トラクターとは
トラクターとは、動力が無い作業機を牽引するための車両です。
主に工事や農業において使用されており、使用する作業機によってサイズや馬力が異なります。 貨物を運搬するためのトレーラーもトラクターの1種であり、牽引車と貨物積載部がそれぞれ独立した存在であることが特徴です。
燃料は用途により選択可能で、ディーゼルやガソリンに対応しています。作業機を付け替えることにより、牽引車一台でさまざまな作業が可能です。特に農業においては、19世紀初頭から利用が進んでおり、現代に至るまで開発が進められています。
トラクターの使用用途
1. 農業
稲作もしくは畑作、使用する農地の面積で馬力が選択されます。牽引車と特定の作業機との組み合わせでの使用が一般的です。
作業機の種類は工程の数に比例して開発されており、広く普及しています。高齢化や後継者不足の問題を抱える農業において、作業の効率化は重大なテーマであり、トラクターは大きな要素となっています。
なお、農業における具体的な用途は、以下のとおりです。
耕起
畑耕には、ロータリーやプラウが使用されます。ロータリーは並んだ爪を回転させ土を耕し、プラウは掘り起こしで土を上下させます。土を混ぜ合わせる形の動きとなり、ベースとなる土壌を作ります。
播種
播種機を使用して作業します。作物の種類による種子サイズの違いでモデルも分けられており、発育差の原因となる播種深度の適切化を目指しています。
消毒
ブームスプレーヤーが広範囲への農薬等の散布に使用されています。ブーム式のノズル等から薬剤が噴射される装置で、トラクターで移動しながら作業を進めます。
消毒する際は、作物へ満遍なく散布される性能が必要です。そのため、より薬剤のロスを削減する機構の開発が進められています。近隣住民や環境への配慮も求められており、農薬取締法での制限もあります。
施肥
肥料の散布には、ライムソワーやブロードキャスターが使用されます。ライムソワーは多くのモデルにPTO駆動が採用されており、散布範囲は広くありませんが均一な肥料の散布が可能です。
粉末やペレット性状の肥料には対応できますが、液体には対応できません。ブロードキャスターは内蔵の円盤の回転による遠心力で散布します。一度に広範囲への散布が可能ですが、微調整に課題があります。こちらも液体への対応は不可です。
収穫
コンバインやハーベスターを用いて収穫作業を行います。可食部と不要部に選別し、外部への排出も行えるモデルが主流です。
2. 工事作業
工事作業の効率化のため、さまざまな作業機が開発されています。掘削から土砂の運搬、舗装までトラクターが対応可能で、活躍の幅が広がっています。
3. 林業
林業においては、足場の確保や間伐材の搬出に利用されています。傾斜や悪路でも進行可能なモデルが重宝されています。
4. 物流
トレーラーを活用することで、長距離移動と大物量の運搬が可能です。貨物積載部のコンテナは他のトラクターとの接続互換性があるケースが大半であり、スムーズな物流の実現に寄与しています。
連結のため、トラクター側にはカプラと呼ばれる差し込み口が空いた部品がついており、トレーラー側にはキングピンと呼ばれる大きなピンがついています。切り離しと連結の際は、この部分を操作して行われます。
荷下ろし作業が無く、作業員への負担も軽減可能です。自動車や重機の運搬にも対応可能であり、コスト面においても利用されるケースが多いです。
トラクターの原理
トラクターは構造上、後部に作業機を取り付ける為、重心が後方に偏りがちになります。その対策として、前方に重しとなるパーツを取り付けてバランスを調整します。悪路を走行できるようクローラーのタイヤを装備しています。
トラクターのその他情報
無人トラクター
人手不足の問題が顕在していた農業において、無人トラクターへの期待は大きく、各社開発を行っています。飛行ドローンによる農薬散布等の実地試験も実施されており、各々の役割を多角化する発想でAI活用が進められています。
現状の課題として、高速データ通信を可能にするインフラの配備や本体自体のコスト問題、公道走行時の法解釈が挙げられます。しかしながら、市場規模は年々膨らんでおり、「スマート農業」の実現化が急がれます。