線量計

線量計とは

線量計

線量計 (dosimeter) とは、放射線の量を測定する測定機器です。

放射線の測定機器は線量計・放射線測定器サーベイメーターなどの名称で呼ばれます。このうち線量計は、広い範囲の測定器を指し、機械構造を有するものも有しないものも広く含んでいます。

例えば、放射線による物質の変化を利用するもの (ガラス線量計、熱ルミネセンス線量計、光刺激ルミネセンス線量計) は放射線測定時に電源を必要としません。軽量であるため、人間が身につけて日常的な被ばく量を監視する目的に使用可能です。このような身に着ける線量計を個人線量計といいます。

一方、電源を必要とするものでは、半導体式線量計が個人線量計に用いられます。電子体温計程度の大きさに作ることができるためです。

放射線測定器は線量計とほぼ同じ意味です。一方、サーベイメーターは、空間放射線量や狭い範囲の表面が放射線に汚染されているかを調べる (サーベイする) 目的に特化した機器を指します。

線量計の使用用途

線量計は、日常生活や放射線がある場所で作業する際に、長期間の被ばく量を測るために使用します。

放射線を取り扱う医療施設・研究施設・工業分野などの現場では、法律に基づき厳格な放射線管理が必要です。医療施設ではX線画像撮影やCT画像撮影時、原子力関連の施設では原子炉運転や核燃料又は放射性物質を扱う際に、それぞれ被ばくする可能性があります。

放射線の被ばくは健康を害する危険性があるため、放射線を取り扱う現場の作業者は、個人線量計を身につけて作業することが義務づけられています。

線量計の原理

線量計は放射線の「線量」を測定する測定機器です。

この「線量」には、以下のような指標があります。

  • 放射線によって物質が得たエネルギーを表す「吸収線量 (単位Gyグレイ) 」
  • 個人の体全体に対する放射線の影響度を表す「実効線量 (単位Svシーベルト) 」
  • 照射された放射線の総量を表す「照射線量 (単位Rレントゲン) 」
  • 実効線量の代替として日常の放射線管理に用いられる「実効線量当量 (単位Svシーベルト) 」など

線量計が直接物理的に測定するのは、放射「線」の「本数」です。上記のさまざまな線量を評価するために、放射線の種類を区別して検出できる工夫がされています。放射線の種類ごとの本数を測定し、種類に応じた人体影響を考慮することで、放射線の総合的な人体影響を評価することが可能になります。

個人線量計で表示する線量は、実効線量当量 (単位Svシーベルト) です。人体への影響評価が目的であるため、実効線量を評価することが理想ですが、これを日常的に実測するのは困難です。そのため、実測は実用指標である実効線量当量を用います。

ただし、短時間に多量の放射線を浴びると危険なので、時間あたりの実効線量当量である線量当量率 (単位Sv/h) も測定可能な線量計があります。放射線を使用する事業所では、測定した実効線量当量を基に、作業者の実効線量を算出します。

線量計の種類

放射線にも種類があり、代表的なものには中性子線、α線、β線、γ線、X線などがあります。それぞれ特性と人体への影響度が異なります。ガラス線量計、熱ルミネセンス線量計、光刺激ルミネセンス線量計はβ線、γ線、X線を検出可能です。

1. ガラス線量計

ガラス線量計は放射線照射したガラスに紫外線を当てると蛍光を発生する現象を利用した線量計です。

2. 熱ルミネセンス線量計

熱ルミネセンス線量計は固体の熱ルミネセンス現象 (蛍光体などの物質が、外部から放射線の刺激を受けたあと、加熱すると発光する現象) を利用しています。

3. 光刺激ルミネセンス線量計

光刺激ルミネセンス線量計は光刺激ルミネセンス現象 (放射線の照射を受けて、準安定状態にある電子が光エネルギーを吸収して、基底状態に戻る現象) を利用した線量計です。

4. 半導体式線量計

半導体式線量計は放射線によって物質が電離したときに、半導体に電流が流れることを利用した線量計です。

線量計の選び方

選び方の大前提は、測定したい放射線の種類に適合した線量計を選ぶことです。例えばβ線とγ線用のもの、X線専用のものなどがあり、X線用のものはエネルギーの高低で製品が異なる場合があります。

1. ガラス線量計、熱ルミネセンス線量計、光刺激ルミネセンス線量計

上記の3つは長期間の放射線管理に適します。これは、その場で放射線量が判明するものではなく、あとで線量計に処理を加え、発光などを測定して初めて累積の放射線量が判明するものであるためです。このような性質をパッシブ型と呼びます。現在ではこの測定を専門業者で行うのが主流です。

その場で放射線量がわからないという欠点はありますが感度は高く、一カ月程度の累積線量で放射線管理をする場合に適します。また、業者に記録を作成してもらえるため便利です。

2. 半導体式線量計

半導体式線量計は、短時間に多くの被ばくが予想されるときなど、その場で放射線量を知りたいときに適します。線量をリアルタイムで知ることができるためです。このような性質をアクティブ型と呼びます。また、時間当たりの線量である線量当量を表示できるタイプや、一定以上の線量当量で警告音を発するタイプもあるため、これらの機能の有無も考慮するとよいでしょう。

ただし、本体に記録できるデータが少ない製品もあるため、その場合は線量データの記録方法を考えておく必要があります。作業中の随時の被ばく量の把握と、長期的な放射線管理を両立するため、アクティブ型とパッシブ型を併用する運用も多く行われています。

参考文献
http://www.jeta.or.jp/jeta127/pdf/kangikyou/houshasen-keisoku.pdf
https://www.kanehara-shuppan.co.jp/shinsai/r537_546.pdf
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/kisoshiryo/attach/201510mat1s-01-4.pdf
https://core.ac.uk/download/pdf/234083377.pdf

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