はスタティックミキサーに共通ですが、直接加熱・熱交換・反応などのプロセスによって使用するスタティックミキサーの種類が異なります。

1.ケニックス型スタティックミキサー

捻じれた長方形の板をエレメントとして配管内部に組み込んだインライン式ミキサーです。注入流体を分割・転換・反転作用によって混合させます。

2.MES型スタティックミキサー

2種の混合エレメントを積層し、ブラインド板と中間板ではさんだ構造をしたインライン式ミキサーです。多層の混合エレメントで形成された複雑な経路を流れることで、分割・合流を繰り返すことにより、混合が促進されます。

3.JMSプレート型スタティックミキサー

プレート開口部の後方に形成されるカルマン渦によるかく乱効果を利用したインライン式ミキサーです。材料を注入する場合は混合板の出口で供給され、かく乱された流れによって混合させます。

本記事はスタティックミキサーを製造・販売する株式会社ジェイエムエス様に監修を頂きました。

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バッテリーシミュレータ

バッテリーシミュレータとは

バッテリーシミュレータとは、バッテリーの動作を模擬して動作する電源です。

あらかじめ設定した電池特性に基づいて充電や放電を疑似的に動作させることができ、各種機器の動作試験に使用されます。任意の電池状況を設定することができるため、仮想のバッテリーをシミュレーションすることは勿論、 敢えて低充電状態のバッテリーや異常なバッテリー使用下の機器動作の確認もすることが可能です。実バッテリーでは再現が困難な状況を繰り返して再現することにも使用されます。

放電試験などのチャート

また、後述するマイクログリッドの様なバッテリーを利用したBESS(バッテリーエネルーギーストレージシステム)の試験においては、電力系統の模擬に用いられるグリッドシミュレータと呼ばれる回生型交流電源と併用してバッテリ-シミュレータが使用されます。その他にも、グリッドシミュレータはパワーコンディショナ、インバータ給電、UPSなどのグリッド特性を試験することが可能です。

バッテリーシミュレータの使用用途

バッテリーシミュレータの主な使用用途は、

  • バッテリーが使用されている機器一般において各種バッテリーの実際の動作の電流・電圧を模擬的に再現します。

    ※アプリケーションによってバッテリーパックの使用エリアが定義されており、例えばEVが定義するバッテリーSOC使用エリアは0〜90%、HEVは20〜70%と定義されています。リチウムバッテリーは事故による危険度が高いため、BMSで過電圧、低電圧(OVP, UVP)を監視、管理しており、通常のバッテリー使用エリア管理では過充電圧、過放電圧、上限動作電圧、下限動作電圧、100%-0%充放電圧の6つの重要電圧ポイントがあります。

バッテリーシミュレーション再現性試験チャート

  • 電圧の歪みや周波数の変動などが想定される電源系統の模擬動作をするグリッドシミュレーターがあり、バッテリーシミュレーターと併用してBESSなどの動作試験に用いられます。

1. バッテリーのシミュレーション

バッテリーシミュレータは、実際のバッテリーの電圧・電流の挙動をシミュレートし、家電製品や産業用電子機器の開発などに生かされています。シミュレーションできるバッテリーの種類はバッテリーシミュレータによりますが、リチウムイオン電池、 ニッケル水素電池、 ニッケル・カドミウム電池、 鉛蓄電池、 NiMh-12V組電池など、多岐に渡ります。主な試験・検証項目は下記の通りです。

  • 各種電池の出力模擬
  • 低充電状態によるシャットオフ電圧の検証
  • 電池の出力模擬
  • モバイル機器の開発における試験
  • バッテリー寿命の推定
  • 異常状態のバッテリーの模擬動作
  • インバータやコンバータなどの、電力を効率的に使う機器の開発や評価

2. 自動車分野分野

バッテリーシミュレータは、自動車バッテリーの模擬動作に特化して使用されることもあります。電圧・電流の立ち上がりをシミュレートし、

  • バッテリーパックやモジュールの充放電試験、寿命の推定 (ライフサイクル試験)
  • 燃料電池試験
  • EV/HEV用モータやインバータの試験
  • パワートレインの耐久試験
  • NVH試験
  • 高電圧バッテリーパックのエミュレート
  • eモータ、インバータ、e-Axle試験
  • スーパーキャパシタ試験

などの試験に用いられます。モータシミュレータや高速モータベンチと組み合わせて使用することも可能です。

3. エネルギー・マイクログリッド分野

バッテリーシミュレータの中には、マイクログリッド試験における電力供給や、その他、パワーコンディショナ、インバータ給電、UPSなど、様々な電力供給のシミュレーションに用いられるものがあります。この電力系統を模擬する多くの製品は、グリッドシミュレータと呼ばれています。

マイクログリッドとは、特定の限定エリア内でエネルギー供給施設 (発電・蓄電) と消費施設とをネットワーク化し、エネルギーを地産地消する仕組みです。マイクログリッド試験は、マイクログリッドを実装する前に行われる試験であり、バッテリーシミュレータ (グリッドシミュレータ) は、マイクログリッド試験における電力供給に使用されます。

マイクログリッドは、太陽光発電・風力発電・コージェネレーション・燃料電池などの発電設備および蓄電設備を複数組み合わせ複数組み合わせた電力予測が難しい仕組みであることから、複雑で信頼性の高い制御システムが必要です。

