UPSバッテリー

監修:株式会社フジエナジー

UPSバッテリーとは

UPSバッテリーとは、停電などにより電源障害が生じた際に負荷機器に電力を供給するUPS (無停電電源装置) に使用するバッテリーです。

UPSバッテリーは、停電時に負荷機器に送れるよう、電気を貯めておくバッテリーです。普段はコンバータの電力を用いて充電されており、商用電力が遮断された場合にインバータへ電力を給電します。UPS無停電電源装置用のバッテリーの主な種類には、リチウムイオン電池と鉛蓄電池とがあり、鉛蓄電池にはさらにMSE型とUPS専用型の2種類があります。

UPSバッテリーの使用用途

UPSバッテリーは、UPS (無停電電源装置) において電気を蓄える目的で使用されます。

UPS無停電電源装置は、停電などにより電源障害が生じた際に一定時間だけ電力を供給する目的で使用されます。コンピュータなどの電子機器は突発的に停電すると、故障したり内部データが消えたりする危険があります。UPSを接続することで、電源トラブル時にデータを保護したり、電子機器を安全にシャットダウンしたりするのに要する時間の電力を供給することができます。

以下はUPSが使用される機器・用途の例です。

  • パソコン、OA機器
  • ネットワーク機器、サーバー、データセンター
  • 店舗におけるPOS端末や顧客情報端末
  • 防犯・防災関連機器、監視カメラ、信号機
  • 金融: 運営サイトや金融システム、及びATM端末やオンライン端末
  • 放送機器や電装機器
  • 医療現場:医療機器、手術室や集中治療室など

UPSバッテリーの原理

UPSバッテリーは電気を蓄えておき、停電時にUPSより各機器に電気を供給するために使用されます。UPSの給電方式には下記のようなものがあります。

  • 常時商用給電方式: 通常は交流入力をそのままスルーで出力し、電源から給電が途絶えて停電や過電圧を感知した瞬間にバッテリからのインバータ給電に切り替える
  • ラインインタラクティブ給電方式: 通常時は交流入力をスルー出力し、一定範囲内の電圧変動にはトランスのタップ切り替えで対応し、停電や一定以上の変動に対してはインバータ給電に切り替える
  • 常時インバーター給電方式: 交流入力をいったん直流に変換し、常にバッテリーを充電しながらインバータによって安定した交流に再変換し、電力を供給する

バッテリーの日常的な保守としては 外形、周囲温度、測定電圧などの管理などを行うことが必要です。通常、UPSバッテリーを使用する際の推奨環境温度は20℃~25℃です。メーカー公表の期待寿命値は基本的に上記の理想的な環境下でのフロート寿命期間となり、実際の運用下での寿命ではありません。寿命がメーカー公表値より短い原因としては、環境温度が高い、放電が多い (停電が多い) 、設置したバッテリー間の隙間がない、負荷が大きいなどが考えられます。バッテリー寿命が短いと感じる場合は、環境や設置場所の改善も対応策の一つです。

UPSバッテリーの種類

UPSバッテリーには鉛蓄電池、リチウムイオン電池などの種類があり、更にそれぞれの種類の中でも様々な製品があります。

1. 鉛蓄電池

鉛蓄電池は、UPSで使用される最も一般的な電池です。正極に二酸化鉛、負極に海綿状の鉛を使用しており、電解液として希硫酸を用いています。正極・負極の双方から電解液中に硫酸イオンが移動することで充電され、電解液中の硫酸イオンが正極・負極の双方に移動することで放電を行う仕組みです。

UPSで使用される鉛蓄電池には、MSE型と通常AGM型と純度の高いピュア鉛ACM型のUPS専用とがあります。MSE型は一般的に容量50〜3000Ahであり、UPS専用型は容量50, 100, 150, 200, 300Ahなどです。UPS専用型に使用されるバッテリーは、FVHと呼ばれる高率放電タイプです。寿命は、通常のMSE型で2~7年、長寿命型MSE型で9〜12年、UPS専用型で7~9年程度となっています。 (現在はバッテリー設置個所の省スペース化に伴い、MSE型とFVH型は通常AGM型とピュア鉛AGM型へ移行しています。)

通常AGM型は価格が比較的安価で汎用性の高いバッテリーで、9Ah~200Ahまでの幅広い容量範囲があります。大型UPS用バッテリーのキャビネットに収納が容易なサイズ設計となっています。

世界で3社でしか製造していないピュア鉛AGM型は、従来の通常鉛蓄電池と比較すると高いエネルギー密度と出力性能を併せ持っています。ピュア鉛を使用することにより1Cでの充放電が可能となり、バックアップの際に瞬時に大きな電気を流すことで、次の停電に備えた早期の充電を実現します。大型UPS用バッテリーのキャビネットに収納が容易なサイズ設計となっています。

2. リチウムイオン電池

リチウムイオン電池は、鉛蓄電池と比べて、はるかに小型で軽量です。一般的に、鉛蓄電池の約45%の重量とされます。

鉛蓄電池よりもより高いエネルギー密度を持つ上に、より長いサイクルライフを提供します。また、リチウムイオン電池は、最大で充放電サイクルが鉛蓄電池の10倍であり、寿命も8〜10年と最大で通常のMSE型鉛蓄電池の3倍長持ちします。メンテナンスの手間や交換頻度が大幅に少なくなります。

本記事はUPSバッテリーを製造・販売する株式会社フジエナジー様に監修を頂きました。

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