アルミ熱処理

アルミ熱処理とは

アルミ熱処理とは、アルミニウムに対して行う熱処理のことです。

ここでいう熱処理とは、材料をその融点以下の適当な温度に加熱し、その後冷却速度を変えるなどして冷却し、材料として要求する様々な性質を付与する操作のことを指します。

通常、製品にはアルミニウムの合金が使用されており、最適な熱処理は対象物が熱処理合金か非熱処理合金かによって異なります。

展伸用のアルミニウム合金では、熱処理合金は2000系 (AL-Cu-Mg系合金) 、6000系 (Al-Mg-Si系合金) 、7000系 (Al-Zn-Mg系合金) のことを指し、非熱処理合金は、1000系 (純アルミニウム) 、3000系 (Al-Mn系合金) 、4000系 (Al-Si系合金) 、5000系 (Al-Mg系合金) の事を指します。

アルミ熱処理の使用用途

アルミニウムは軽く、加工性や耐食性、熱伝導性、通電性、反射性に優れているという長所があります。反対に、短所としては、強度の低さや変形のしやすさ、耐熱性が低い事などが挙げられます。そのため、アルミ熱処理は、アルミニウムの長所を引き出したり、短所を打ち消したりすることで、より使用用途に応じた金属に変化させるために行われます。

アルミ熱処理の原理

アルミ熱処理で主に使用される熱処理の原理は、種類によって異なります。主な種類とその原理は下記の通りです。

1. 溶体化処理 (W)

溶体化処理とは、アルミ合金に溶け込んでいない添加したい元素を、アルミ合金を高温にすることで溶け込ませる処理のことを指します。溶体化処理では、アルミの原子の位置に添加したい元素が置換する形で溶け込ませます。

2. 焼入れ

焼入れでは、溶体化処理された金属を急速に冷やすことで、室温状態においても、高温状態と同じ状態を保ちます。金属では、内部の配列の様子がそのまま金属の性質へと繋がるため、高温状態の時の金属の原子の配列を保ったまま低温状態にすることで、常温でも高温状態と同じ金属の性質を引き出せるようになります。

3. 時効熱処理の原理 (T)

時効処理は、アルミ合金の中にある添加した元素を析出させ、その析出した元素によってアルミ合金の転位を停止させます。転移を停止させた結果、強度を高めることが出来ます。時効処理には自然時効と人工時効があり、2000系では自然時効が行われ、6000系や7000系では人工時効が行われます。

4. 焼なまし処理の原理 (O)

焼なましは、アルミ合金に熱を加えることでアルミ合金内の原子の配列を正しい物にし、新しい結晶を生成します。その結果、アルミ金属は最も柔らかい状態となり、加工する際に役立ちます。

アルミ熱処理の種類

JISを参照すると、アルミ熱処理の種類は以下の通りです。

  • W: 加熱してアルミ合金中のCuやMgをアルミ基地中に溶け込ませ、元素分布を均一にさせた溶体化処理
  • O: 内部のひずみを取り除き、金属を軟化させた焼なまし処理
  • HQ: 室温状態においても、高温状態と同じ性質を保持させた焼入れ処理
  • T: 時効熱処理
  • T1: 高湿加工から冷却後、自然時効させたもの
  • T2: 高温加工から冷却後、冷間加工を行い、さらに自然時効させたもの
  • T3: 液体化処理後、冷間加工し、さらに自然時効させたもの
  • T4: 溶体化処理後、自然時効させたもの
  • T5: 高温加工から冷却後、人工時効硬化処理したもの
  • T6: 溶体化処理後、人工時効硬化処理したもの
  • T61 (展伸材) : 温水焼入れによる溶体化処理後、人工時効硬化処理したもの
  • T61 (鋳物) : 焼入れ後、焼もどし処理したもの
  • T7: 溶体化処理後、安定化処理したもの
  • T73: 溶体処理後、過時効処理したもの
  • T7352: 溶体処理後、残留応力を除去し、さらに過時効処理したもの
  • T8: 液体化処理後、冷間加工を行ってから人工時効硬化処理したもの
  • T9: 溶体化処理後、人工時効硬化処理を行い、冷間加工したもの
  • T10: 高湿加工から冷却後、冷間加工を行い、さらに人工時効硬化処理したもの

アルミ熱処理のその他情報

アルミニウム合金の超質

アルミニウム合金の調質には、加工による調質「H」と、熱処理による調質「T」があります。例えば、アルミ熱処理として代表的なT6処理は、熱処理合金には効果的ですが、非熱処理合金には効果を発揮しません。

また、展伸用のアルミニウム合金のことを展伸用合金と呼び、アルミニウム合金は展伸用合金の他には鋳物用・ダイカスト用合金があります。鋳物用・ダイカスト用合金も展伸用合金と同様に、非熱処理型合金と熱処理型合金が存在しています。

アルミ熱処理では、時効熱処理を行うことが一般的です。時効熱処理の代表的な物は以下のようになっています。

  • T4: 溶体化処理後、自然時効させたもの
  • T5: 高温加工から冷却後、人工時効硬化処理したもの
  • T6: 溶体化処理後、人工時効硬化処理したもの
  • T7: 溶体化処理後、安定化処理したもの

アルミ熱処理では、基本的には溶体化処理を行い、アルミニウムに添加された元素を均一に溶け込ませた後、焼入れ処理を行い、最後に時効熱処理を行います。

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