バッテリーシミュレータ (グリッドシミュレータ) は、これらの発電装置の模擬動作を行い、マイクログリッド試験に要求される電圧歪みと周波数変動などの様々な試験条件に対応して電力供給を行います。その他にも電力をグリッドに送る機能を持つ製品 (V2G 電気自動車の充電スタンド、蓄電システム) などの模擬動作にも使用されています。

バッテリーシミュレータの原理

バッテリーは、残容量によって出力される電圧や電流が変化する性質があります。バッテリー シミュレータは、このようなバッテリーの動作を模倣させることができます。

バッテリー負荷試験チャート

バッテリーシミュレータの多くは、充電と放電の両方を模擬することが出来るように、直流電源と電子負荷が一体になった装置になっています (回生型直流電源) 。 バッテリーシミュレーションでは、バッテリーの基本特性であるI-Vカーブ特性を元に動作を行います。

充電モードのシミュレーション (電子負荷モード) 時は、バッテリーシミュレータ機能付きの回生電源を利用して、消費電力をACラインに戻すことが可能です。直流電源と直流電子負荷の両方の機能を合わせもっているため、インバータやパワーコンディショナ、双方向のDC-DCコンバータなどの評価の際にも接続を切り替えることなく動作させることができます。

バッテリーシミュレータの種類

前述の通り、バッテリーシミュレータは、製品によって用途・機能が異なります。また、バッテリーシミュレータだけでなくバッテリーテスターとしても使える製品もあります。製品によってはAC入力を単相入力または3相入力に切り替えることも可能です。

計測機能を備えた製品では、出力電圧、電流、ピーク電圧及び電流、有効電力などの計測を行うことができる場合があります。また、製品によってGUIは大きく異なっています。用途に合わせて適切なものを選定することが必要です。

バッテリーシミュレータのその他情報

1. マイクログリッドと環境

近年の自然災害の激甚化によって、既存の系統電源供給では大規模かつ長期にわたる停電が懸念されています。小規模電力グリッドであるマイクログリッドはこのような問題を解決するシステムとして期待されています。

例えば、地震や台風で既存の系統電源が停電した場合もエリアごとのグリッドで電力供給を行うことができる他、夏期における電力不足に対して、太陽光パネル+蓄電システムの分散式グリッドを用いてエリアの電力不足を解消することが可能です。災害対応力強化として、マイクログリッドを構築する流れが自治体などを中心として進められています。

また、エリア内でエネルギー供給側とエネルギー消費側をネットワーク化し、エネルギー消費量に合わせて電力の供給を最適化されるよう制御することが可能です。また、発電時に発生するコージェネレーションの排熱を冷暖房や給湯に利用することで、熱エネルギーを有効利用することも可能であると考えられています。

紙成形機

紙成形機とは

紙成形機とは、紙を素材として、商品パッケージなどの立体を成形したり、また、成形と同時に製品包装を行ったりする機械です。

紙容器成型機、紙容器成型充填機などと呼ばれる場合もあります。工具、部品、食品など、様々な製品の包装に使用されており、容器、トレーなどの各種包装・梱包資材や、緩衝材などを製造することに活用されています。また、紙容器製造は、脱プラスチック的観点でも注目されている技術です。どろどろのパルプを成形するパルプモールド技術を利用したものが多いですが、中には乾燥した状態の紙を材料として成形する装置もあります。

紙成形機の使用用途

紙成形機の主な使用用途は、各種包装・梱包資材、緩衝材の製造です。カップなどの容器や、パッケージ、トレーをはじめとする様々な立体資材が製造されています。また、資材製造の過程で、製品充填も同時に行われることもあります。下記は製造される主な包装資材の例です。

  • 工具、部品、食品用などのトレー、容器
  • 紙製ブリスターパック
  • 製品の固定をおこなう緩衝材
  • 紙カップ
  • 飲料、液体食品、酒類、調味料などの紙パック

食品用容器・トレーでは、たまごのパックや果物のケースなどのやや複雑な形状の容器も製造することが可能です。また、非食品では、化粧品、文具、スポーツ用品、トイレタリー用品などの包装・梱包資材の製造にも使用されています。液体を充填する紙パックでは、

  • 牛乳をはじめとする各種乳飲料
  • 清涼飲料 (ジュース、茶類、コーヒーなど)
  • 液体食品 (生クリームやスープなど)
  • 酒類
  • 調味料・その他

など、幅広い飲料・食品に対応しています。また、こうした紙容器は、プラスチックに代替ができる素材として、脱プラスチック観点でも注目されています。

紙成形機の原理

紙成形機は、水分を含んだどろどろのパルプを成形して製造するパルプモールドと呼ばれる技術を用いた装置と、乾燥した状態の紙材を成形して製造する装置があります。

1. パルプモールド

パルプモールド製法では、大きく分類して下記の工程で製造されます。

  1. 溶解: 水の中に古紙またはバージンパルプを入れてかき混ぜ、どろどろになるまで溶解させます。
  2. 異物除去: どろどろになったパルプの中から紙以外のゴミを取り除きます (紐、金具、ビニールなど) 。
  3. 成形・乾燥: 金型に流し込み成形し、水分を蒸発させて固めます。

