監修:株式会社エレクトロニカIMT事業部
高速デジタイザとは
高速デジタイザとは、オシロスコープのように電気信号の波形を読み取り、デジタルデータとして取り込む装置です。
オシロスコープが波形観測を主体としている一方で、デジタイザはデジタイザはA/Dコンバータを内蔵し、アナログ信号のサンプリングと量子化を行ってデジタル化します。大量のデータを収集後、高速でPCに取り込み、PC側で表示・解析を行いますので、高スループットでのデータ解析、データ処理が必要な測定に向いている装置です。
高速デジタイザの使用用途
高速デジタイザは、学術的研究や、工業的部品や基盤の検査、様々な装置への組み込みに使用される機械です。
1. 研究
高速デジタイザは、下記の諸分野の物理学的研究における、大規模物理実験装置に用いられます。
- パルス電力
- 核物理学
- 指向性エネルギー
- 凝縮物質
- 原子・分子・光物理学
具体的な装置では、加速器、核融合炉、パルス磁石、電波望遠鏡などの装置があります。
更に、化学分野へもまたがってTOF-MS質量分析計やAFM (原子間力顕微鏡) にも使用されており、バイオ分野ではセルソーターへも利用されている組み込み装置です。
2. 工業
高速デジタイザは、工業的用途でも様々な機器へ組み込まれて使用されています。具体例としては下記のようなものが挙げられます。
- 車載レーダー
- LiDAR
- 医療機器 (MRI、OCT)
- 超音波計測装置・超音波非破壊検査装置
- ファイバーセンシング
- 分光計
- 航空宇宙
また、デジタイザは下記のような部品や基盤などの検査でも使用されている装置です。
- ダイオードなどの検査・計測
- アナログ/デジタル混在信号の同期計測
- 超音波計測
- 電磁鋼板の磁気特性計測
- タービンブレードの振動評価試験
高速デジタイザの原理
1. 概要
高速デジタイザとは、アナログ量をデジタルデータに変換し、パソコンなどへデータ転送を行う装置です。デジタイザは、A/Dコンバータ、プリアンプ、メモリ、パソコンからの
制御機構が組み込まれた構成となっており、パソコン上で種々の処理を容易に行うことができます。
装置形状はプリント基板でPCなどに組込んで使用するものや、PCとイーサネットなどでつないで制御する箱型の計測器などがあります。オシロスコープと異なり、スタンドアロン型ではありません。
2. 機能
高速デジタイザは、データ転送速度が~3.5GB/sと速いことが特徴です (オシロスコープは~5MB/s) 。入力チャネル数は製品によって異なりますが、1つのものから最大128のものまであります。独立した複数チャネルを有するものでは、独立した入力アンプ、独立したAD変換器を持ち、独立した同時サンプリングを行うことが可能です。
3. 測定を構成する要素
デジタイザによる測定は、下記の基本的な要素から成ります。
- 入力レンジ: 入力電圧のレンジ
- 入力インピーダンス
- サンプリング周波数: 1秒間あたりに入力信号をデジタル信号に変換する回数
- 変換ビット数: 変換出力されるデジタル信号のビット数
また、FPGA (Field Programmable Gate Array) を搭載しているデジタイザでは、デジタイザ自身で各種信号処理を行うことが可能です。例えば、アベレージャ機能を使用することにより、周期的な信号の積算値や積算後の平均値をPCに出力する事が可能です。このアベレージャ機能により、ランダムなノイズ成分を相殺して、周期信号を積算して観測することができます。
高速デジタイザの種類
高速デジタイザは、様々なメーカーから多様な製品が販売されています。形状別では、上述のように、組み込み型のボード製品や箱型の製品などがあります。
分解能 (デジタイズ可能な細かさの定義) は、ビット数で表され、8ビット〜14ビット程度の製品が主流です。8 ビット、10 ビット、12ビット、14ビットの分解能は、それぞれ256、1,024、4,096、16,384 分の 1 を区別できることを意味します。
その他、サンプリング周波数やFPGAの搭載有無など様々なファクターがあります。用途に合わせて適切な物を選択することが必要です。
本記事は高速デジタイザを製造・販売する株式会社エレクトロニカIMT事業部様に監修を頂きました。
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