真空バルブ

真空バルブとは

真空バルブ

真空バルブとは、真空状態の制御や封入を目的として使用される特殊なバルブ (弁) のことです。

真空技術の領域において、システム内の圧力や流れを適切に制御することに貢献しています。また、真空機器全体の性能や安全性を確保しています。

真空バルブの使用用途

1. 真空チャンバーの封入と排気

真空バルブは、真空チャンバー内のガスを封入したり排気したりするのに使用されます。真空チャンバー内の圧力を必要なレベルに調整することで、特定の実験やプロセスを行うために必要な真空状態を維持できます。

2. 真空ポンプの制御

真空バルブは、真空ポンプの作動を制御するのに使用されます。ポンプのオン/オフやポンプからのガスの排出を調整することで、効率的な真空作成が可能になります。

3. ガスフロー制御

真空バルブは、ガスの流れを制御するのに使用されます。特定の実験やプロセスに必要なガスの流量を調整し、適切な条件下での実験を行うことができます。

4. 真空槽の連結と分離

真空バルブは、異なる真空槽や真空系を連結したり分離したりするために使用されます。例えば、複数の真空チャンバーを1つのシステムに組み合わせる場合に、真空バルブを介して接続を行います。

5. イオンポンプやチューブポンプの保護

真空バルブは、真空ポンプを保護するために使用されることもあります。特定のプロセスによって生成された物質がポンプに悪影響を与えるのを防ぐために、ポンプと真空槽を分離する際に真空バルブを使用します。

真空バルブの原理

真空バルブの目的は、真空中でのガスの流れを制御することです。一般的な動作原理は、以下のとおりです。

1. ゲートバルブ

ゲートバルブは、円盤状のバルブを真空チャンバーの内部で回転させることによって、ガスの流れを制御します。バルブが開いている場合、ガスは円盤の周囲を通過して流れます。バルブを回転させることで、円盤が真空チャンバーの中央に位置するため、ガスの流れを遮断してバルブを閉じることが可能です。

2. ソレノイドバルブ

ソレノイドバルブは、電磁コイルを使用してバルブの開閉を制御します。電流がコイルに流れると、コイルによって生じる磁力がバルブを動かし、バルブが開きます。電流が止まると、磁力が消えてバルブが閉じます。このようにして電磁的にバルブを開閉することで、リモート制御が可能です。

3. バタフライバルブ

バタフライバルブは、円盤状のバルブを回転させることによって、ガスの流れを制御します。円盤が真空チャンバーの中央に位置するときは、バルブが開いており、ガスが流れます。一方、円盤が真空チャンバーの外周に位置するときは、バルブが閉じてガスの流れを遮断します。

4. ピンチバルブ

ピンチバルブは、柔軟なチューブを挟むことによってガスの流れを制御します。バルブを挟むことでチューブの内部の流れを遮断し、バルブを開放することでチューブの内部が開かれてガスが流れます。ピンチバルブは、チューブを挟む力を調整することで、ガスの流量を調整可能です。

真空バルブの種類

上記で紹介したバルブ以外に、以下のような種類もあります。

1. ボールバルブ (英: Ball Valve)

回転する球体を用いて開閉するバルブです。球体が真空チャンバーの流路を遮断することでバルブを閉じ、回転させることで開きます。

2. インラインバルブ (英: Inline Valve)

直線的なパスに配置されたバルブで、ガスの流れを一貫して制御するために使用されます。

3. アングルバルブ (英: Angle Valve)

接続が90度の角度を形成するバルブで、限られたスペースに適しています。

4. ポペットバルブ (英: Poppet Valve) 

シリンダー状のバルブがシートに対して開閉するタイプのバルブで、特に高いシール性が求められる場合に使用されます。

これらのバルブは、真空機器の設計や用途によって選択され、組み合わせられます。真空機器の性能や操作の正確さを確保するために、適切なバルブの選択が重要です。

参考文献
http://www.ikc.co.jp/technical/valve/whats_valve.html
http://www.asahiseiki.co.jp/column/post/05
https://www.giho.mitsubishielectric.co.jp/giho/pdf/2014/1411107.pdf