成形・乾燥の加工工程にはいくつか種類があり、

  • 乾式パルプモールド: 金型で形を整えた後に乾燥機を用いて乾燥を行う
  • 湿式パルプモールド: 金型の中で形を固めながらそのまま乾燥させる
  • パルプ射出成形: パルプをペレット状にしたものを金型に射出する
  • パルプ発泡成形: 発泡材を配合したパルプ原料を金型内に充填し加熱する

などがあります。乾式パイプモールドでは、表面がざらざらした表面をもち緩衝性がある製品が完成し、湿式パルプモールドでは、表面が滑らかな製品が完成します。射出成形は特に複雑な形状加工が可能であることが特徴です。また、パルプ発泡成形は、成形品は気泡が充満するため、他のパルプ成形品に比べ軽量で緩衝性が高いという特徴があります。

2. 乾燥紙材成形

パイプモールドと対象的に、乾燥した状態の紙材を成形する仕組みの装置も使用されています。ロール状の原紙を成形する仕組みや、シート状の紙素材を複数層重ねて加熱や圧着を行う仕組み、1枚の紙素材を金型で挟み、プレス機械で加熱・加圧して折りたたむ仕組みなどがあります。

乾燥紙材を成形する装置では、乾燥時間がないことや、水の使用量が少ないため特殊な排水処理設備を備える必要がないことなどのメリットが挙げられます。

紙成形機の種類

前述の通り、紙成形機には、用途・仕組みなどの点で様々な種類があります。また、非食品用ブリスターパックや、飲料包装などでは、一つのライン上で包装成形と製品充填が完結するようになっています。

紙筒製造に特化した形状の装置もある他、特に射出成形による成形を行う装置は複雑な成形に向いている装置です。使用する際は、用途・目的・設備環境に合ったものを選定することが必要です。

空調制御

空調制御とは

空調制御とは、オフィスビル・商業ビル・マンション店舗などの空調設備を制御・管理するシステム及びサービスです。

空調は建物における電気使用量の半分前後を占めていると言われています。空調制御は、空調設備の制御をシステム化して効率的に行うことで、省エネルギー・コスト削減につながるシステムです。また、効率的に空調を制御することで、建物内における快適性の向上も可能です。労働環境の改善・生産性向上、顧客満足度のアップなどにも貢献します。

空調制御の使用用途

空調制御は、基本的にあらゆる建物に適用することが可能です。大型の建物で使用されていることが多く、主なものには

  • オフィスビル
  • マンション
  • 小売店舗、商業施設
  • ホテル・旅館
  • 医療機関・福祉施設
  • 学校・教育施設
  • 工場
  • 物流センター
  • データセンター

などがあります。空調制御を行うことにより、空調施設の省エネルギー・コスト削減を行うことが可能です。また、建物内における快適性を向上させることもできるため、労働従事者及び顧客にとって快適な環境を作り出すことも可能です。生産性向上や顧客満足度の向上などを見込むことができます。

特筆すべきケースとしては、例えば、食品製造工場においては、食品の品質を保つ目的で空調制御による温度・湿度管理が行われます。医療施設では患者の快適性を向上させる目的で温度設定が行われる他、院内感染対策のために循環機構・フィルターなどがカスタマイズされる場合もあります。

空調制御の原理

1. 概要

空調制御の基本構成は、温度・湿度などの環境パラメーターを計測するセンサーと、空調を制御する制御装置です。例えば、室内にワイヤレス温度センサモジュールを設置し、制御用コンピュータで空調室外機を制御する仕組みなどがあります。システムによっては、既存の設備に温度センサーや制御装置を後付けすることが可能です。

センサーから取得したデータを元に、制御装置が空調をコントロールします。温度センサーから定期的にデータを制御装置へ送信することで、快適な温度・湿度を安定的に維持することが可能です。また、クラウドを経由することにより、AIを活用した制御を行うサービスもあります。人流データを加味して制御を行う場合に監視カメラがシステムに組み込まれたり、天気情報サービスなどの情報がビル外のデータとして取り込まれる場合もあります。

2. 機能

空調制御システムの主な機能は下記の通りです。

  • 温度・湿度の制御
  • 風量・風向の制御
  • ネットワークを利用した遠隔制御
  • 室内の監視・モニタリング
  • 温度分布図や電力消費量などのデータ可視化
  • エネルギー効率化、コスト削減

空調制御システムは単に温度管理を行うだけではなく、効率化・可視化・リモート制御などを行う効果もあります。モニタリングでは、「温度分布表示」によって室内で寒くなっている場所、暑くなっている場所、の位置と範囲が可視化されます。また、各空調機の冷却影響範囲を分析して表示することなども可能です。

空調制御の種類

空調制御は、空調設備を制御・管理することで省エネルギー化・コスト削減を図るという基本機能は共通するものの、様々な種類があります。様々な建物・業種に広く対応しているものの他に、オフィスビルに特化したサービスや、多数のサーバーを収容するデータセンターに特化したサービスなどがあります。

また、サービスによって、付帯機能などはバリエーションが様々です。例えば、空調制御と共に照明制御も行うシステムや、部屋の中で局所的な好みの環境を学習して、それぞれの人に合った空調制御を実現するサービスなどがあります。クラウドを経由するシステムではAI制御・深層強化学習が特に盛んに取り入れられ、スマートフォンやタブレットによる遠隔制御もスムーズです。料金については、月額制や買い切りなど、サービスによって異なります。用途に合わせて適切なものを選定することが必要です。

