測定顕微鏡

測定顕微鏡とは

測定顕微鏡

測定顕微鏡とは、顕微鏡で拡大観察した映像から寸法を計測する寸法測定機です。

正確な倍率で拡大された光学顕微鏡と、比較測定を行うためのテンプレートなど、測定ワークを平面上で精密に動かすためのXYステージなどが組み合されています。測定顕微鏡を使えば非接触による測定ができるので、ワークを傷つけずに、輪郭形状や表面の観察が可能です。

測定顕微鏡では、光学系にテレセントリック光学系を用いたものが一般的です。近年では、光学ヘッドに無限遠補正光学系を採用し、微分干渉観察や簡易偏光観察ができる仕様もあります。

測定顕微鏡の使用用途

測定顕微鏡は比較的小型の機械部品、電子機器部品、半導体製品の生産や品質管理に使用されます。顕微鏡で拡大しなければ計測が難しい、小さな部品、細かい部位の計測に適した測定機です。

また、寸法測定だけではなく、半導体基板のキズの検出など、偏光や微分干渉を用いた観察にも用いることができます。拡大倍率の正確さから、テンプレートを用いた比較測定を行うことで、製品が公差の範囲内にあるかを判定する簡易検査にも有用です。

測定顕微鏡は測定機としても顕微鏡としても用いることが可能で、1台あればさまざまな用途に使用できます。

測定顕微鏡の原理

測定顕微鏡は、照明方法によって分類することができます。

1. 透過照明

透過照明は光を透過させて物体の影を輪郭形状として捉え、寸法測定を行うための透過照明です。輪郭部を測定するために用いられます。

2. 垂直反射照明

垂直反射照明は、物体の表面に垂直に光を当て、反射光で表面を観察します。垂直反射照明は寸法計測だけでなく、表面形状の観察も可能です。

3. 斜め反射照明

斜め反射照明は、測定物の表面に対して斜めに光を当てる照明方法です。特徴は像のコントラストが強調されるので、立体的かつシャープな映像が得られます。ただし、寸法測定においては誤差を生じやすくなります。

測定顕微鏡のその他情報

1. テレセントリック光学系

ほとんどの測定顕微鏡は、透過照明にテレセントリック光学系を採用しています。テレセントリック光学系を用いていない顕微鏡は、近くのものが大きく、遠くのものは小さく見えるようになります。

この現象は、私たちが日常的に使うカメラでも同じです。しかし、この特性は寸法測定において、高さ方向に違う部位に対して、遠くにある部位は小さく計測してしまうことになってしまいます。

テレセントリック光学系によるレンズでは、レンズに対する距離、光軸方向にピントをずらした場合でも、像はボケても大きさは変わりません。顕微鏡で観察しながら寸法測定をする寸法測定顕微鏡において、テレセントリック光学系は不可欠です。

2. 測定顕微鏡の平行出し

測定顕微鏡は測定物を、XYステージの上に載せて測定します。そのため、測定個所はXYステージの稼働範囲内であればどこでも構いません。つまり、測定物がXYステージのどこにあっても、XYステージを測定個所まで動かして測定すればよいということになります。

測定する角度や円径の中には、XYステージを大きく動かす必要のあるものもありますが、特に調整せずに測定物の輪郭がXYステージの動きと並行に置かれていることはありません。そのため、測定前にXYステージの動きと測定物の基準となるエッジを平行にする作業が必要です。

また、測定物とXYステージの平行出しができていないと、角度や平行度の測定時に大きな誤差が生じてしまいます。そこで、測定結果を補正するための計算が必要になります。近年では、メーカーにはXYステージ上に座標系を作り、原点と測定点の座標から計算してくれる測定装置がラインナップされています。それを用いることで、平行出しの工数を削減することが可能です。

3. 測定顕微鏡の視野

顕微鏡は対象物を大きく拡大観察できることが大切ですが、一度に広い視野が得られることも重要です。顕微鏡を使って一度に確認できる範囲を視野といい、視野は接眼レンズの直径で決まります。

視野の大きさは視野数といい、視野内に測定物の表面のどのくらいの範囲が見えているかを表したものが実視野です。実視野とレンズの倍率の関係は、以下のようになります。

実視野 = 接眼レンズの視野数/対物レンズの倍率

上記の式から分かるように、接眼レンズの視野数が同じであれば、実視野の範囲は対物レンズの倍率が大きくなればなるほど狭くなります。このことから、対物レンズの倍率を大きくして測定物を拡大して見ることと一度に見ることのできる範囲は、トレードオフの関係にあることが分かります。

実視野を大きくする場合は、接眼レンズの直径を大きくするか、対物レンズの倍率を下げなければなりません。しかし、測定には必要な拡大倍率があるので、対物レンズの倍率を下げるには限界があります。そのため、測定顕微鏡は、XYステージと移動量を表示するカウンタ等を持ち合わせ、視野に入りきらない部分の測定を行う装置を搭載しています。

参考文献
http://www.nikon-instruments.jp/jpn/learn-know/measuring-instrument-abc/about-measuring-microscope

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です