EMIフィルタとは
EMIフィルタとは、電子機器などから発生する雑音 (ノイズ) を遮断して、その他の電子機器に悪影響を与えない様に保護するためのフィルタです。
基板などの配線に接続され、配線を通じて伝えられる信号に電磁的なノイズがある場合に、EMIフィルタによってノイズを除去します。ノイズを除去するためには、EMIフィルタ単体でも使用できますが、シールドやコモンチョークコイル、サージアブソーバなどと同時に利用することで、正確な信号の伝達を行うことができます。
なお、EMIとは「Eloctro Magnetic Interference」の略で、日本語では エミッション・電磁妨害放射規制のことです。
EMIフィルタの使用用途
EMIフィルタは、主に信号を受信する機器や送信する機器の電気回路全般で使用されます。生産工場における計測器やレーダ内の測定部や受信部や、基地局や人工衛星の発信部や、基地局や人工衛星などから発信される信号のノイズを除去するのに有用です。
ノイズにはさまざまな種類があるので、EMIフィルタがそのノイズに対応しているか注意が必要です。また、EMIフィルタでも製品ごとにノイズ除去の精度や方法が異なるので、適切に選定する必要があります。
EMIフィルタの原理
EMIフィルタはさまざまな電子部品によってノイズを除去しますが、EMフィルタで使われる代表的な電子部品は、コンデンサとインダクタです。
1. コンデンサ
コンデンサは回路の負荷に対して並列につなぐことで、ローパスフィルタとして機能します。コンデンサのインピーダンスの特性は、高周波ほど小さくなることです。
つまり、周波数が高いとコンデンサに電流が流れやすくなるため負荷には電流が流れにくくなります。またコンデンサの静電容量によって、除去する周波数を決定することができます。なお使用する回路のインピーダンスが高いほど、コンデンサのフィルタとしての機能を向上させることが可能です。
2. インダクタ
インダクタは回路中の負荷に対して、直列につなぐことで、ローパスフィルタとして機能します。原理はコンデンサの特性とは逆に、インダクタのインピーダンスは、周波数が高くなると大きくなるという特性を利用したものです。周波数が高くなるほど、この回路はインダクタのインピーダンスによって、電流が流れにくくなります。
EMIフィルタのその他情報
1. EMIフィルタの働き
フィルタは電波の伝導経路中に配置すると、回路の動作に必要な信号とノイズを選定し、ノイズのみを除去する働きを果たします。信号とノイズを選定する上では、両者を分離するための基準が必要です。
EMIフィルタではノイズを区分けするために、周波数分布の偏りを利用しています。対象となる電波雑音に対して、低周波のものを信号とし、高周波の電波は雑音として扱い、低周波の電波を通すため、ローパスフィルタとして機能します。
周波数分布で信号とノイズを分離するフィルタは、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタの4つの種類です。EMIフィルタでは、対象のノイズ周波数を先に絞り込むことが難しい場合が多いため、ローパスフィルタが多く使用されます。
ノイズ分離には周波数分布以外にも、コモンモードチョークコイルでは伝搬モードや電圧の違い、サージアブソーバでは電圧の違いを利用してノイズを分離します。
2. EMIとEMS、EMCとの関係
EMIと類似した用語に、EMSやEMCがあります。EMIはここまで説明したとおり、機器から放射されるノイズを抑えるものです。
EMSは他の機器から発せられるノイズに耐える「Electoro Magnetic Susceptibility イミュニティ・電磁感受性」を指しており、EMIとEMSの両方を兼ね揃えた機器をEMC対応品「Electro Magnetic Compatibility 電磁環境両立性」といいます。
参考文献
https://www.murata.com/ja-jp/products/emc/emifil/knowhow/basic/chapter06-p2
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejias/124/9/124_9_893/_pdf