誘導コイル

誘導コイル

誘導コイルとは、電磁誘導により起電力を発生させるために使用されるコイルです。

電磁誘導は、磁束が変動する環境下に導体をおくことで、起電力が生じ、電流が流れる現象です。この現象は、発電機、電動機、変圧器や変成器などの電気機器や、リレーや電磁石などの電気部品のように、コイルを有するものに必ず発生します。

本項の誘導コイルは、これらの機器や部品とは別に、この「磁束が変動する環境」を作り出すための装置として用いられます。別名は、インダクションコイルです。コイルに電流を流すことで磁場を作り出し、起電力を生じさせるだけではなく、磁気エネルギーを熱エネルギーに変換したり、火花などの放電を生じさせることにも用いられます。

誘導コイルの使用用途

1. 教育・研究

誘導コイルは、教育用の理科学実験において、高電圧を得るために用いられます。具体的には、クルックス管、スペクトル管、クロス真空計など各種の放電管の実験と観察に使われます。

歴史的には、真空放電管 (ガイスラー管、プリュッカー管、クルックス管など) の研究に用いられ、電子の発見に貢献しています。これらの装置は、誘導コイルを利用して、真空にしたガラス管の電極に高圧を加え、ガラス管の内部に放電を発生させる仕組みです。レントゲンによって開発された最初のX線装置にも、誘導コイルが用いられていました。

2. 工業的用途

自動車などの点火装置に用いられるイグニッションコイルも誘導コイルの一種です。イグニッションコイルとは、1つのコアと呼ばれる鉄心を軸に、2つのコイル (1次コイルと2次コイル) が巻き付けられた構造をしているコイルです。1次コイルへ電流を流したり遮断したりすることで磁束の変化が生じ、2次コイルに高電圧が発生します。このとき2次コイルに発生した高電圧を利用して自動車のガソリンは着火されています。

日本では1960年代以降、金属の溶解に誘導加熱が使われるようになり、専用のコイルが作られています。

3. 家庭での用途

日本では1974年以降、家庭用の電磁加熱調理器、別名IHクッキングヒーターが普及してきました。

この調理器では、コイルによって発生する交流磁界により、コイルの上方に置いた金属製の調理器具に渦電流を誘起させ、それによる熱で加熱します。

ワイヤレス給電の送電側に用いられるコイルも、誘導コイルです。

誘導コイルの原理

1. 電磁誘導の原理

電磁誘導は、コイルなどの導体を磁束が変化する環境に置くと起電力が発生する現象です。最も簡単な例では、コイルの中に棒磁石を出し入れする現象があります。レンツの法則により、このとき生じる誘導電流は、「外部要因による磁界の変化とは反対向きに磁場を発生させる向き」に流れます。

ファラデーの電磁誘導の法則により、起電力 (V) をε、磁束 (Wb) をΦ、コイルの巻数をNとすると、

ε = -N・(dΦ/dt)

と表されます。

2. 誘導コイルの原理

誘導コイルは、電磁誘導を引き起こすための磁場を発生させる1次コイルのみを指す場合と、1次コイルと2次コイルの2つから構成され、1次コイルに電流を流して生じる磁界の変化により2次コイルに高電圧を発生させるようにした装置を指す場合の2種類があります。

2つのコイルから構成されるものの典型例では、1次コイルと、2次コイルを同じ鉄心に巻いて構成します。通常、1次コイルは巻数が少なく、2次コイルは巻数が多いです。1次コイルに直流電流を流しますが、一定の電流を流している間は鉄心を貫く磁束は一定であり、変動しないため、2次コイルには誘導起電力は発生しません。しかし、1次コイルに流れる電流を流したり止めたりすると、その度に磁束の変化が起き、2次コイルに高圧の起電力が発生します。

誘導コイルの種類

誘導コイルは、「電磁誘導を起こすことで起電力を発生させるコイルである」という点のみによって定義され、個別の規格が定められているわけでは有りません。そのため、用途に合わせた様々な種類の製品があり、あるいは特注で製作してもらうこととなります。

多くのコイルやインダクタ、それらを用いた部品や機器と同様に、コイルの芯には、空芯のものや鉄芯のものがあります。空芯は、透磁率が小さく、磁束が飽和しない特徴があります。一方、鉄芯コイルは透磁率が大きいことが特徴です。

防水板

防水板とは

防水板とは、浸水の恐れがある場所に設置して止水を行うための防災用品・設備です。

集中豪雨や河川の氾濫による水害が予想される地域で、積極的に導入が進んでいます。様々な形状、大きさ、素材の製品があり、多様な建物・施設で利用されている防災用品です。止水板、防水壁などと呼ばれる場合もありますが、特に防水壁は高い洪水水位、広い防水幅に対応できます。

防水板の使用用途

防水板は、主に水害が予想される地域で使用されます。集中豪雨や台風などによる浸水・冠水から建築物や地下施設を守ります。

主な使用場所は、

  • 地下鉄などの地下施設の出入り口
  •  商業施設・店舗の出入り口
  • ビルやマンションの全体防水、又は出入り口部
  • 高齢者施設の出入口
  • 工場の全体防水、又は出入り口部
  • 地下駐車場出入口部
  • 電気室、ポンプ室
  • 変電所、水処理施設などの全体防水、又は出入口部

