監修:ライフテクノロジーズジャパン株式会社
ハイコンテント・スクリーニング (HCS) とは
ハイコンテント・スクリーニング (HCS) とは、細胞内の変化を同定する表現型スクリーニングの一種で、細胞の表現型に変化を与える物質やなんらかの刺激などを評価する分析手法です。
ハイコンテント・スクリーニング (HCS) は、蛍光顕微鏡と画像分析を用いて高感度な蛍光測定を行い、様々な定量的解析を行います。これにより複雑な細胞表現型を解析することが可能となり、評価される条件は、低分子、ペプチド、RNAiなど多岐にわたります。創薬研究・生物学研究における様々なステージで活用されている独自性の高い分析技術です。
ハイコンテント・スクリーニング (HCS) の使用用途
ハイコンテント・スクリーニングは、創薬研究や疾患モデリング研究、各種生物学研究において有用な解析手法として広く活用されています。画像上で細胞を個々にセグメントすることでシングルセル解析や、マルチプレート等のウェル全体の細胞カウントも可能です。具体的な用途例には下記のようなものがあります。
- ハイスループットスクリーニングにおけるサンプルの蛍光測定
- 細胞内におけるターゲット分子の増減、局在の変化や細胞の運動性や形態情報
- 正常細胞及び病変細胞の表現型の差異
- 創薬研究におけるターゲットバリデーション
- 薬物スクリーニング
- オーファン受容体のリガンドスクリーニング
これらの分析・解析を実現する上で、ハイコンテント・スクリーニングで測定・観測される具体的な細胞事象には下記のようなものがあります。使用する製品機器によっては、生細胞の観察を行うことも可能です。
- スフェロイドの3D解析・分化評価
- 各種細胞・コロニーカウント
- アポトーシス
- 細胞周期・細胞老化
- 血管新生
- 神経突起伸長
- 心筋拍動
- 細胞内顆粒
- オートファジー
- 紡錘体の変化
- 細胞の多核化
- DNA修復、遊走、接着
- 細胞内共局在
- 核移行・核内顆粒
ハイコンテント・スクリーニング (HCS) の原理
ハイコンテント・スクリーニングの基礎的な実験例として、適当な条件で培養した細胞に対して、表現型を発現すると期待される物質を暴露し、一定期間後に細胞の構造や分子成分の変化を解析します。細胞の取り扱いの多くは、マイクロプレート上で行われます。
このような条件設定がなされた細胞サンプルを分析する例として、ターゲットタンパク質を蛍光色素で標識し、その蛍光画像を自動撮影および画像解析を行うことで、細胞表現型の変化を蛍光量の変化として定量的に検出する手法が考えられます。使用する蛍光色素は、吸収極大値と発光極大値が異なるものを複数使用でき、異なる細胞成分(細胞質、核、他の細胞小器官など)を同時に測定することや、細胞内の局在ごとに複数のターゲットの変化を測定することが可能です。
ハイコンテント・スクリーニング (HCS) の種類
1. 機器
ハイコンテント・スクリーニングは複数のメーカーより様々な測定機器が提供されています。基本的には、
- 蛍光を励起するための光源
- 高解像度蛍光カメラ (CMOSカメラ)
- 対物レンズ (顕微鏡)
- 自動撮影するための電動ステージ
- 蛍光フィルター
が装置に備えられています。
製品によって対物レンズの倍率は異なりますが、低倍率から100倍程度の高倍率レンズに対応する製品もあります。また、共焦点観察、明視野観察、位相差観察、環境制御ユニットなどの機能がオプションもしくは標準で実装されています。生細胞の観察を行うため、温度、湿度、CO2などの環境制御ユニットや、マイクロプレート分注用の分注ユニットを選択できる製品も販売されています。
2. 解析ソフトウェア
ハイコンテント・スクリーニングでは、それぞれの機器によって専用のソフトウェアによる画像解析を行います。測定画像から個々の細胞のプロファイルを数値化し、そのデータリストを作成します。測定された定量データは、データベースに保存され、興味ある変化を可視化することが可能です。製品によっては、機械学習やディープラーニングを解析に活用しており、これまで検出しにくかった領域での検出力の向上が期待されています。
3. 染色抗体
蛍光色素による標識は、抗体免疫反応を用いた蛍光染色を行う手法もあります。蛍光抗体による標識により、より特異的なターゲットを検出し、様々な表現型解析を行うことができます。例えば、翻訳後修飾に特異的なターゲット分子の抗体や、トータル修飾基質を標的とする抗体を蛍光標識することにより、疾患に関連したシグナル伝達経路の解析に用いることができます。
本記事はハイコンテント・スクリーニング (HCS)を製造・販売するライフテクノロジーズジャパン株式会社様に監修を頂きました。
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