トルクキーパーとは
トルクキーパー (英: torque keeper) とは、トルクを一定にコントロールする機器です。
日本語では、「機械式過負荷保護機器」とも呼ばれ、「トルクリミッター」と混同される場合があります。トルクリミッターは安全保護装置であり、トルクキーパーはトルクの制御機器です。
トルクキーパーは、コンベアの駆動、立体駐車場のターンテーブルやパレット台車の駆動、あるいは各種トレーニングマシンなどに活用されます。
トルクキーパーの使用用途
トルクキーパーの使用目的は、主にアキュムレーション、ブレーキング、ドラッギングの3つです。
1. アキュムレーション
アキュムレーションとは、トルクキーパーにより、利用機器を定められた位置に停止させることです。使用用途の実用例としてストッパ作用を活用したチェーンコンベヤやローラコンベアがあります。
対象物がストッパに当たるとトルクキーパーがスリップしてコンベアは停止し、ストッパから離れると稼働します。
2. ブレーキング
ブレーキングは、間欠スリップと連続スリップがあります。間欠スリップは、トルクキーパーのスリップと連結の繰り返しで、利用機器を安定したトルクで駆動します。また、連続スリップは、連続駆動する利用機器の駆動です。
間欠スリップの実用例として、ブレーキングを活用した立体駐車場のターンテーブルが挙げられます。駐車場から出た自動車を回転させて、出口位置でストッパに当たり停止します。この時トルクキーパーが間欠スリップして、駆動部を保護します。
また、連続スリップの実用例は、フィルム、紙、サンドペーパーなどの巻き取りロールです。トルクキーパーが低速でスリップしながらロールを回転させます。そして、ペーパーなどに一定のテンションを与えて巻き取ることが可能です。
3. ドラッギング
ドラッギングではトルクキーパーのスリップ作用により、利用機器に一定の負荷を掛けます。使用用途の実用例は、スリップ作用を活用したトレーニングマシンや締付け機などです。
トレーニングマシンのリストローラは、ローラを握り、回転させることにより手首を鍛える装置です。トルクキーパーはローラの軸端に取付け固定します。トルクキーパーの滑らかなスリップトルクにより、ローラに負荷をかけます。
締付け機は、ボルト・ナットやバルブの締付け用の装置です。トルクキーパーは、トルクが安定しており、ボルト・ナット、バルブなどを一定トルクで締付けます。
トルクキーパーの原理
トルクキーパーは、一定のトルクで保持し続ける装置です。装置は基本的に、一般的にハブ、滑り軸受、フランジ、プレート、皿ばね、ワッシャー、調整ナットの7つの機械部品から作られています。トルクキーパーは、外部駆動に対して規定トルクまで駆動を伝達しますが、規定トルクを超えるとスリップし、利用機器は停止します。
トルクの調整は装置の最端部に付けられたトルクキーパーの調整ボルトを緩めたり、締め込んだりすることで決定します。トルクの設定範囲は製品によって異なりますが、小型の物で10〜30N・m、大型の物で100〜600N・m程度です。
トルクキーパーの特徴
1. スリップトルクが安定
トルクキーパーは、一般のブレーキに比べトルクの変動が少なく、滑らかにトルクを伝達します。また、高頻度でスリップが繰り返されても、トルク伝達が安定しています。
2. 長寿命
プレートにファインケミカル繊維を採用することで、長寿命化を実現しています。他のブレーキライニングと比較すると、長寿命です。
3. 低価格・軽量
フランジにアルミを採用し、部品点数を少なくすることで、コンパクト・低価格・軽量を実現しています。
4. 容易なトルク調整
トルク調整は、トルク目盛りに応じて調整ボルトを回すだけの簡単操作です。
トルクキーパーの選び方
トルクキーパーの選定は、まず目的を明確にすることが大切です。それぞれの特性にあった製品があるため、アキュムレーション、ブレーキング、ドラッギングのいずれかを選びます。
次に、用途がコンベアや機械装置の場合、スリップトルク又はブレーキトルク、スリップ回転速度、スリップ時間、連結時間、1日の使用時間などを決めます。最後に製品のカタログから、スリップトルク又はブレーキトルクがT-N曲線の許容値以内になるようなタイプやサイズを選びます。
参考文献
http://www.prelead.com.tw/userfiles/3/3/10-1-5-1.pdf
https://www.mekasys.jp/series/detail/id/RS_0182
https://www.tsubakimoto.jp/power-transmission/mechanical-protectors/torque-keeper/