デジタルアイソレータとは
デジタルアイソレータとは、デジタル信号の送受信間を絶縁するための機器です。
電気回路において「絶縁」は非常に重要であり、機器がショートしたり破損したりするのを防いでくれます。また、必要な部分がしっかりと絶縁されていることで他の場所に電流が流れず、ノイズを除去し正常な信号を送ることに役立ちます。
さらに、デジタルアイソレータは長寿命な上、消費電力が少ない点から、様々な機器への応用が期待されている電子機器です。
デジタルアイソレータの使用用途
デジタルアイソレータは電子回路中において、絶縁が必要となる装置に広く使われます。まず、装置の中で電圧の差が大きい産業機械です。大きな電圧を必要とする電源部分や大規模なモーターと小さな電圧で作動する部分が近い位置にある場合、電圧の差が大きい場所において絶縁しなければなりません。
これは低電圧で動作する部分に高電圧が印加されてしまうことによって破損するのを防ぐためです。次にレントゲンやAEDなどの医療機器にも用いられます。これらの医療機器は手にとって使用する場合が多く、外部に電流が流れ出して感電してしまうのを防ぐためです。
自動車では電気自動車やハイブリッド車など、高電圧電源が使用される車において、ECUなどの車載機器を保護のために搭載されています。
デジタルアイソレータの原理
デジタルアイソレータには「磁気絶縁方式」と「容量絶縁方式」の二種類の方式があります。
1. 磁気絶縁方式
磁気絶縁方式のデジタルアイソレータは、送信側と受信側にそれぞれコイルを用いています。送受信において、コイルを使うことによって、電気信号と磁気エネルギーの変換を行っています。
高速で対応できますが、速度が早くなるほど消費電流が増大してしまうのがデメリットです。また、ノイズ特性は次の容量絶縁式と比べると劣ります。
2. 容量絶縁方式
コンデンサを用いたデジタルアイソレータです。送受信において、コンデンサを使うことで電気信号を充電と放電という形に変換しています。容量絶縁方式は特にノイズ特性に優れており、磁気絶縁方式同様に高速で使用可能です。また、消費電流は速度とは関係なく、むしろ低速では不利になります。
どちらの方式も長寿命で高速で使用することができるという利点があり、以前までのアイソレータと比べて優秀な性能を持っています。しかし、デジタルアイソレータが対応できるのはデジタル信号のみであり、アナログ信号に対応していない点が唯一の短所です。
デジタルアイソレータの構造
磁気絶縁方式のデジタルアイソレータの構造は、ポリイミドというスーパー・エンジニアリング・プラスチックの中に、二つのコイルが並べられています。一方のコイルにパルス電流を流し小さな局部的磁界が発生することによって、もう1つのコイルに電流を発生させる構造です。
容量絶縁方式のデジタルアイソレータは、薄い二酸化ケイ素 (SiO2、シリカ) を絶縁層に持つコンデンサの構造になっています。
デジタルアイソレータの特徴
デジタルアイソレータは、従来の光アイソレータに対して以下のような優れた特徴があります。
1. 絶縁耐力が大きい
デジタルアイソレータは、大きな絶縁耐力を持っているのが特徴です。光アイソレータの絶縁体力は1~20Vrms/μmですが、磁気絶縁方式のデジタルアイソレータの絶縁耐力は300Vrms/μm、容量絶縁方式なら500Vrms/μmと、光アイソレータに対して10~200倍以上の絶縁耐力があります。
2. 高寿命であること
デジタルアイソレータには、高寿命であるという特徴があります。光アイソレータの寿命が10年程度であるのに対して、デジタルアイソレータの寿命は25年以上と言われています。
3. 対応速度が速い
光アイソレータによる信号の絶縁は20Mbps程度までですが、デジタルアイソレータは150~200Mbpsと、10倍程度の速度まで対応できます。
4. 低い消費電流
デジタルアイソレータは、消費電流を低く抑えることが可能です。特に、容量絶縁式は速度によらず消費電流を抑えることができます。
参考文献
https://www.marubun.co.jp/service/maxim/a7ijkd000000h0xl.html
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/2464/