予防保全

監修:中山水熱工業株式会社

予防保全とは

予防保全とは、設備保全の一種で、設備等に致命的な不具合が起きる前に、予め決まったサイクルで点検や修理などを行うサービスです。

保全 (maintenance) は、設備や機器を健全 (使用可能) な状態で維持・管理する活動のことで、その形態は、大きく、事後保全 (corrective maintenance=修復的保全) と予防保全 (preventive maintenance=予防的保全) に分類できます。事後保全は、その名のとおり、設備や機器に不具合 (故障) が起き、機能が発揮できなくなってから修理・修復する活動のことであり、予防保全は、設備等に不具合が起きる前に部品交換やその他の手入れ、調整を行い、故障を未然に防ごうとするサービスです。

予防保全の使用用途

予防保全は、突発的な事故や計画外の故障を防止する目的で、様々な産業分野やインフラにおいて活用されている保全方法です。特に、故障や事故が重大な被害に繋がる場合や、突発的な故障によって大きな損害が想定される場合には、事後保全は許容されないため、予防保全の確実な実施が極めて重要となり、次のようなところに利用されます。

  • ビルなど一般建築物の外壁補修
  • 下水道などの管路・各種配管
  • 配線
  • 道路の路面・道路付属物
  • 河川の各種橋梁
  • トンネル
  • ダム
  • 砂防堤防・海岸堤防
  • 港湾
  • 空港・航路標識
  • 土木施設
  • 公園
  • スプリンクラー
  • 火災報知器
  • 無停電電源装置 (UPS)
  • 漏電ブレーカー

また、製造業では、工場における機械や設備の安定した稼働による効率的な生産のために利用されています。具体的な導入事例には、次のものがあります:

  • ベアリングの定期交換
  • 空油圧関係の圧力点検
  • ロボットやチェーンへのグリスアップ
  • ベルト点検
  • 切削工具・プレス機など各種加工機等の点検

このように、予防保全には、前もって点検交換の準備ができるため、効率的な保全活動が実現できることや故障や事故の被害を最小化できるなど、大きなメリットがあります。

一方、本来まだ必要でないタイミングで過剰に点検・交換を行うことになる場合があります。これをオーバーメンテナンスと呼びます。反対に、予防する計画が失敗し、保全前に設備や機器が故障を起こしてしまうことも完全に防ぐことはできません。

予防保全の種類

1.時間基準保全 (TBM)

時間基準保全 (定期保全) とは、カレンダー時間を基準として、保全計画 (保全間隔) を定める予防保全の方法です。TBM (英: Time-based Maintenance) 、カレンダー基準保全 (英: Calendar-based Maintenance) とも呼ばれます。間隔は、過去の故障データや経験則などを参考として決めます。

2.利用基準保全 (UBM) 

利用基準保全 (経時保全) とは、設備の稼働回数や実際の稼働時間を基準として保全作業の実施計画を定める予防保全の方法で、UBM (英: Usage-based Maintenance) とも呼ばれます。回数や時間の管理には、装置の使用記録を利用する場合や、1日当たりの平均使用量・回数を基準にする場合があります。

3. 状態基準保全 (CBM)

状態基準保全は、設備の出す信号を検出し、それが一定の値に達して設備の状態が悪化したと判定したときに修理や交換を行う保全方法で、CBM (英: Condition-based Maintenance) とも呼ばれます。信号の種類やその処理方法はさまざまですが、振動センサ又は加速度センサなどによる振動測定、電流などのアナログ信号を利用し、その波形解析によって状態を監視する方法が一般的です。

なお、最近の保全の分類では、センサの種類やセンシングの間隔 (常時又は定期)、信号処理及び解析方法の違いにより、状態基準保全の細再分類として、予知保全、モニタード保全、オンコンディション保全など、さまざまな名称が用いられる場合がありますが、区別は必ずしも明確ではありません。

本記事は予防保全を提供する中山水熱工業株式会社様に監修を頂きました。

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