などです。人の安全を守るのは勿論、工場などにおいては製品在庫や高価な機械などを守るために使用されます。また、地下鉄や地下発電所・地下電源設備などのインフラを水害時にも稼働維持できるよう、インフラや公共性の高い施設でも積極的に導入が進んでいる防災用品です。住宅の入口に簡易的な防水板製品が用いられることもあります。

また、大規模な防水板・防水壁の中には、河川の氾濫の可能性が高い場所に設置されて水害を防いだり、港湾で⾼潮による海⽔の浸⼊を防ぐことに用いられる場合もあります。水害時に各種設備・施設や、個人の財産などを守ることが可能です。

防水板の原理

1. 概要

土嚢は古くより浸水対策として使用されてきましたが、調達や設置は容易ではなく、高い水位にも対応できません。防水板は、パネル状やシャッター状、シート状などの形状をしており、簡単に設置することができます。設置される場所は洪水高さ、防水幅などによりいろいろな選択肢があります。

素材には、ステンレススチール、軽量アルミ合金、ガラスウォール、FRP、特殊合成ゴムシートなどがあります。FRP製は錆や腐食の心配がないという長所があり、シート状の素材は収納時のスペースが少なくて済むことが特徴ですが、経年劣化と言う製品寿命があり、又高い水位には対応できません。

2. 止水性能

防水板の止水性能の基準は、「漏水量」と呼ばれます。漏水量の単位は、主に L/(h・m2) が用いられます。これは、1時間に水圧面積あたりで漏水する水量を意味する値です。防水板の止水性能は、漏水量の大小によって評価することができます。

漏水量を評価する規格はいくつかあります。例えば、JIS A 4716規格は、漏水量によりWs-1~6の等級が定められている規格です。但し、JIS A 4716規格は浸水防止用設備建具型鋼製部材用で、シャッター型降下式とドア型スイング式のみを対象とした規格です。止水性が最も高いWs-6の等級では漏水量が1L/(h・m2) 以下と定められており、最も低いWs-1の等級では漏水量が50L/(h・m2) を超え200L/(h・m2) 以下であることが示されます。

脱着タイプ等の防水板、スライド式防水板は規定外で、相当という設定がありますが、設定浸水高さが1.0mの場合のみの相当等級です。起伏式の設定浸水高さは1.5mとなっています。漏水量は浸水高さにより水圧で大きく変わりますので、実際の想定される浸水高さで検討されることが望ましいと思われます。その他にも耐水圧性能、操作の容易性、開閉性能などの規定があります。

防水板の種類

防水板には様々な形状の製品があります。大きな括りでは、平時より建物などに組み込んで常設するものと、非常時のみ収納場所から持ってきて設置するものとに分けることができます。下記は代表的なものの例です。

1. 起伏式

起伏式は、平時は防水板を床などに埋め込んでおき、水害が予想される場合に起こして使用します。手動と電動がありますが、浸水高さ、防水幅に制限があります。電動の場合、スイッチ一つで作動しますが、災害によっては電源喪失のリスクがあります。

2. スライド式

スライド式は、引き戸のようにスライドさせて使うタイプの防水板です。平時は戸袋などに収納されており、浸水の危険が高まった場合に引き出します。間口の広い出入り口などに向いており、手動と電動がありますが、浸水高さ、防水幅に制限があります。

3. 脱着・組立解体式

脱着式の防水板は、普段は倉庫などに保管しておき、必要な時に設置します。製品によって固定方法が異なり、支柱や床レールにパネルを差し込んで固定するものや、開口部に金具で固定するものなどがあります。連結したり2段重ねにするタイプと、多段式に積上げ、中間柱を建てて延長し広い防水幅をカバーするタイプがあります。多段式は要望される現場の洪水高さに合わせることができます。中間柱が取り付けられない現場では天井から支えるタイプや独立式柱で支えるものもあります。

4. シート式

止水シートや防水シートなどと呼ばれるシート式も、広義では防水板の一種に分類されることもあります。シート式の長所は、軽く、収納が手軽という点です。床下などに収納しておいて引き上げるものや、平時は別の場所に保管しておくものなど、いくつかの種類があります。但し、シートは設置しても経年劣化し使用できなくなる場合があります。

ヘルムホルツコイル

ヘルムホルツコイルとは

ヘルムホルツコイルは、均質な磁場を発生させるコイル群の一つです。

ヘルムホルツコイルは、2つの同じ形状の円形のコイルを、コイルの半径と同じだけ離して平行に 、かつ中心軸が同一になるように 配置し、同じ向き・量の電流を流します。ドイツの物理学者ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ(Hermann von Helmholtz)にちなんで名付けられた名称です。

地磁気を打ち消す目的や、磁場のキャリブレーションなどにおいて使用されていることが多いコイルです。製品によって、発生磁界の強度や、コイル径などは様々であり、多様な製品が提供されています。

ヘルムホルツコイルの使用用途

ヘルムホルツコイルは、均一な磁場を発生させられることから、地磁気を打ち消すために用いられることが多いです。これは、局所的には地磁気は単一方向を向いていると見なすことができ、ヘルムホルツコイルもまた単一方向を向いた磁場を生成するためです。

