ロボット用同軸ケーブルとは
ロボット用同軸ケーブル (英:coaxial cable for robots) とは、ロボットアームなどの可動部に使用される同軸ケーブルです。
繰り返し曲げ負荷がかかる部分にも使用できる特徴があり、特性インピーダンスやシールド特性などの電気特性が優れた同軸ケーブルです。伝播速度の高速化、高密度配線のための細線化、周波数特性の広域化などの新しい要求に対応しています。
産業用ロボットや工作機械の可動部の高周波伝送、可動部センサーのリード線などに用いられます。
ロボット用同軸ケーブルの使用用途
ロボット用同軸ケーブルは、耐屈曲性を必要とする部分の低周波から高周波までの信号伝送に使われます。
具体事例
- ロボットの旋回部、小型組立ロボットの機内配線
- センサーのリード線、FA機器・工作機械のケーブルガイド内配線
- 電気系・油空圧系を必要とする機器
- 耐熱性・耐薬品性が必要な部分
- テレビ受像機や無線機とアンテナとをつなぐ給電線用、計測機器の信号や音声信号・映像信号の伝送用
同軸ケーブルと組み合わせて使用されるコネクタには、使用する周波数帯やインピーダンス特性により、いくつかのタイプがあります。
ロボット用同軸ケーブルの原理
同軸ケーブルは、中心の内部導体の外側に絶縁層を設け、その外側に外部導体の層があり、さらに最外側にシース層で被覆した構造です。
耐屈曲性を向上させるため、内部導体は直径0.05~0.1mm程度の多数の極細線を使用します。
ケーブルの電気特性に対して重要な働きをする絶縁層に多く使われるのは、ポリエチレンやフッ素樹脂などです。絶縁層にプラスチック紐を使って屈曲ストレスを逃がすタイプもあります。
外部導体は、シールドの役割をし、高周波信号の漏洩防止と外部からの電波やノイズを遮断します。屈曲性を良くするため、細い銅線を編んだ編組線や横巻きシールドと呼ばれるものが多く使われますが、場合によって使用されるのは、銅箔やアルミニウム箔などの金属箔です。
外側のシースには、難燃性、耐油性、柔軟性に優れたポリ塩化ビニルが多く使用されます。
ロボット用同軸ケーブルの特徴
ロボット用同軸ケーブルには多くの特徴があります。
1. 屈曲寿命が非常に長い
一般の同軸ケーブルと比較して、300倍以上の耐屈曲性があり、屈曲テストで500~2,000万回以上の繰り返し屈曲に耐えるものが多くあります。
2. クリーンルームでの可動使用が可能
端部およびケーブル外被から出る摩耗粉が少なく、耐摩耗性が優れており、クリーンルームでも使用できます。
3. 耐衝撃性が高い
高弾性エストラマーで被覆してあるので衝撃に強いケーブルです。
4. その他
- 圧着端子の使用が可能です。
- 仕上り外径が細いので、コンパクトな配線・軽量化に適しています。
- 耐寒・耐熱性に優れ、-40℃においても柔軟性を保持し、100℃以上の高温用もあります。
- 耐油・耐薬品性が良く、機械油や、酸・アルカリ・シンナー等の薬品に対しても、優れた特性を有します。
- 難燃性に優れ、多くはUL規格品です。
ロボット用同軸ケーブルの種類
ロボット用同軸ケーブルには、ケーブル各部の使用材料別に、多くの種類があります。
1. 内部導体
- 軟銅線:一般的な絶縁編組ケーブルに使用します。
- 銅被覆鋼線: 軟銅線よりも切れにくいケーブルです。
- 銀メッキ軟銅線:米軍規格であるMIL規格のケーブル用です。
- すずメッキ軟銅線:極細同軸ケーブルで使われます。
- 銀メッキ銅被覆鋼線:絶縁体にフッ素樹脂を使う場合に多く使われます。
2. 絶縁体
- ポリエチレンPE:一般的な絶縁体です。
- 4フッ化エチレンTFE:温度特性が良好
- フッ素樹脂PTFE:温度特性が良好、連続使用温度260℃
- フッ素樹脂FEP:温度特性が良好、連続使用温度200℃
- フッ素樹脂ETFE:連続使用温度150℃
- 架橋発泡ポリエチレンQE:性能が良いケーブルに使用されます。
- 柔軟性ポリオレフィン系樹脂:性能が良いケーブルに使用されます。
- ポリウレタン
- 耐熱PVC
3. 外部導体
- 軟銅線:一般的な外部導体です。
- メッキ軟銅線:遮蔽性が良好
- すずめっき軟銅線:遮蔽性に特に優れています。
- 銅箔・アルミ箔:遮蔽性が良好
- 銅パイプ:遮蔽性が良く、固定部に使用します。
4. シース
- ポリ塩化ビニールPVC:使用温度範囲-15~60℃
- ポリエチレンPE:使用温度範囲-40~75℃ 対候性良好
- 四フッ化エチレン:使用温度範囲-70~250℃
- フッ化エチレンプロピレンFEP:使用温度範囲-70~200℃
- 耐熱PVC:使用温度範囲-40~105℃
- 耐磨耗ポリウレタン
- ポリオレフィン