植物工場用ランプとは
植物工場用ランプとは、植物工場において農作物の育成のために使用するランプです。
植物工場用ランプには、LED、高圧ナトリウムランプ、蛍光灯などがあります。農林水産省のホームページでは、施設内で植物の生育環境を制御して栽培を行う施設園芸のうち、環境及び生育のモニタリングにもとづいて、高度な環境制御と生育予測を行い、野菜等の植物の周年・計画生産が可能な栽培施設のことを植物工場と定義しています。
また、植物工場は人工光によって植物を育てる工場 (人工光タイプ) 、太陽光によって植物を育てる工場 (太陽光タイプ) 、太陽光と人工光の両方を使って植物を育てる工場 (併用タイプ) の3種類の工場に分類できます。このうち植物工場用ランプは人工光タイプと併用タイプの工場で使用されます。
植物工場用ランプの使用用途
植物工場用ランプは、人工光タイプの植物工場と、併用タイプの植物工場において、育成する作物に光合成を起こさせるために、太陽光の代わりに使用します。このことを補光といいます。
人工光タイプの工場は、太陽の光が入らない閉じられた空間です。植物が光合成をするために必要な光は全て、植物工場用ランプから供給されます。
併用タイプの工場は、屋根や壁は温室やビニールハウスと同様に、ガラスやビニールでできています。十分な太陽光が工場内に届いている場合には、植物は太陽光によって光合成をおこないます。必要な量の太陽光が得られない時間帯や天候の時に、植物工場用ランプを使用します。
植物工場用ランプの原理
光のエネルギーを使って、無機炭素から有機化合物を作り出す反応を光合成と言います。植物は光のエネルギーを使って、水と二酸化炭素から酸素とデンプンを作ります。デンプンは植物の生命維持と成長に必要不可欠な物質です。また、植物は同時に呼吸によって酸素を吸って二酸化炭素を排出しています。
植物工場用ランプは、植物が光合成を行うために必要とする量の光のエネルギーを、人工的に供給する装置です。植物が光合成で生成する酸素の量と、呼吸により消費する酸素の量が一致する状態を光補償点と言います。植物を成長させるためには光補償点を超える量の光を与えなければなりません。
また、光の量を増やしても、それ以上光合成の速度が上がらない状態を光飽和点と言います。光飽和点を超えた光を当てると、葉焼けなど光による植物へのダメージが問題となるため、植物を健全に成長させるためには光補償点よりも多く、光飽和点よりも少ない量の光を与えることが重要です。
適正な光の量は植物によって異なります。野菜の場合、必要とする最低限の光の量は概ね1.5から2.0kluxと言われており、有効な光の量の上限は概ね40から50kluxと言われています。
植物工場用ランプはこの範囲の強さの光を植物に当てます。植物に当てる光の強さは、光源の明るさによって調整できるほか、光源と植物との距離によっても調整可能です。
なお、日本では菊の栽培などで、夕暮れ時から照明をつけて暗くなる時間を遅くして、花の開花時期をコントロールする電照という栽培方法があります。この栽培方法は日照時間をコントロールするのであって。人工光タイプの工場で使用している植物工場用ランプとは、別のものです。
植物工場用ランプの選び方
植物工場ランプには、形と大きさ、明るさの異なるタイプがあります。現在の光源はLEDが主流です。形状は蛍光灯と同じ形をした直管タイプと、平面全体が光るタイプなど様々です。
植物工場用ランプを選択するに当たっては、全ての作物に対して光合成を行うのに必要で十分な光が当たるように、明るさを第一に考えて選択します。
植物工場は、単位面積当たりの生産量は、一般的な農業よりも優れています。また、自然災害などの気候変動の影響も受けにくく、安定した収穫が期待できます。特に人工光タイプの工場では、完全に閉じられた環境内で植物を栽培するので、害虫の被害も受けにくく、農薬の使用も不要か少量で済みます。
その一方で、植物工場はイニシャルコストとランニングコストが一般農園よりも高くなります。植物工場用ランプは、植物工場にとって必要不可欠であり、常時使用する生産設備になるので、選択に当たってはイニシャルコストとランニングコスト、それに信頼性も含めた費用対効果の検討が必要になります。
また、最近では自宅の中にミニ植物工場を作り、野菜や花の栽培を楽しむ人達が増えてきています。建物の中では植物が光合成を行うのに十分な太陽光が得られないので、小型のライトが必要となります。このような需要に対しては、LEDを利用した小型の植物育成用ライトが多種販売されており、これらの製品はネット上の通販サイトで簡単に購入できます。