工業的分野や磁気学、材料科学、生物物理学などにおける研究用途で使用されることが多く、代表的な用途には下記のようなものがあります。

  • 製品、機器、材料の磁気による影響の検査
  • プローブ、センサ、磁力計、ホール効果センサ、その他の磁場センシングデバイスなどの校正における標準磁界の発生
  • ホールIC、ホール素子など、磁気センサの検査
  • 磁気カードなどの磁気による影響の検査
  • 磁気式リードリレーの検査
  • 磁性体の測定
  • 物理学教育における教育ツールおよびデモンストレーション
  • 磁気関連の実験用設備

ヘルムホルツコイルの原理

1. 概要

ヘルムホルツコイルは、巻数、線種、半径が同じ、2つのコイルから構成されます。2つのコイルが、半径と同じ距離で平行かつ同軸に配置される時、コイルに挟まれた空間で、磁場の向きと大きさがほぼ同じになります。電線には、エナメル銅線や中空銅線などが使用され、コイルを巻きつけるボビンの素材には、木や各種の合成樹脂、非磁性体の金属などが使われます。電源は外部電源やバッテリーより供給されますが、ヘルムホルツコイルの磁界の精度は使用する電源の精度に依存しています。

導出は割愛しますが、ビオ・サバールの法則より磁束密度Bを求めると、

B = (4/5)3/2μ0nI/R
0 = 4 π ×10-7 [T・m/A] (真空の透磁率)、コイル半径:R、巻き数: n、電流: I )

となります。

2. 多軸ヘルムホルツコイル

多軸ヘルムホルツコイルとは、ヘルムホルツコイルの外側に更にヘルムホルツコイルを組み合わせたコイルです。通常、軸が直交するように組み合わせられます。2軸、或いは3軸のコイルの組み合わせにより各軸の磁界を合成し、2次元・3次元的に発生磁界方向をコントロールする事が可能です。

ヘルムホルツコイルの種類

1. 概要

ヘルムホルツコイルには、様々な種類の製品があります。発生する磁界の磁束密度は製品によって大きく異なり、100 µT の製品もあれば、2 mT 前後、7 mT 前後、20 mT 前後の製品まで様々です。200 mT にも達する大型の製品もあります。大型の製品では重さが150 kgや300 kgにもなります。製品によっては、磁場内にワークをセットするステージ付きです。また、コイルのボビンを放熱板にすることで発熱を抑えた製品や、全体がアルミフレームなどのベースに乗っているものもあります。

コイル間隔を調整できる可変型ヘルムホルツコイルや、前述した2次元、3次元型の多軸ヘルムホルツコイルも販売されています。

ヘルムホルツコイルの磁界の精度は使用する電源の精度に依存するため、電源付の製品もあります。

正方形のコイル2つを平行かつ同軸に置き、両者に同じ向きや大きさの電流を流す場合、両コイルの中心間の二等分点から、コイルに近づいていくと、磁束密度が増えます。つまり均一な磁界ではありません。このため、このコイル対は厳密にはヘルムホルツコイルではありません。しかし、このコイル対はヘルムホルツコイルと同様に地磁気キャンセラーとして使えるので、これをヘルムホルツコイルと呼ぶメーカーもあります。

2. 設計・選定

  • ヘルムホルツコイルは、オーダーメイドになる場合も少なく有りません。設計や製品選定の場合には、下記の点をはっきりさせておくことが必要です。コイルが大きいものでは、使用による発熱や安全性などを予め検討しておく必要があります。
  • 必要な均一発生磁場、磁界の範囲と磁界の強さ
  • 磁界の方向 (一方向か多軸か)
  • 連続使用時間
  • 使用される環境温度

組立治具

組立治具とは

組立治具とは、工業生産などで製品を組み立てる際に使用される治具です。

治具とは、加工物を固定して、位置決めをしたり、加工しやすくしたりする補助工具の総称ですが、組立治具は、特に製品・部品の組み立ての際に使用される治具です。

組立治具を用いることで部品を正しい位置を置くことができ、組立を効率良く行うことができます。同じ製品を大量に生産する場合には特に必要です。具体的には、ねじ締め、カシメ治具などがあります。また、対象の加工品や加工内容にあわせた製品では、受注生産されている場合も多いです。

組立治具の使用用途

組立治具は、工業製品製造にあたり、組立工程で使用される治具です。自動車製造、電子機器・部品製造などの分野で使用され、下記のような用途があります。特に、電子部品では、実装基板や液晶、ケースなど様々な部品を組み付けたり張り合わせたりすることに活用されています。

  • 自動車関連の組立 (BODY、ASSY、エンジン部品組付け、足回り部品組付けなど)
  • ネジ締め (ケースに基板を固定するなど)
  • 複雑形状のワークに部品を取り付ける
  • 組立・配線などに使用される置き台
  • パネル貼付
  • 半田付け
  • シール貼付

組立治具を使用することで、組み立てる部品を正しい位置に配置することができ、組立効率を向上させることが可能です。従って、

  • 作業時間の削減
  • 品質を安定させる
  • 作業を簡易にする
  • 人的ミスを削減させる

などの効果を得ることができます。

組立治具の原理

1. 概要

組立治具は、製品組立時に各部品を所定の位置に正しく置く目的で使用される補助具です。加工済みの部品の組立を効率的に進めるため、設計されます。

製品や製造工程に合わせて設計・製造される事が多いですが、組立治具の主な役割は位置決めや、固定です。組立治具を用いて作業を行うことで、精度が向上し、安全で効率の高い組み立てを行うことができます。特に、同一製品を多数生産する場合にばらつきがなくなり、高い効果を得ることができます。

