焼鈍炉とは
焼鈍炉とは、金属の加熱、高温保持、徐冷に使用する工業炉のことです。
金属材料に熱を加えて冷却するで組織や性質を変化させる熱処理は、金属製品を作る上で欠かせない工程です。加える熱の温度とその時間、冷却の速さの違いを利用して、金属に様々な特性を持たせています。
焼鈍 (しょうどん) は熱なましとも言われ、金属を高温に加熱して一定時間保持した後にゆっくりと熱を冷ます (徐冷) する熱処理です。焼鈍を行う目的は金属を柔らかくして、その後の加工をしやすくすることと、切削やプレスなどで金属内に溜まった残留応力を除去することです。
焼鈍炉の使用用途
焼鈍炉は、工業的に金属の焼鈍を行うために使用します。そのため大型の炉が多く、一片が3m、長さが10m程度の大きな柱まで取り扱える炉もあります。小さな金属を焼鈍する場合には、同じ条件で熱処理する金属を炉床の上に複数個並べて一度に処理します。焼鈍可能な金属には、鋼材、鋳鉄、ステンレス、アルミ等様々です。
焼鈍の目的は、金属の硬度を下げてその後の加工をしやすくするためと、切削やプレスなどによって金属の内部に溜まってしまった応力を除去して、品質を均一にするためなどがあります。その他には、反りが出てしまった金属の板を、おもりを付けて焼鈍することで反りを解消する「反り直し焼鈍」や、磁力を帯びた金属から磁力を取り除く為に行う「脱磁焼鈍」などもあります。
焼鈍炉を所有していて、外部から委託された金属の焼鈍を行う会社もあります。焼鈍を受託している会社には、工作機械や自動車の金型の他、造船、航空機、製缶、鋳物関連の会社など、幅広い分野の会社からの依頼があります。
焼鈍炉の原理
熱処理には加熱と冷却の方法や使用場面により、焼き入れと焼き戻し、焼きなまし、焼きならしという種類があり、焼鈍炉は焼きなましを行うために使用されます。
焼きなましは、金属の調質と内部応力の除去の目的で行う熱処理です。調質を目的として硬度を下げて加工性を向上させ、組織の均一化によって品質を安定させます。
焼鈍炉に金属材料を入れ、ガスや電気で加熱して材料の組織が変化する変態点以上の高温に維持します。一定時間以上高温を保持した後、炉の中でゆっくりと徐冷します。
上昇させる温度は、それぞれの金属によって異なりますが、鋼の場合、600℃前後の高温になります。加熱時も徐冷時も、使用するプログラムに合わせて緻密に温度コントロールを行うことで、金属材料に様々な特性を持たせる焼きなましを可能にしています。
金属工業では熱処理を通して、金属を他の元素と結合させたり、結晶構造を変化させるなどして、様々な特性を持った金属材料を生産しています。製錬した直後の純粋な鉄は、錆びやすく硬度もあまり高くないため、熱処理を施して炭素と結合させ、自動車や建物の鉄骨など様々な分野で使用される鋼にしています。
焼鈍炉の種類
焼鈍炉は大小さまざまな金属を高温まで加熱し、その状態を保持した後に時間をかけて冷まします。そのため、大型の炉が中心になります。形状は円筒状をしたものや、立方体に近い形をしたもの、さらに長い鋼材を加熱するために、一方向に長い直方体をしたものなど、様々です。
焼鈍炉には、遮熱性を考えて二重構造になったものや、徐冷に時間がかかることを考慮して、加熱炉と徐冷室が分離されていて、加熱が終わった金属材料を徐冷室に自動搬送できる炉などがあります。
また、真空中や窒素雰囲気中で焼きなましを行うための設備を備え、気密性に優れた焼鈍炉もあります。
焼鈍炉のその他情報
熱処理の目的
熱処理は、具体的には金属材料に熱を加えて高温状態を一定時間保持し、その後に冷却をすることです。金属をどの温度まで高温にするか、どのくらいの時間高温状態を保持するか、冷却のスピードをどれくらいにするか、冷却をどのようにするか (水で冷やすか、空気中で冷やすか) によって、金属の特性を様々に変えます。
熱処理の目的は主に3つです。1つ目は硬くすることです。2つ目は調質という金属の特性を望ましいものに調整することです。熱処理によって金属の結晶状態や、化合物の分布状態を変化させることにより実現しています。3つ目は金属の内部に溜まった応力の除去です。金属材料を切断したり、折り曲げたりする加工工程で、金属には局所的に力や熱が加わります。その結果、金属材料内に結晶構造や化合物の分布にひずみが生じて残ります。これを内部応力と言います。