紫外線センサー

紫外線センサーとは

紫外線センサは紫外線を検出するセンサーです。

紫外線は適度に浴びると健康に良いとされ、健康用途に利用されます。また、殺菌作用もあるため、殺菌装置も紫外線利用先の一つです。

ただし、紫外線は目で見ることはできないため、紫外線照射装置には紫外線センサーが利用されています。近年では、紫外線の殺菌効果や紫外線硬化樹脂が注目され、産業界だけでなく家庭でも紫外線照射装置が利用されることが増えました。使用される紫外線センサーの種類も様々で、強度や積算量を出力する機種もあります。

紫外線センサーの使用用途

人工的に紫外線を照射する機器は、小型の健康器具から産業用途まで使用用途は様々です。このような機器には、必ず紫外線センサーが搭載されています。

紫外線は浴びすぎると人体に有害であるため、紫外線の強度を制御するのが目的です。

産業用途では以下のような使用用途があります。

  • 紫外線硬化樹脂の製造
  • 半導体製造設備内部
  • 紙幣の識別や印刷
  • 日焼けサロン用マシーン
  • 紫外線の殺菌効果を期待した水虫の治療器具
  • 空気清浄機 

紫外線センサーの原理

紫外線センサの主要部品は紫外線シリコンフォトダイオードです。フォトダイオードに紫外線を含んだ光を照射すると電流が流れます。紫外線強度に応じて電流値が変化するため、電流値を測定して紫外線量を検出します。

構造によって応答スピードなどが異なるのがフォトダイオードの特徴です。構造はショットキー接合型、PN接合型、フォトコン型があり、それぞれに特徴があるため用途に応じて選定します。

ダイオードが太陽光や白熱灯に反応しないため、光学フィルタがついているセンサが販売されています。また、高感度と低感度の紫外線センサーの差分から可視光成分を差し引いて紫外線を検出するセンサもあります。

紫外線の受光素子にフォトダイオードでなく、光電子増倍管が使用されているセンサもあります。

紫外線センサーのその他情報

1. 紫外線センサーの市場

紫外線センサーをはじめとした環境センサーへの注目は高まっており、世界市場規模は1兆1000億円を超えると予測されています。産業用センサーのうち6種類を対象として調査した世界の市場規模では、最も多くを占めているのはガスセンサー、次いで磁気センサー、3番目が紫外線センサーです。

従来では防災や産業用の紫外線測定が主な用途でしたが、一般での用途拡大によりセンサーの需要は高まるでしょう。2024年は1兆4000億円、紫外線センサーも全体の需要も同様に高まっていくと予測されます。

2. 殺菌の現場で活用する紫外線センサー

紫外線による殺菌効果を活用して、最近では空港などの公共施設や飲食店などの商業施設でも広く用いられています。そのため、一般消費者が紫外線発生装置に触れる機会は以前に比べて多いです。

一般消費者が利用する場で殺菌の需要が高まると、殺菌に十分な強度の紫外線であるかを計測する必要がある一方で、有害な波長の紫外線が漏れていないかの確認が必要です。そのためにも、紫外線センサーは重要な存在となります。

3. 紫外線センサーを用いた炎検知

紫外線センサーを活用した製品に、火炎中の微弱な紫外線を検知する火炎センサーがあります。活用される場所としては、炎が燃え移る危険性のある衣服や寝具売り場や喫煙所などの瞬時に火災を検知したい場所です。また、ボイラバーナの火炎検知などにも使用されます。

火炎センサーは熱や赤外線などの様々な感知方法がありますが、感知するまでに火災が進行するなどの課題があります。紫外線による火炎センサーも、紫外線を発生する機械によって誤報を発報する可能性があるのが課題です。素早く火災を検知するために、高精度センサーが必要となります。

参考文献
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2613
https://www.gii.co.jp/report/infi970180-global-ultraviolet-uv-sensor-market.html
https://www.arucom.ne.jp/picoeye/
https://www.graphtec.co.jp/site_instrument/solution/skh/index.html
https://eetimes.jp/ee/articles/2101/07/news034.html