2. 材質

組立治具の材質は、用途や組立工程の性質に応じて異なります。手作業の作業を補助する場合は、材質としてナイロン樹脂など、軽量で柔軟な樹脂が使用されることが多いです。ワークの固定にはクランプが主に用いられ、ワークを置くだけでクランプによってワークが固定されるなど、治具自体が1つの装置となっているケースもあります。

機械で行われる作業を補助する目的の治具は、ステンレスなどの金属製が主流です。SUS420J2やSKD61、耐摩耗鋼などの金属種が例として挙げられます。ネジなどを用いてしっかりと確実にワークの固定が行われる治具が多いです。

組立治具の種類

組立治具は、製造工程にあわせて独自のものが製造されることも多いですが、具体例としては下記のようなものが挙げられます。

1. 圧入・挿入冶具

圧入・挿入冶具とは、ピンなどを圧入・挿入する際に使用される治具です。ピンを指で持ってハンマーなどで叩くと、斜めに入ってしまうことがあります。圧入・挿入治具を用いることで、ワークに対して正確にまっすぐ打つことが可能です。

作業が簡単になるだけでなく、怪我を予防する高価もあります。また、加圧の力によって部品が変形しやすい場合にも、治具の使用によって変形や破損を防止することができます。

2. カシメ冶具

カシメ治具とはカシメ作業を補助するための治具です。カシメ作業とは、加工対象物同士を潰したり締めつけたりして固定する作業 (加締め作業) です。主に、塑性変形を利用して部品を複数接合させます。

剛性や耐摩耗性が必要なため、SKD、SKH材が使用されることが多く、また、カシメする部分は更に硬度の高い超硬合金が使用されることが多いです。カシメ治具を用いることで、カシメ作業が簡単になり、安全かつ正確に行えるようになります。

3. ねじ締め治具

ねじ締め治具は、ねじ締めの補助・ガイドを行う治具です。ねじ締め治具を用いることで、ねじの頭のなめや傷を防止したり、締付精度の向上を行うことができます。また、ロット、担当者によるバラツキも減らすことが可能で、製造効率が向上します。

水冷機

水冷機とは

水冷機とは、冷媒として水を用いる冷却機器です。

装置の内部に冷却用の液体を循環させる冷却機器では、循環液を冷却する必要があります。水冷機とは、この循環水や循環液を冷やすために、外部から取り込んだ水を冷媒として用いる冷却機器です。また、冷却用の循環液自体に水が使われる場合もあります。

水冷機に分類される製品には、水冷チラー、水冷式冷却水循環装置など、様々なものがあります。空冷式の冷却機と異なりファンを内蔵しないため、低騒音、クリーン、室内への排熱がない点が特徴です。

水冷機の使用用途

水冷機は、循環液 (または循環水) を繰り返し循環させることにより、対象物・装置から熱を奪って冷却する装置です。研究機器、金属加工、食品加工、医療機器など、様々な分野・産業で使用されます。主な使用用途は下記の通りです。

  • 各種研究機器、計測機器を冷却し、一定の温度に保つ (ロータリーエバポレーター、電子顕微鏡、X線回折装置や赤外分光光度計など)
  • 食品加工工場での製造工程上の冷却や、洗浄・成形工程における冷却
  • 工作機械の温度調節
  • 金属加工において、加工による発熱を抑えるための冷却
  • プラスチックの射出成形における、成形物の冷却・固化
  • 印刷機のローラー部分の冷却 (印刷の精度を向上させる)
  • レーザ加工機や高周波加熱装置などの発熱部を冷却する
  • MRIで使用されるヘリウムガスの冷却
  • 医薬品を製造する際に発生する反応熱の除去
  • 成形機の金型温調
  • リフロー炉 (リフローはんだ付け装置) における冷却
  • その他産業機器の冷却

水冷機の原理

1. 概要

水冷機は、循環液などと呼ばれる液体が内部を循環して、冷却対象の装置から熱を奪います。一度排熱に使われた循環液は温度が上がってしまうため、外部から冷水を流して循環液を冷却し、排熱を行う仕組みです。循環の動力にはポンプや圧縮機 (コンプレッサー) などが用いられ、循環液には、純水、蒸留水、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの混合物が主に用いられます。

冷水としては、工業用水や水道水などが使用されます。また、水道水などは水温が安定しないため、クーリングタワー水などの一次冷却水を用いる場合もあります。また、通常は安全装置として、温度プロテクタ、過電流継電器、水圧センサなどが搭載されていることが多いです。

2. 特徴

空冷式と異なり、室内に排熱が出ないため、室内が上昇しないという点が長所です。空冷式の冷却機よりも効率が良く、短時間で冷却が可能であるという特徴があります。ただし、水を通すための配管などが必要であるという点には注意が必要です。冷水を通す配管経路上に水槽を用意するケースもあります。

水冷機の選び方

水冷機は、冷却能力や対応可能温度が製品によって異なります。具体的には、下記のような点を検討し、製品決定を行います。

  1. 循環液の温度を決める
  2. 設置場所を決める (製品によっては屋外も可能) 
  3. ワークの温度変化や、循環水の流量・温度差などから冷却に必要な能力を算出する
  4. ポンプの能力を決める

冷却能力は、低いものでは1kW程度から、高いものでは14kW〜15kW程度の製品まであります。循環液温度は5℃〜40℃の範囲で対応している製品や、-10℃〜80℃の範囲まで対応している製品など、様々です。外部から水を流す配管が必要であり、比較的スペースも必要なため、設置場所を決める際は注意が必要です。製品によっては、屋外に設置することもできます。

このように、水冷機の選定にあたっては、様々な観点が必要ですが、用途に合わせて適切なものを選定することが必要です。

水冷機のその他情報

その他水冷機のように水を冷媒とする冷却用品として、水冷服などの熱中症対策用品があります。例えば、水冷服では、リチウムイオンバッテリーなどを動力として少量の冷水を循環させ、冷凍ペットボトルや氷、保冷剤などを用いて水を再冷却する仕組みなどが用いられます。

耐水紙

監修:株式会社田村商店

耐水紙とは

耐水紙とは、特殊な加工や素材によって水に強い性質を付加した(耐水性が高い)紙です。

耐水紙は、水や湿気のある環境でも劣化しにくく、水に濡れる場所や屋外での使用に優れています。水に強いだけでなく、耐久性、摩耗性にも優れ、変形しにくいことも特徴です。また、耐水紙の中には、コーティングの効果により、対候性や耐油性に優れたものもあります。耐水紙は表面が滑らかなため、美しい仕上がりの紙製品を作製することが可能です。

耐水紙の使用用途

耐水紙は、屋外を始めとする水がかかる可能性のある場所や湿気の多い場所などで多く用いられています。具体的には下記のようなものが挙げられます。

  • 飲食店等におけるメニュー
  • カタログ
  • 食品包装 (冷凍食品、冷蔵食品、生鮮食品、スナック菓子、弁当箱など)
  • 食品や瓶ボトルのラベル
  • 農業資材や園芸用品など、屋外で使用されるタグ
  • 機械装置の警告タグ
  • アミューズメントパーク・イベントにおける、チケットやパスポート
  • 地図や旅行ガイドの印刷
  • 建設現場や工場のマニュアル、図面
  • 屋外看板・ポスター
  • 病院などにおける採血管のラベル、リストバンドなど
  • 医療機器など水や汚れ(血液など)が掛かる可能性のある場所で用いられるマニュアル

耐水紙は、主に、水や各種の汚れ(飲食店における食品の汚れ、医療分野における血液、建設現場等の作業現場における汚れなど)が付着する可能性があるシーンや、包装などの内容物を保護するために使用するシーンなどで多く用いられている紙であると言えます。

耐水紙の原理

耐水紙は、製造にあたって特殊な製造方法、薬品、加工や素材を用いることにより、耐水性が付与されています。

例えば、素材では、一般的な紙が木材パルプや植物繊維を原料などを原料とするのに対し、耐水紙はポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成樹脂を使用していることがあります。こうした合成樹脂を用いた耐水紙は耐水性とともに耐久性を向上させることが可能です。中でも、ポリエステル製の耐水紙は、特に強度が高いという特徴があります。また、コーティング加工を施すことにより、表面を滑らかにすることが可能です。このため、水分や油分、汚れが付着しにくくなります。

耐水紙の種類

1. 概要

耐水紙には、様々な種類の製品があり、それぞれ多様な用途で利用されています。下記は代表的な例です。

1. ユポ

ユポ、もしくはユポ紙、は、ポリプロピレンの樹脂を用いた合成紙です。表面が滑らかで、光沢があり、豊かな色彩表現が可能です。特に耐久性・耐水性に優れています。また、油や特殊な溶剤に対しても耐性を持つ耐水紙です。原料に木材を使用しないため、森林保全の観点でも優れています。

2. 耐水耐油紙ポエム-S

耐水耐油紙ポエム-Sは、ECFパルプ(無塩素漂白)を100%使用している耐水紙です。無塩素漂白のため、リサイクルが可能なことも特徴です。ベースの紙の強度が高いため、加工適性に優れています。

3. OKレインガード

OKレインガードは、コア部分に上質紙を使用している耐水紙です。白色度が高く、高い印刷効果を得ることができます。また、鉛筆や油性ペンで書いても、仕上がりが美しいことも特徴として挙げられます。

4. ストーンペーパー

ストーンペーパーは、石灰石とポリプロピレン樹脂を原料として製造される耐水紙です。色彩表現が豊かで、滑らかです。製造工程において木材を使用せず、水も殆ど使用しません。CO2の排出も紙より少ないため、環境に配慮された耐水紙といえます。

耐水紙のその他情報

耐水紙は、加工や印刷を行うことが可能です。耐水性や耐久性に優れた製作物を作製することができます。ただし、耐水紙の種類によっては、可能な加工が限定される場合があります。下記は、代表的な加工の例です。

  • 断裁加工 (一般的には専用の断裁機械やレーザー加工機を使用)
  • 穴あけ加工 (専用の穴あけ機を使用)
  • 印刷加工 (種類や用途によっては特殊なインクや特殊な印刷機器が必要)
  • 貼り合わせ加工
  • 折り加工
  • ミシン目加工
  • 型抜き加工
  • 箔押し加工
  • エンボス加工

本記事は耐水紙を製造・販売する株式会社田村商店様に監修を頂きました。

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