塗装ロボット

塗装ロボットとは

塗装ロボット (英: painting robot) とは、塗装に使用する産業用のロボットです。

繊細な塗装に対応できるように、多関節型のアームに塗装ガンを取り付けたタイプが多く使われます。人が塗装する場合は、塗料に含まれる有機溶剤による健康影響が懸念されますが、塗装ロボットのおかげでリスクを軽減することが可能です。

また、塗装ロボットの導入により、生産性が向上し、人的ミスやばらつきを減らすことも可能です。実際に屋根塗装の事例では、生産性が35倍も上がる効果が出ており、産業界でのロボット導入が急速に進んでいます。 

塗装ロボットの使用用途

塗装ロボットは、自動車業界を始めとして、塗装が必要な多くの製造現場で導入されています。自動車用の大型から、電子部品用の小型まで各種のサイズが幅広く市販されるようになり、さらに導入が拡大しています。

人が行うよりも生産が安定し、人体の健康被害が軽減できるため、屋根工事、壁工事、日用品、各種部品などの分野でも導入され始めました。中には、伝統工芸の漆器で塗装ロボットが採用されている事例もあります。 

塗装ロボットの原理

塗装ロボットは、産業用ロボットに塗装ガンを取り付けた構造です。塗装時に噴霧された塗料がロボット自身にもふりかかるので、防爆が課題でしたがクリアすることができたため、導入が広がりました。

ロボットの形状として5~6軸を持つ多関節の製品が多くあり、主に次の3種類が使われています。

1. 垂直多関節ロボット

垂直方向に回転する関節が5~6軸あり、見た目でも人間の腕に近い動きが可能です。軸の向きを変えれば、垂直方向だけでなく斜め方向にも回転ができます。複雑な形状の塗装にも対応しています。

2. 水平多関節ロボット

ジョイントとリンクが水平方向につながり、回転は水平方向が可能です。ほぼ水平方向のみの動きなので、平面状の対象物への塗装に適しています。

3. 直角座標ロボット

3軸がスライドして移動する構造で、直交ロボットとも呼ばれます。複雑な動作はできないので、シンプルな形状の対象物に向いています。

塗装ロボットのその他情報

1. 塗装ロボットの活用事例

壁面吹付塗装ロボットの導入
距離センサで壁面と塗装ガン間の距離を計測し、その距離を一定に保持するように、ロボットの位置を制御することが特徴です。この技術を使うことで塗布量の分布が均一になり、熟練作業者と同等の品質が得られるようになります。

また、半自動にして、壁の隅などロボットでは難しいところは、人が作業する「人とロボットの協業」も可能です。

漆器における塗装ロボットの導入
熟練技術が必要なため、手作業で行なっていた漆器の塗装作業に、垂直多関節の塗装ロボットを導入しました。従来2名で行っていた作業をアシスタント1名で行えるようになり、労働生産性は約3倍に大きく向上しました。

さらに、少子高齢化による技術継承問題の解決に貢献しています。

屋根塗装作業における塗装ロボットの導入
屋根塗装作業に塗装ロボットを導入した例では、塗装ロボット導入前後で労働生産性が35倍の効果があります。

2. 塗装ロボットの塗装方式

塗装ロボットでは、仕上げが美しい静電塗装方式が使われます。静電塗装は、静電気の仕組みを利用した塗装方法です。ワークを正極、塗装ロボットを負極として、微粒化した塗料に高電圧をかけて負極に帯電させ、静電力線に沿って正極のワークに塗着させます。この方式は、塗料の無駄が少なく、塗装工数を大幅に削減でき、環境にも優しい点がメリットです。

使用する塗装ガンには、回転霧化方式と静電霧化方式が多く使われます。回転霧化方式は、塗料を微粒化しながら塗布パターンを広げる方法です。エアモータを高速回転させ、圧縮空気で軸と軸受の間に空気膜をつくり、この機構を非接触で高速回転させます。これらの回転により塗料は微粒の霧状になり、空気圧でワークの方向へ噴出します。

また、静電霧化方式は、静電気力で塗料の微粒子化を行う方法です。静電塗装方式は、自動車の車体、鉄道車両、電気製品、スチール製の事務機器、住宅関連の部品など大量生産の工業製品の塗装に広く採用されています。

参考文献
https://www.kajima.co.jp/news/press/202011/16a1-j.htm